第143話 新たなる邂逅
このままいけば2月の間に終わるか3月の頭に終わるか……どちらにしても一部もあと少しまでやってきたのです。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
黒い空間の中を晴彦は突然現れた冬也と名乗る少年に先導されて歩いていた。
「なぁ、これってどこに向かってるんだ?」
「ん。まぁすぐに着くから安心してろって」
「ここがどこかもわかってないから全然安心できないんだが」
「はは! 確かにな」
そう言って冬也は声をあげて笑う。相変わらず先は真っ暗で、晴彦には自分の姿と冬也の姿しか見えていないが、先を歩く冬也はまったく迷う様子もなくどんどん歩いて行く。
「そういえばさ、なんで宇崎は俺のこと知ってたんだ?」
「冬也でいいよ。お前のこと知ってたのはこの先にいる奴から聞いたからなんだが……ま、詳しいことはそいつから聞いてくれ。俺はただ案内を頼まれただけだからな」
「まぁいいけど。何も知らないままついてくのは流石に不安だぞ」
「確かに……それもそうか。って言ってもな、俺も詳しいことなんかほとんど知らないから答えれることなんて限られてる」
「じゃあお前のことだけでもいいから教えてくれよ。こう言っちゃ悪いけど、まだ完全に信用したわけじゃないからな」
「そりゃそうだ。まだ会ってから十分も経ってないわけだし。お互いの名前のことしかしらないからな。まぁ俺はお前のことなら多少は知ってるわけだけど」
「? なんで知ってんだよ。まさかお前……変態か?」
「違うわ!」
若干距離を取る晴彦に怒る冬也。もちろん晴彦も本気で言っていたわけではないが。
「聞いてたんだよ。この先にいる奴からな。だから知ってた。お前も、お前の……幼なじみのこともな」
「零音のことか?」
「零音……そう、零音なんだよな。そいつのことも知ってるよ」
「ますますわからないんだが」
「今はあんまり詳しいことは言えないんだよ。でもそうだな。言えることがあるとしたら……もしかしたらお前を助けられるかもしれない。この現状からな」
「ホントか!?」
「おい慌てるなって。可能性があるってだけの話だから」
「あ、悪い。でもそれってどういうことだよ」
「この先にいる奴がお前のことを助けてくれるかもしれないって話だ。まぁ、俺はあいつのことあんまり好きじゃないけどな」
「どういうことだ?」
「会えばわかるさ。なぁ俺も一ついいか?」
「別にいいけど」
「お前さ、幼なじみのことどう思ってんだ?」
「ぶっ! な、なんだよいきなり!」
思いもよらぬ質問に面食らう晴彦。
「そんな変なこと聞いたか?」
「いや変だろ。ほとんど初対面の奴にそんなこと聞くか普通」
「そう言われるとそうだけどな。まぁ別にいいだろ。ここには俺とお前しかいないんだ。気になったから教えてくれ」
「いいけどさ。俺が零音のことどう思ってるかだろ」
なぜ初対面の人にこんな話をしているのかと不思議に思いつつも、なぜかはぐらかしたり嘘を吐いたりする気にもならず、晴彦は素直に零音にことをどう思ってるかを冬也に伝える。
「好きだよ」
「友達としてか? それとも異性としてか?」
「異性としてだよ。俺は異性として零音のことが好きだ」
「……そうか」
「それがどうかしたのか?」
「いや、なんでも。それよりもそろそろ着くぞ」
冬也がそう言うと、目の前に突然扉が現れる。
「この先にお前のことを待ってるやつがいる」
「冬也は行かないのか?」
「あぁ。俺が頼まれたのはあくまで案内だけだからな」
「そっか。ありがとな」
「気にするな……なぁ」
晴彦が扉を開けようとした直前に冬也が声を掛けてくる。
「どうした?」
「お前の幼なじみに……零音に、伝えて欲しいことがあるんだ」
「伝えて欲しいこと? ってか、冬也と零音って知り合いなのか?」
「そうだとも言えるし、そうじゃないとも言える。まぁでも、俺の名前だしたらわかるさ。たぶんな」
「そうなのか? それで、なんて伝えればいいんだ?」
「もう俺のことで気に病むなって。そう伝えといてくれ。俺はなんだかんだこっちで上手くやってるからさ」
そう言って冬也は笑った。その言葉に込められた意味を晴彦は理解できなかったが、ちゃんと伝えるということを冬也に約束して扉を開く。
「うおっ、眩しっ!」
それまでの暗い空間から一転、今度は何もない真っ白な空間に出る晴彦。後ろを振り返っても扉はすでになく、冬也の姿もなかった。
「なんだここ……」
「あぁ、やっときたんだ」
呆然と周りを見渡していると、突然晴彦の前に現れる人。しかし、晴彦はそれが人の形をしているということはわかったが、男であるのか女であるのかそれがわからなかった。声を聞いたはずなのに、男の声にも、女の声にも聞こえる。落ち着いた大人のような声かと思えば、無邪気な子供のような声にも聞こえる。
「あの子に案内を任せたはずだけど、ずいぶん遅かったね」
前にいるはずなのに判別できない。であるというのに、晴彦はその状況に何の違和感も覚えていなかった。それを当たり前の事実として受け入れていた。
「なんなんだお前……」
「私のこと? そうだなぁ……色々な呼ばれ方をしているけど、いつもはこう名乗っているよ」
目の前の人物は確かに笑って、告げた。
「神様……ってね」
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次回投稿は2月23日21時を予定しています。