プロローグ2 神は嗤う
第二章のプロローグは終わり、次回から本編に入って行きます。
短めになってしまうのは申し訳ないです。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「あぁ、面白いなぁ」
神は世界を見つめながら呟いた。その表情は喜悦に満ちている。
人の営みを眺めること、それこそが神にとって唯一の娯楽と言ってもいい。数多居る神の中でも、この神は他の神以上に娯楽が好きだった。もっと言ってしまえば、ちょっかいを出してしまうことが多かった。面白いものを見るために。
神に許されたギリギリの範囲で世界に影響を与えるのだ。
零音達のこともそうだ。自分の管理している世界で、面白い魂をしている人を見つけたから使うことにした。そこに人の意思など関係ない。神に魅入られるとはそういうことなのだ。
「ねぇ冬也、君も面白いだろう?」
「うるさい黙れ。話しかけるな」
「冷たいなぁ。彼……いや今は彼女かな。零音のことを巻き込んだのがそんなに許せない? これでも救ってあげたつもりなんだけどなぁ」
「…………」
神の言うことはある意味事実だ。冬也のいなくなった世界で、それこそ自殺してもおかしくないくらいに零音は追い込まれていた。それが今では心からの笑顔を浮かべることができるまでに回復した。しかしそれはこの神のおかげではないということだけは冬也には自信を持って言えた。
「あいつを救ったのはお前じゃない。晴彦だ。お前はただ面白がっただけだろう」
「見解の相違ってやつだね。まぁ君がどう思ったとしても関係ないけどさ。それよりもちゃんと働いてよね。それが君がここにいるための条件なんだから」
「……わかってる」
今冬也がいるのは神にのみ許された空間。一時的に人がやってくることはあっても冬也のように常駐してることはありえないと言ってもいい。冬也がここにいることができるのは神との契約によってだ。
「そうそう。零音面白いこと巻き込まれそうだよ」
「なに?」
「零音の過去はどうも彼女のことを逃がしたくないらしいよ。今度はこの世界に来てからのものだけどね。さぁ今度はどんな物語を見せてくれるんだろうねぇ。それに……ククク。あぁ、わざわざ晴彦を助けたかいがあったってもんだよ」
「悪趣味なやつ」
「なんとでも言えばいいよ」
冬也の言葉など歯牙にもかけず、神は世界を見続ける。その先に広がる数多の未来を予想しながら。
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狐の像はそこに佇んでいた。それは晴彦が入学当時に見つけた像だった。不自然なほど静かな空間だ。まるでそこだけ隔絶されているかのように。
『……狐は解放された』
しかし突如として、その空間に声が響く。無機質な、機械的な声。
『されど、契約者名、日向晴彦の願いは未だ叶わず』
にわかに狐の像が光り始める。
『願いを叶えるための行動を開始する』
次の瞬間、狐の像は掻き消え何事もなかったかのような静寂だけがそこに残った。
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次回投稿は3月27日21時を予定しています。