表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/353

第148話 晴彦と零音

最近また書きたいものが増えてきたのです。時間が……時間が圧倒的に足りないのです。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 ようやく自分の体を取り戻し、現実世界へと戻ってきた晴彦。そんな晴彦の目の前にいたのは不安げな顔をした零音だ。


「なんて顔してんだよ」

「ハル君……なの?」

「あぁ、そのはずだぞ」


 思った以上に疲弊しているのか、膝をつき息の荒い晴彦。

 晴彦が洗脳を解き、戻って来たのだということがわかり安堵の息を吐く零音。しかし、その表情はすぐに曇ってしまう。

 その原因は明白だ。晴彦に対してしてしまったことに対する罪悪感。それが零音の心を苦しめていた。


(晴彦に嫌われたかもしれない。そう思うだけでツラい……でも、何より嫌なのはそれを考えただけで晴彦が戻ってきたことを心から喜べない自分自身。結局私は私のことしか考えてないんだ)


「どうしたんだ?」

「……ううん。なんでもないよ。戻って来てくれて本当に……本当によかった」


 自分勝手だと理解しつつも、それは零音の本心だった。


「くそ、まさか洗脳が解けるなんて……零音! なんでもいい! さっさと終わらせろ!」


 まさか洗脳が解かれると思ってなかった霞美が焦ったように零音に対して叫ぶ。焦るのも無理はないだろう。霞美のこの場においての唯一持っていたアドバンテージが今まさに失われたのだから。


「ハル君……」

「零音……俺は」

「言わないで!」


 零音に向かって言葉を発しようとする晴彦。しかし零音はその言葉を遮るように叫び、手に持っていたナイフを晴彦に突きつける。


「お願い……何も言わないで。ハル君に……晴彦に見捨てられたら……私は……」


 零音は自分のしたことがどれだけ酷いものであるかということは理解している。普通の人であるならば零音のことを許しはしないだろう。言ってしまえば零音は晴彦の精神を殺そうとしたのだから。

 そう考えた零音はその心を閉ざそうとしていた。しかし、零音からナイフを向けられた晴彦に動揺はない。穏やかに零音に語りかける。


「なぁ零音……今から話すことは信じられないかもしれないけど、最後まで聞いてくれないか?」

「……?」

「俺さ、さっきまで変な所にいたんだよ」


 想像していたことと全く違うことを話し始めた晴彦の言葉に零音は疑問の表情を浮かべる。零音がしっかり自分の話を聞いていることを確認した晴彦はそのまま話を続ける。


「そこで俺は二人……でいいのかな。まぁ、とある人たちに会ったんだよ」

「……誰に会ったの?」

「……神様」

「っ!?」


 晴彦の言葉に驚きを隠せない零音。そしてそれは横で話を聞いていた雫や雪、霞美も同様だった。めぐみや奏はわけがわからないといった顔をしている。


「神様に会ったって……そんなの」

「信じられないか? まぁ俺だっていきなり神様に会ったなんて言う奴がいたら頭がおかしいと思うからな。でも……零音ならわかるだろ?」

「…………」

「とにかく、俺は神様に会ったんだよ。まぁ、あれが神様かって言われたらまだちょっと疑ってるけどな」

「それで、ハル君は神様にあってどうしたって言うの?」

「そこで聞いてきたんだ。俺の……俺達の世界の真実をな」

「「「っ!?」」」

「そんな……じゃあまさか……」

「あぁ知ってる。ここがゲームの世界で、俺がそのゲームの主人公だってことも。それから……」


 思ってもみなかった晴彦の話に言葉を失う零音達。しかし、晴彦の話し方はあくまで穏やかだ。しかし、話の続きをしようとした時に少しだけ言葉を詰まらせる。


「それから、零音達のことも聞いた」


 それはある意味零音にとって、零音だけでなく雫や雪にとっても致命的な言葉だった。ずっとひた隠しにしてきたことを、一番知られたくはなかったことを晴彦に知られてしまったのだから。


「だから知ってる。零音達がなんのために俺に近づこうとしたのかってことも……な」

「ち、ちがっ……私はっ! わたし……は……」


 思わず何かを言いかける零音だが、その言葉の先が出てこない。どんな言葉を言ったところでそれは言い訳にしかならないことがわかっているからだ。


「でもさ、俺にとってそれは問題じゃないんだ」

「え?」

「そりゃもちろん驚いたし、ショックだったけどさ……ほら」


 そう言って晴彦は零音の持っていたナイフの刃の部分を無造作につかむ。もちろん、その手からは血が流れる。いきなりの行動に驚く零音だが、ナイフを動かせば今以上に晴彦が傷つくとわかっているのでナイフを動かすこともできない。


「ハルく、何してるの! 早く手を離して!」

「っ……あー、やっぱ痛いな」

「当たり前でしょ! 何バカなこと言ってるの!」

「そう。痛いんだよ……零音」


 ナイフから手を離した晴彦は痛みに顔をしかめながらも話を続ける。


「ここがゲームの世界だって言われても、何だって言われても……ここは俺にとって間違いなく現実で、ゲームの世界なんかじゃないんだよ。だから怪我したら普通に痛いんだ」

「あ……」

「なぁ零音。聞かせてくれ。お前にとって……この世界は現実か?」


 晴彦は静かに零音のことを見据えて、そう問いかけた。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は3月4日21時を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