第137話 雫達の戦い その後
書いてると色々な資料が欲しくなる……どれから買っていくか悩みますね。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「うぅ、痛いです……」
奏との戦いの後、雫達は体を休めつつ怪我の治療をしていた。
「すいません。お嬢様を騙すためにそれなりに本気でいきましたから。お嬢様にもう少し早く気付いていただければここまでする必要はなかったのですが」
「う、悪かったわよ。察しが悪くて」
「そんな、謝らないでくださいお姉さま! 弱かった私が悪いんですから」
「まぁなんて健気なんでしょう」
わざとらしく言う奏。花音は本気で言っているのだろうが、それすらも雫の罪悪感を刺激する。
「お嬢様はなんでも一人で抱え込みすぎなんですよ。一人でなんとかしようとしていなければ今回のことだってとれる手段が多くあったはずなのに。そこで素直に頼れないのがいけない所なんです」
「うぅ……」
全く言い返せない雫。誰かに指示をすることと、頼るというのは似て非なるものだ。それができない所が雫の弱い所である。
「お嬢様がもっと他の人を頼ることができれば今の状況は大きく違ったでしょう。誰かに頼らず自分で解決しようとした結果ですよ。反省してください」
容赦ない奏の言葉。雫は黙ってそれを受け入れる。自分でできると思い上がった結果、ここまで追い込まれたのは事実なのだから。ここに送られたのが奏であったからよかったものの、他に人が送られていた可能性もある。そうなれば無事にいれたかどうかわからない。
「さ、怪我の治療は終わりました。それでお嬢様、この後はどうなさるんですか?」
「もちろん学園に行くわ……だから、力を貸してちょうだい、奏」
「えぇ、喜んで」
うやうやしく頭を下げる奏。ここでもし雫が助力を頼まなかったとしたら、奏に再び怒られていただろう。
「花音達にもお願いしたいけど……その様子じゃ厳しそうね」
「そんなこと、私なら全然大丈夫です!」
「てい」
「っっ!?」
横から弥美につつかれて悶絶する花音。奏から受けたダメージはまだまだ回復はしていないようだった。そしてそれは弥美も同様で、依依は言わずもがなだ。いまだ喋る余力すら戻っていない。
「すいません、私もできるなら一緒に行きたいんですけど」
「大丈夫よ。それよりここまでありがとう。あなた達がいなかったら全部手遅れになってたかもしれないわ」
「いえ。会長、頑張ってください」
「えぇ、ここまでしてやられたんだもの。必ずやり返すわ」
「お嬢様」
花音達と話していると、奏が背後を警戒するように立つ。
そして現れたのは昨日雫達のことを苦しめた狐狼だった。
「あれ、昨日の」
「まさかまた出てくるなんて」
「……なるほど、さっそく追手を送ってきましたか」
その数は昨日よりもさらに多い五匹。今の雫達のいる狭い道では逃げることも容易ではないだろう。顔を青くする花音達に対して、雫と奏は大して動揺もしていない。
「いけるわね、奏」
「聞かれるまでもありません。それに今の私は……少々怒っていますので」
奏がそう言ってロングスカートの下から取り出したのはトンファーだ。
そして構えると同時、奏から強烈な殺気が放たれる。それを正面から受けた狐狼達は一瞬硬直してしまう。
それは奏の前では致命的な隙となる。
「さぁ子犬たち。お姉さんが遊んであげましょう」
一瞬の後、奏の姿は雫の前から消え失せ、狐狼達の目の前に移動していた。
「まず一匹です」
振りぬかれたトンファーが奏の前にいた狐狼に当たり、奏は踊るように一匹、また一匹と狐狼達を蹴散らしていく。なんとか反撃をしようにも奏の持つトンファーに容易く防がれてしまい、逆に反撃されてしまう。
狐狼達もけして弱いわけではない。例え一匹であっても一般人であれば勝てないであろう。三人以上の大人が揃ってようやくといったところだろう。それを五匹まとめて相手にしてなお余裕のある奏がおかしいのだ。
そんな様子を見ていた花音達の表情は若干ひきつっている。
「奏さん、私達の時はホントに手加減してくれてたんですね」
「そうね。もし手加減してくれてなかったら、私達一瞬で終わってたでしょうね。さすがにあそこまで常識外だとは思わなかったけれど」
「あんな化け物どこで雇ったんですか会長」
ようやく喋れるまでに復活した依依が呆れた目で言う。
「奏を見つけてきたのはおじい様だけど……奏の過去のことは全然知らないわね。気付いたらいたって感じかしら」
「はぇー、すごいですね。会長のおじいさん。どうやったらあんな人見つけられるのか教えて欲しいです」
「まったくね」
そんな話をしている間に奏が狐狼達を倒し終わる。終始圧倒したままで結局傷一つ負うことなく片付けてしまった。
「準備運動にはちょうどいい相手でしょうか」
息一つ乱していない奏が言う。
「さぁ片付きました。行きましょうかお嬢様」
「えぇ。それじゃあ行ってくるわね」
「気を付けてくださいねお姉さま。何があるかわかりませんから」
「ホントは催涙弾とか渡したいんですけど、もう残ってなくて……すいません」
「気にしなくていいわ。あなた達も気を付けてね」
「はい、もちろんです。少し休んだら私達も学園に向かいます」
「それじゃあそれまでに終わらせれるように頑張らないとね」
雫と花音は花音達との別れを済ませて学園へと向かった。
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次回投稿は2月13日21時を予定しています。