第142話 三人が揃う時
体調不良で投稿を休んでしまって申し訳ありませんでした。体調を崩さないように投稿の仕方についてもちゃんと考えないといけないかもしれませんね。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
雫と奏が雪と会うことができたのは偶然だった。学園へと向かう道中で運良く出会うことが出来たのだ。そして、雫と雪は共に学園へと向かうことにしたのだ。
「そう。色々と大変だったのね」
「大変だったと言うかなんというか……まぁ、あの病ヶ原さんだっけ。あの子の持ってたアイテムに助けられた部分も大きいんだけど。そういえばあの子達は?」
「置いてきたわ。奏との戦いで想像以上に疲労してたみたいだから」
そう言った時、若干奏のことを睨んだのだが、当の奏は素知らぬフリだ。
「ふーん、ま、お互いに大変だったってことだね。でも。残すは本丸のみってわけだ」
「……えぇ。でも気を抜かずに行きましょう」
そのまま走り続けて学園が近づいてきた時、不意に雫達の前に立ち塞がる人影。それは保険医である風城彩音であった。
「ちょっと止まってもらってもいいかな」
「っ!?」
驚きに足を止める雪と雫。奏は突如現れた彩音の存在を警戒するように構える。
「あぁそんなに警戒しなくてもいい。ちょっと聞きたいことがあるだけだからさ」
「聞きたいこと?」
「そう。単純な話。君達はなんのために学園に向かおうとしている?」
「なんのため?」
「日向晴彦を取り戻すためか、朝道零音や夜野霞美にしてやれたことに対する仕返しか……それを聞かせてもらいたい」
「どうしてそんなことを?」
「強いて言うならば興味……かな。今の君たちが何を思っているのか。それを知りたい」
彩音の言葉に嘘はない。彼女は雫達がここに至るまでの経緯を見ていた。生半可な道のりではなかったということを彩音は知っている。普通であるならば膝を折ってもおかしくないということを。事実、雪は一度心を折られている。しかしそれでも立ち上がったのだ。
その理由を彩音は知りたかった。
そんな彩音の問いに顔を見合わせる雪と雫。二人の答えは単純で明瞭だった。
「「自分の為」」
「自分の為?」
「アタシは霞美って人のことはよく知らないけど……あの子に、零音に言われっぱなしでいられるほど大人しくないから。やられたらやり返すって決めたの」
「やられたままでいて平気なほど達観してるつもりもないですから。そこに大層な理由なんていらないでしょう」
「くく……ははは! 確かにそうだ。やられたらやり返す。至極真っ当な理由だ」
「納得していただけましたか?」
「あぁ、もちろんだ。邪魔をして悪かったね。一つ良いことを教えてあげよう」
「良いこと……ですか?」
「彼女達は学園の屋上にいるみたいだ……急いだほうがいいかもね」
それだけ言い残して彩音は雫達の前から去って行った。
「……なんだったの?」
「さぁ? でも屋上にいるのが本当なら確かにいい情報ね。急ぎましょう」
そして学園に着くなり奏が屋上を見上げて険しい顔をする。
「これは……良くないかもしれません」
「どうしたの?」
「先ほどの子犬達と同じ気配が屋上からします」
奏が言っているのは狐狼のことだ。その気配をいち早く察した奏は、走るスピードを速める。
「すみませんお嬢様。先に屋上に向かいます」
「先にってどうやって……ちょっと奏!?」
走るスピードを上げた奏は校舎内に向かって走るのではなく、聳え立つ壁に向かって直進していく。そしてなんとそのまま壁を垂直に蹴って登り始めた。
「うっそぉ」
「えぇ……」
目の前で起きたことに、散々不可思議な現象を見てきた雫達でさえ驚きに思わず足を止めてしまう。
「おい、あいつホントに同じ人間なのかよ」
「……聞かないでくれるかな。ボクもだんだん自信が無くなって来たよ」
思わず頭を抱える雫。これまでも散々常識外の行動を見てきたが、壁まで登れるとなれば人間業とは思えなかった。
「まぁ、奏のことについてここで言っててもしょうがないよ。ボク達も先を急ごう」
「壁かぁ、頑張ったらオレも同じことできっかな」
「できたとしてもやめてほしいね」
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そして、屋上にやって来た雫達が見た光景はめぐみを庇うように覆い被さる零音の姿と、その前に立つ奏、そして対峙するように立つ狐狼と霞美の姿だった。
「はぁ、外野がぞろぞろと……君たちが来るのはもう少し後でもよかったのにさ」
「じゃあベストタイミングだったってことだね」
皮肉るように雪が言う。霞美にとって望ましくないタイミングということは雪達にとって良きタイミングあったということだ。
「状況はよくわかんないけど……これってこっちに有利な状況ってことでいいよね」
明らかに零音達を襲うとしていたとわかる狐狼達の姿にそう判断する雪。
「まぁ、色々と言いたいことはあるけどさ。それは後でいいや。今は君を先に倒すよ」
「ここに来るまでの間散々苦労させられたものね。いくら温厚な私でもちょっと怒ってるわ」
今の状況は霞美に完全に不利だ。多少疲れているとはいえまだ動ける雪や雫に加え、一人で狐狼達を圧倒した奏までいるのだから。しかし、それでも霞美に焦る様子はまったくなかった。それどころか、少し笑みまで浮かべている。
「何を笑ってるの?」
「いやさ、これで追い詰めた気になれるんだから考えが甘いなぁって」
「甘い?」
「君達さ、忘れてない? 私が晴彦に何をしたかを」
ニヤリと笑った霞美がパチリと指を鳴らすと、雫達の後ろから晴彦が現れる。その様子は普通ではなく、ボーっとして、ここではないどこかを見ているようだった。
「ハル君!」
「ハルっち!」
「晴彦!」
零音、雪、雫の三人が声を掛けても晴彦はまったく反応を示さない。
そのまま霞美の横まで歩いて行ってしまう。そして、何の反応も示さない晴彦の首筋に向けて霞美は服の中に隠していたナイフを突きつける。
「はぁい。これで形勢逆転。これだけで君たちはもう動けない。まぁ動いてもいいけどね。そしたらこのナイフで晴彦をプスッとするだけだからさ」
そう言って霞美は冷たい笑みを浮かべた。
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次回投稿は2月21日21時を予定しています。