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第135話 雫達の戦い 前編

寒さにやられてしまったかもしれない……体調には気を付けなければと思ったばかりだったのに。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 雫達は学園へと向かう途中、人の少ない道を選んでいた。少しでも見つかるリスクを下げるためである。

 しかし、雫はその道に違和感を覚えていた。


「おかしいわ」

「どうしたんですかお姉さま」


 急に立ち止まった雫に問いかける花音。雫は警戒するように周囲を見渡しながら花音達に自分の感じている違和感について説明する。


「追手がいなさすぎるのよ」

「? 追手のいない道を選んでいるんだからそうなるのも当然なんじゃないんですか?」

「確かに私達は人のいない道を選んではいるわ。でも、普通なら完全に人がいない場所なんてほとんどないはずなの。でも、私達は夕森さんが囮になって以降、ほとんど追われていないわ。そう……まるで誰かに誘導されているような気がするの」

「それはいくらなんでも考えすぎなんじゃ……」


 弥美がそういうのも無理はない。もうすぐ学園に着くということもあるし、昨日雫達の出会った狐狼のような存在を除いて障害になるような存在が思いつかなかったのだから。そして、昨日の経験を踏まえて雫達は狐狼に対する対応策をちゃんと用意していた。

 だからこそ弥美は雫の考えすぎだと思ったのだ。


「慎重なのはいいかもしれませんけど、考えすぎて動けなくなったら意味がないですよ?」

「……それもそうね。ごめんなさい、急ぎましょう」


 弥美の言うことにも一理あると思った雫は、再び学園へと向かって走りだそうとする。

 その時のことであった。


『はいはーい。この放送聞こえているかなー』


 突如として霞美の声が響き渡る。また放送を使っているようだ。


『もしかしたらそろそろ気付いてる頃かなーって思ってさ。追手の少なさに。でももう手遅れなんだよね。君達があんまりにも想像した通りに進んで行くからさ、私おかしくって笑っちゃったよ。まぁそれはいいとしてさ。君達にピッタリの相手を用意したからさ、是非とも楽しんでほしいな。それじゃあ学園でね。もっとも、会う時は捕まってる君たちに会うことになるんだろうけどさ』


 そう言って放送を切る霞美。


「ピッタリの相手?」

「誰のことでしょうか」

「気になるけど……先を急ぎましょう。嫌な予感がするわ」

「はい」

「わかりました」


 ここまで走り続けたせいで返事もする余裕もない依依の姿を見て先を急ぐことを決める雫。これ以上時間をかければ追手に見つかる可能性が高くなることや、霞美の言っていた相手の相手をすることは今の状況では得策ではないと思ったからだ。

 しかし、その判断は少し遅かったのだが。


「っ!? 花音、弥美、下がりなさい!」

「え、きゃあ!」


 一瞬背筋にゾクッとした感覚の走った雫は、先を走っていた花音と弥美に注意を促す。その声に驚いて足を止めた瞬間、花音達の前の道路が爆ぜる。それほど大きな爆発ではないが、もしもう一歩踏み出していれば走れないほどのダメージは受けていただろう。

 そして、爆ぜた地面の向こうから現れたのは雫のよく知る人物だった。


「今の爆発に気付きましたか。さすがお嬢様です」

「……そう、そういうことなのね」


 今もどこかから見ているであろう霞美に心の中であらん限りの怒りの感情をぶつけながらも、雫は冷や汗を流す。


「まさかあなたが敵に回るなんてね。想像もしてなかったわ……奏」

「え、奏って、会長の家のメイドさんですか!」

「なんでその人が私達に攻撃してくるんですか」


 奏の放つ圧倒的な重圧に気おされて、雫達はじりじりと後退してしまう。


「考えられるのは……住人達と同じように奏が洗脳されているということね。確かに、私にぶつけるならこれ以上の相手はいないもの」


 雫の考えた通り、奏は霞美の洗脳下にあった。雫に逃げられる可能性も考慮して事前に準備していたのだ。もちろん、容易ではなかったが。そのせいで、本来ならばもっと多くの住人に洗脳をかけれるはずだったのに、その範囲が大きく狭まってしまった。それでも無理をしてでも洗脳する価値があったと霞美は思っている。


(さぁ雫。君が絶対に勝てない相手だよ。わかるかな、もう詰みなんだよ。君はね)


 雫達が必死に応戦するのを見ながら、霞美は高みの見物を始めていた。

 一方の雫達は思いもよらぬ人が敵に回ったことによる動揺や、純粋な力の差などによってじわじわと追い詰められていた。

 どんな反撃の手段を講じても冷静に潰してくる奏。弥美が煙幕を使っても、見えているのかと言いたくなるほどに的確に攻撃をされた。


「会長、どんなメイドさん雇ってるんですか! あれもう人じゃないですよ!」

「知らないわよ。文句なら奏を雇ったおじい様に言ってちょうだい」

「ふふ、喋っている余裕があるんですかお嬢様。隙だらけですよ」

「ぐっ」


 隙を見て逃げ出せないかと考えていた雫だったが、そんな隙など奏が与えてくれるはずもなく、どんどんと体力と気力を削られていく雫達。

 雫達は絶望の戦いを強いられることとなってしまったのだった。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントをしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は2月10日21時を予定しています。

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