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第146話 たどる記憶

2月も終わりですねー。3月に入ってからも頑張るのです!

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 意識を失った晴彦が見たのは、とある少女の……いや、少年の記憶であった。


「なんだ……これ」


 晴彦はその少年に見覚えはなかった。しかし、その姿を見ているとなぜか懐かしい気持ちになった。晴彦の心が、その少年を知っていると訴えていた。


「誰だ……あれ」


 その少年は孤独を抱えていた。何よりも愛に飢えていた。信じていた兄のような存在に裏切られ、心を閉ざした少年はそれでも心に寄り添ってくれる人をずっと求めていた。そんな少年に転機が訪れる。少年の通っていた学校に転校生がやってきたのだ。

 そして、その転校生の姿に晴彦は見覚えがあった。少し幼いものの、その転校生は晴彦が先ほど出会った冬也に似ていたのだ。


「あれ……冬也か?」

「そう。君がさっき出会った少年だよ」


 突如として響く声。ヌルっと現れたその声の主はさきほど晴彦の出会った神であった。


「お前……なんなんだよここは!」

「言ったでしょ。ここは記憶。君のよく知る人物の……ね」

「俺の知ってる?」

「そうそう。ま、見てればわかるよ」


 そして再び時は流れだす。少年は冬也と仲良くなり、その妹とも仲良くなり……晴彦の目から見てもこれが親友同士というものなのだろうと思えるほどだった。

 しかし、少しづつ状況に変化が現れ始める。冬也と仲良くなっていくことで満たされていた少年の心が再び歪み始めたのだ。冬也を他の誰かに奪われることへの恐怖によって。


「あの少年はね。自分に自信がなかったんだよ。なにより、一度大事な人を失った記憶が、少年の心を苛んでいたんだ」

「でもそいつと冬也は友達だったんだろ? 冬也のことを信じてなかったのか?」

「人っていうのはね。マイナスの感情の方が強いんだよ。誰かを信じる気持ちより、誰かを疑う気持ちの方が大きくなりやすいんだ。あの子の場合はそれがより顕著だったんだ」


 そしてそんな歪みを抱えたまま、事件は起こってしまう。冬也の死という最悪の事件が。

 少年の心は絶望に沈む。少年は心の拠り所としていたものを失ったのだ。そうして生まれた絶望とはどれほどのものなのか……それは晴彦にはわからなかった。


「こうして少年は大事なものを全て失ったんだ」

「…………」


 そして絶望に沈んだ少年の記憶は唐突に途絶える。

 そして次の瞬間の少年の記憶は白い空間での記憶だった。そこには少年以外にも二人の男がいて、その前にいたのは神であった。

 そして再び記憶は途絶え、次の記憶は少女としての記憶であった。

 晴彦の見ていた少年は少女となり、成長していく。

 そして時は進み、晴彦は理解する。これが誰の記憶であるのかということを。


「気づいたかい?」

「……あぁ。これは……零音の記憶なんだな」


 目の前の少女の姿が、晴彦の記憶の中にある零音の姿と一致する。


「正解♪」

「でもわからないんだ。あれは……ホントに零音の記憶なのか?」

「うん、そうだよ。あれは朝道零音のなる前の記憶。あの子はね、私がこの世界に連れて来たんだ」

「今の話が本当なら……この世界は……俺達は……」


 晴彦が知ったのは、知ってしまったのは零音に関することだけではない。晴彦自身がどういった存在なのかということも知ってしまった。


「そう。君がいたのはゲームの世界。君はそのゲームの主人公なのさ」

「…………」

「いま明かされる衝撃に真実ってね。驚いたかい?」

「一つ……聞かせてくれ」

「何が聞きたいんだい?」

「俺達は……偽物なのか?」

「それを決めるのは君自身さ」

「……なるほどな」

「それでどうだい。全てを知った気持ちは。零音の君への気持ちが、全部偽りだと知った気持ちはさ。零音が君のことを冬也の代わりとして見ていたと知った気持ちはさ」


 ニヤニヤ、嫌らしい笑みを浮かべながら晴彦のことを見る神。


「そんなの……決まってるだろ」


 そして晴彦は神へ答えを返した。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は3月2日21時を予定しています。

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