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第11話 ガールミーツガール

余裕をもって書くって大事ですよね。私ももっと余裕をもって書けるようにしたいです。

これでも気を付けているつもりなのですが、誤字脱字なんかがあったら教えてくれると嬉しいです。

 突然だが、日向晴彦という男は決してモテないわけではない。むしろ、ある一定の人気はあるだろう。見た目も悪くないし、性格も悪くない。お人好しで困っている人がいれば自分から声をかけるくらいだ。

 そんな彼になぜ今まで恋人ができないのか、そしてなぜ友人が少ないのか。それはひとえに、私の存在があるからだろう。私自身自覚していることではあるけれど『朝道零音』は相当な美少女だ。何度もスカウトを受けたことがあるくらいに。

 たとえ晴彦に淡い想いを抱く人がいたとしてもだいたいが私を見て諦める。そして男子達はそんな私が晴彦の傍にいるということを妬んだりして晴彦を敬遠しやすい。

 これはきっとゲームの『朝道零音』でも同じことだったんだろう。

 ゲームの時はわからなかったけど、実際に過ごした今となってはわかる。私の存在が晴彦の人間関係に与えていた影響の大きさを。私とゲームの『朝道零音』の違いは、それに気づいているかいないかということだけだ。

 もし、これから先、そんな私の存在すらも乗り越えて、それでも晴彦に想いを伝える人がいるというなら私は——。







□■□■□■□■□■□■□■□■


「あの、朝道さんっ!」


 昼休み。友澤と一緒に購買に行ってしまった晴彦を待っていた私に一人の女性とが声をかけてきた。

 名前は確か井上さんだったはずだ。いつも教室の隅で本を読んでいて、あまり誰かと話しているのは見たことがない。私の後に自己紹介の順番が回ってきたせいですごく緊張していたのを覚えている。


「どうしたの井上さん」


 オドオドとした様子の井上さん。初めて話すし、そういう時に大事なのはしっかりと目を見ることと名前を覚えているということをアピールすることだ。努めて笑顔で、話しやすい雰囲気を作る。幸い、私の雰囲気は柔らかい空気を作りやすい。


「えっと……あのね。私日直で、宿題のノート集めないといけなくて……それで」


 あぁ、そういえばそうだった。数学の教師が提出するように言ってた気がする。よりにもよってこの子に集めるように言ったのか。まぁ日直だししょうがないかもしれないけど。


「うん、ちょっと待ってね……はいこれ」

「あ、ありがとね」


 うーん。この調子で全員分集めることができるだろうか。ちょっと無理そうだ。

 少しくらい手伝ってあげてもいいか。晴彦もまだまだ帰ってこないだろうし。


「あの、井上さん。私も手伝おうか?」

「え、いやでも、悪いよ」

「ノート一人で持つの大変でしょ? それに二人の方が早く終わるし」

「えっと……じゃあ、お願いしていい?」

「もちろん!」


 井上さんに任せると時間がかかりそうだったから、私がさっさと集めることにした。教室にいなかった人の分は集められなかったけど、それでも一応ほとんど集まっただろう。


「とりあえず今いる人の分はこれで全部かな?」

「う、うん。そうだと思う」

「いない人の分は後でいいの?」

「とりあえずある分だけでいいって言ってたから、大丈夫」

「そう。じゃあ行こっか」


 私の後をあわあわとついてくる様子を見ているとなんだか小動物のようで可愛い。


「あ、あの本当にゴメンね。手伝ってもらっちゃって」

「これぐらい全然いいよ。それに、私井上さんと一度話してみたかったし」


 これは嘘じゃない。彼女とは前から話したいと思っていた。

 クラスの女子を晴彦に近づけないために必要以上に仲良くなるのはやめておいたけど、井上さんなら大丈夫だろう。


「えぇ! 朝道さんが私と!」

「いや、そんなにびっくりされるとこっちが驚くんだけど」

 

