第134話 雪vs三銃士 後編
ようやく体が二本投稿に慣れてきた……気がするのです。体調を崩さないようにだけしたいのです。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
三銃士と雪の戦いは雪が不利のまま続いていた。
一対一ならば雪は負けないだろう。しかし、三人まとめて来られたならば話は変わってくる。ただでさえ剛は力に優れ、飛雄には速さがある。この二人がまとめてこられるだけでも雪には厳しいというのに、そこにかしこの頭脳が加わるのだ。雪以外であればあっという間に捕まっていたかもしれない。
さらに雪にとって嫌だったことは、かしこが決して攻めを焦らないということだ。付け入る隙を与えず、少しづつ雪のことを追い詰めて、逃げ場を無くしていく。今は辛うじて攻撃を避けていられるものの、このままではジリ貧であることは明白だった。
だからといって雪が焦れば一気に状況が崩れて負ける。かしこの作る流れに逆らうことはできなかった。
(あぁくそ、うぜぇな。攻めようとしたらバカゴリラが牽制してくる。後ろに避けようとしたら兎野郎が距離を詰めてくる。あの女の指示が入ってから動きが別人みたいになりやがった)
雪に起死回生の手段があるとすればかしこを倒すことだ。しかし、かしこも自分が倒されてはいけないということを理解している。だからこそ後方にいるまま前には出てこない。
(いや、諦めんな。まだチャンスはあるはずだ)
雪は攻撃を避けつつ僅かな隙も見逃さないように目を凝らし、緊張の糸を切らさない。
一方、三銃士の側、かしこも攻め切れないことに苛立ちを覚えていた。
普通の人であればすでに捕まっているだろう。しかし、雪は捕まらない。確実にダメージを与えたと思っても、そのダメージを最小限にされる。ともすれば反撃まで加えてくる。剛と飛雄が耐久力に優れているからこそ耐えきれているが、かしこがくらえばひとたまりもないようなものだ。
(あの目……気に食わない。さっさと折れなさいよ!)
何よりもかしこを苛立たせたのは雪の目だ。諦めることなく、隙を見逃さないといったその目。それがかしこの神経を逆なでする。
焦って攻撃を仕掛ければ隙が生まれる。付け入る隙を与えてしまえば一気に逆転されかねない。
どれだけ苛立とうとも、かしこは確実に攻めていくしかないのだ。
(落ち着くのよ私。今のままいけば確実に詰みの状況を作れる。苛立ったりしたらあいつの思うツボになる)
ふぅっと深呼吸して状況を見つめなおすかしこ。住宅街の裏道という限られた範囲の中で、逃げ場はほとんどない。油断さえしなければかしこ達に負けはないのだ。
(もう状況は詰め将棋と一緒。この苛立ちは捕まえた時にはらせばいい)
そう気持ちを切り替えて心を落ち着けるかしこ。
その時だった、剛の攻撃を避けた雪が体勢を崩す。この上ないチャンス。それを見た剛が雪のことを捕まえようと一気に詰める。
しかし、かしこはその状況に違和感を覚える。
(このタイミングで体勢を崩す? 油断した? いや、ありえない。あの女は一切油断なんてしてなかった。疲労が足にきた可能性……いや、違う。そんなわけない。としたならあれは……罠!)
刹那の思考、かしこは雪がわざと体勢を崩したのだということに気付く。
「剛、止まりなさい!!」
とっさに剛を止めようとするかしこ。しかし、攻め切れない状況に苛立っていたのは剛たちも同じ。雪が明確に見せた隙に食いついてしまい、かしこの指示を無視してしまう。
それを見た雪がニヤリと笑う。
胸元に手を入れた雪が取り出したのは、弥美から受け取ったアイテムの一つ、小型の催涙弾だ。
雪に向かって走り出している剛は止まれない。そんな剛に向かって催涙弾を投げつける雪。
「っ!? これは、ぐわぁああああ!」
催涙弾が直撃した剛は突如走った痛みに悶え、動けなくなる。催涙弾によって剛の動きを止めた雪はかしこに向かって走り出す。
それを見た飛雄が雪のことを止めようと跳んでくる。
しかし、それすらも雪の想定通りだった。
「お前の動きは直線的過ぎるんだよ」
まっすぐ跳んでくるとわかっているならば、それに合わせることはそう難しいことではない。かしこの方へ向かうと見せれば、飛雄が来ることはわかっていた。くるりと反転した雪は、跳んでくる飛雄に合わせて膝蹴りを繰り出す。
すでに跳んでしまっている飛雄にはそれを避ける手段がない。自身の跳躍力をそのまま跳ね返される形になるカウンター。飛雄に耐久力があることをわかっていなければしなかったであろう凶悪な一撃だ。跳ね飛ばされた飛雄は意識を失ってしまって動けなくなる。たった一手でかしこ達に有利であった状況は一気に不利になってしまった。
「ピンチは最大のチャンスってね」
「ぐぬぬぬぬぬぬ……」
残るのは戦闘力皆無のかしこだけ。悔しさを滲ませた顔で雪のことを睨むかしこ。しかし、これは演技である。かしこを倒そうと不用心に近づいてきた雪に、向かって隠し持っていたスタンガンを突き出す。
「ピンチは最大のチャンスなんでしょう!」
「確かにそう言ったね」
「え、ちょ、まっ……っ!」
しかしその一撃は容易く躱されてしまう。そしてそのまま腕をとられたかしこは雪に一本背負いされてしまう。
剛達に比べて耐久力のないかしこは、その一撃で伸びてしまう。
「でも、それは相手が油断してなかったらの話だ。お前が何も持ってないなんて思うわけないだろうが……って、もう聞こえてないか。時間もないし、先急ぐか」
のんびりしていて剛達が起きてきてはたまらないと、雪は倒れた三銃士を放置して学園へと向かうのだった。
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次回投稿は2月9日21時を予定しています。