第150話 醜い世界
最近文字数少なくて申し訳ないです。もっと繋げて書いてもいいかなーとも思うんですけどね。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
晴彦が洗脳を解き、自我を取り戻した時点で霞美の苛立ちは頂点に達しようとしていた。そして霞美の目の前で繰り広げられる、霞美に言わせてしまえば茶番劇。
(なんだこれ……なんなのこれ。私はこんなのが見たかったんじゃないっ!)
霞美が望んでいたのはもっとドロドロしたものだ。人の本能を、欲望をさらけ出した醜いもののはずだった。しかし今の状況はどうだ。とってつけたような茶番で霞美の用意しようとした舞台は完全に壊されてしまった。それが霞美にとってどれほど屈辱的なことか。
霞美の中に湧いた黒い感情は際限なく膨れ上がり、その心をドス黒く染めていた。
「ふざけたことを抜かすな!」
気付けば霞美は叫んでいた。霞美は認めない。この世界が綺麗に終わろうとすることを。それを認めてしまえば。霞美の今までしてきたことは全て無意味になってしまうのだから。
(たとえ無価値だっていい。でも、無意味になんかさせてたまるか!)
「お前たちの話す綺麗事を聞いてると虫唾が走る! 何が忘れることはないだ。前に進まないといけないだ! その女にそんな資格があるわけないだろ! どいつもこいつも気持ち悪いんだよ!」
霞美の最も嫌うもの。愛や恋。そしてそれを謳う人間たち。霞美は知っている。この世の中がそんなに綺麗ではないということを。裏切りと憎しみに満ちた最悪の世界であるということを。
「この世界に愛なんてものがあるはずない! 友情も、信頼も、全部全部まやかしなんだよ! それを知らない奴らが多すぎるから私が教えてやるんだ。この世界の醜さをね! お前たちの言う愛なんてこの醜さの前じゃカス同然なんだよ!」
叫べば叫ぶほどに霞美の心から次々にあふれ出してくる怒り。嘆き。そして悲しみ。
ひとしきり言い切った霞美は、心を落ちつけるように数回深呼吸する。そして霞美は晴彦の事を見て言う。
「晴彦……だいたいお前わかってるの? 零音はお前のことなんてその幼なじみの代わりとしか思ってないんだよ? 零音にとって晴彦の存在はその冬也の代替品でしかなかったんだよ」
「ちがっ、そんなこと——」
「違わないよ! もし零音が本当に晴彦の事を見てたって言うなら、好きだったって言うなら元の世界に戻りたいなんていうわけがない。思い出してよ。今まで本当に晴彦に冬也の存在を重ねたことがないって言えるの?」
「それは……」
「ふん、やっぱりね。結局そうなんだ。晴彦のことを好きだなんだって言っても、結局その先に見てるのはその冬也って奴のことだけなんだよ」
押し黙る零音を見て嘲笑する霞美。しかし、晴彦はそれを聞いてもさして気にした風でもなく言う。
「それの何が悪いんだよ」
「は?」
「俺は冬也のことを少ししか知らない。でも、零音にとってどれだけ大事な奴だったかってのは知ってる。もし零音が俺のことを冬也の代わりにしてくれてたっていうなら……少しでも代わりになることができてたなら俺は嬉しいよ」
「……バカなの?」
それが晴彦の出した答えだった。例え零音が自分のことを冬也の代わりと思っていたとしても、それで零音の心が救われるならそれでいいという結論。
思いもよらぬ晴彦の言葉に呆気にとられた霞美は思わずそう呟いてしまう。
「それがバカだって言うなら、俺はバカでいいよ」
「ハル君……」
「なんだよそれ……なんでそんなことが言えるんだよ。わからない。意味が分からない。私はお前をそんな風に設定した覚えはない!」
「設定?」
「お前も……お前も! どいつもこいつも私の描いた通りに動かない! ここは私の世界なのに! 私の作った『アメノシルベ』の世界のはずなのに!」
「霞美の作ったって……どういうことだよ」
「どういうことも何も……そのままの意味だよ。『アメノシルベ』は……私の作ったゲームなんだから」
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!
それではまた次回もよろしくお願いします!
次回投稿は3月7日21時を予定しています。