第145話 流れる涙
投稿予約してると思ったら失敗してました。申し訳ないのです。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「鬱陶しいなぁ……」
未だに抵抗をやめない雫達の姿に、霞美は苛立ちを含んだ声で呟く。
(零音は問題ない。あの子はこっちが晴彦を握ってる限り動けないし、何よりあの子の心は脆い……問題は他の奴ら。こっちが気を抜いたらすぐにでも動けるようにしてる……一番厄介なのは奏かな。狐狼達のことを一瞬で片付けられるあの戦闘力は脅威だから)
どうやって処理するかを考えながら、霞美は隣に立つ晴彦のことを見る。
(全員がこいつの為に頑張ってる。できれば私もこいつを傷つけたりしたくないし……まぁできれば、なんだけどね。死にさえしなければ問題ないし)
「ねぇ君達まだ抵抗するの? いい加減面倒なんだけど」
「うるさい! そっちこそさっさとハルっちの……晴彦のこと解放して!」
「自分が不利になることがわかってて人質解放するバカがいるわけないでしょ。っていうかさぁ、忘れてない? 晴彦の命を握ってるってこと。その気になったら一瞬で終わらせることだってできるんだよ」
「この卑怯者!」
「日向君のこと放してください!」
「嫌だよ。っていうか君達……あんまり調子に乗らないでよね」
霞美が呟くと、狐狼達の体がひと際大きくなる。
「これは……」
「狐狼達の強さがあの程度だと思わないでよね」
それまで奏達が押えていた狐狼達の動きが一変し、徐々に奏のことを押し始める。
「ほらほら、早く降参しないと大変なことになっちゃうよ」
「お犬様が……調子に乗っておられるようですね」
そうは言いつつも、雫と零音とめぐみの三人を庇いながらでは奏も本領を発揮できていない。
「そろそろ気付きなよ。もう君たちに勝ち目はない。諦めないって言うと聞こえがいいかもしれないけど、君達の今していることは見苦しいだけだよ。さ、もう飽きてきたし終わらせようかな」
霞美はそう言って奏と雪と戦っていた狐狼達を自分のそばへと戻す。
「これから狐狼達に君達を攻撃させる。でもそれを防ぐことは許さない」
「は? 何言ってんの。そんなの素直に聞くわけ——」
「もし防いだりしたら、今ここで晴彦を殺す」
そう言って霞美は晴彦の首元にナイフを近づける。そのナイフが晴彦の首を薄く切り裂き、血が流れる。
それを見た零音やめぐみは顔を青くして、雫や雪は険しい顔をする。
動きを止めた零音達を見て、霞が満足そうな顔をする。
「そうそう、それでいいんだよ。キャラクターが創造主に逆らうなんてことあっちゃいけないの。さぁ……やれ」
無慈悲に霞美が宣告する。
それを受けた狐狼達が襲いかかり、奏達に攻撃しようとしたその瞬間、零音が立ち上がって叫ぶ。
「もうやめてっ!」
その言葉を聞いた瞬間、霞美が狐狼達の動きを止める。
「もうやめて……わかったから。もうあなたに逆らったりしないから。皆のことを傷つけないで」
「そのお願いを聞いたとして、私になにか利益あるのかな……っていいたいけど、いいよ。私も望んで君と敵対したいわけじゃないし」
「ちょっと! 何言ってるの!」
「しょうがないでしょ! これ以上何ができたっていうの。私はこれ以上晴彦の傷つく姿をみたくないの」
「それは……」
「そもそも、これは私のしたことが原因だから……その責任は私が取るよ」
そう言って霞美の元へと歩いて行く零音。
「最初から私に歯向かわなければこんなのことにはならなかったのに」
「……そうね」
「さ、舞台は整った。雫と雪、モブ二人は動けない。そしてこの場にいるのは互いを思い合う二人、零音と晴彦。皆で見届けようよ二人の恋の行く末をさ」
零音と晴彦の傍から離れる霞美。その時にそっと零音の手にナイフを持たせることも忘れずに。このナイフの意味する所は一つだ。晴彦の告白が終わった後に
零音は何も言わない晴彦のことをただジッと見つめる。
「……ごめんねハル君。本当ならもっと落ち着いた雰囲気の場所でしたかったんだけど」
そんな零音の言葉にも晴彦は反応は示さない。
それでも零音は晴彦のことを見つめ続ける。
「大丈夫……私は、今度こそ一人にしたりしないから」
(ごめんね井上さん。私……やっぱりそっちには行けないみたい)
そして零音は涙を流しながら、ナイフを握る手に静かに力を込めた。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!
それではまた次回もよろしくお願いします!
次回投稿は2月28日21時を予定しています。