 というか、そんなに大きな声で話せたのか。あと、井上さんの中で私ってどんな存在なんだろうか。


「だ、だってあの朝道さんだよ? 私なんかとは住んでる次元が違うっていうか、天上の存在っていうか……」

「そんなことないよ。同じクラスメイトじゃない」

「でも、私なんかとは全然違うし」

「うーん。そんなに距離を感じられると……ちょっと悲しいかも」

「えぇ、あ、うぅ……ごめんなさい」

「あはは、ごめんごめん。嘘だよ。でも私は、井上さんと仲良くなりたいな」

「私と……ですか? でも私、ぐずだし、仲良くなってもいいことなんてないですよ?」

「違うよ井上さん」

「え?」

「井上さんと仲良くなって良かったかどうかを決めるのは、井上さんじゃない。私自身だから」

「でも……」

「私は絶対に後悔しないよ」


 こういう人はなんだかほっておけない。せっかく一緒のクラスになったんだし、一人ぐらいは仲良くなる人がいてもいいだろうしね。


「いいんですか?」

「うん。こっちからお願いしてるんだしね」

「じゃあ、その、お願いします!」

「それじゃあさっそく、今日のお昼一緒に食べよっか」


 井上さんはいつも一人で食べているし、せっかく友達になったんなら一緒に食べてもいいだろう。晴彦も文句は言わないだろうし。


「えぇ! でもそれは日向君に悪いですよ」

「どうして?」

「だって恋人同士の食事に邪魔するなんて」

「恋人同士!?」

「え、違うんですか?」

「違うよ。私とハル君は幼馴染だから」

「そこから恋に発展したりとか」

「してないよ」

「愛が芽生えたりとか」

「してないかな。家族愛みたいなものならあるけど」

「海外から別の幼なじみがライバルとしてやってきたりとか」

「してません。井上さんって結構発想力が豊かなんだね」


 同じ学園内に敵なら二人いるけどね。

 井上さんって、いつも本を読んでるからなんとなくわかってたけど、そういうのやっぱり好きなんだな。


「あぅ、ご、ごめんね。私ね本がすっごくとか好きで、日向君とか朝道さん見ていつも本の中の人みたいだなぁって思ってたりして」

「そうかな?」


 いやまぁ、本の中の人というかゲームのキャラではあるんだけどね。


「そうだよ! 同じ高校で、幼なじみ同士とかもうどんな王道だよって感じで。もうね、いつも二人見ててごちそうさまですって思ってたし——」

「ふふっ」

「え、あの、どうかした?」

「井上さん、そんな風に話せるんだね」


 好きなことなら話せる人はいるけど、井上さんもそのタイプみたいだ。

 私にはそこまで夢中になって話せることがないから羨ましいといえば羨ましい。


「あ、ごめんね! 私夢中になっちゃて」

「いいよ気にしなくて。それよりも井上さんの新しい一面を見れて嬉しかったかも」


 こうして、私はこの学園に来て初めて、友達と呼べる人をつくることができた。

 井上さんは気付いてないみたいだけど、私も友達いなかったしね。


「そろそろ職員室だね。話してたら思ったよりも時間かかっちゃったし、早く渡して戻ろうか」

「そ、そうだね」


 そろそろ晴彦も教室に戻っている頃だろう。友澤が一緒にいるなら、井上さんにちょっかいをかけないように注意するとしよう。


「それじゃあ井上さん。これからよろしくね!」

「はい、よろしくお願いします!」


 こうして私達は友達になった。


「あ、でも。友達になったんだしもう少し砕けて話してもいいよ?」

「それはまだちょっと。心がもたないかもしれないです」


今回は新キャラ井上さんの回でした。ちなみにフルネームは井上めぐみです。

一応今後のストーリーに関わるキャラとなっております。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

もし、気に入っていただけたならブックマークよろしくお願いします!私の励みにもなりますので。

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は8月18日9時を予定しています。


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