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第133話 雪vs三銃士 前編

自分は思ったよりも体調の崩しやすい人間なのかもしれない、最近そう思い始めたのです。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

「先手必勝!」


 戦いの始まった直後、一番最初に動いたのはスピードに優れる飛雄だった。《スプリングマン》の二つ名の示す通り、一回の跳躍で飛雄は雪の背後へと迫る。

 尋常ならざるスピードだ。普通の人であればまず反応できない速度で雪のことを捕らえようとする飛雄。しかし雪はそれに気づいていた。


「それはちょっと甘いかな」

「なっ!?」


 ひらりと少し横にずれただけ、しかし真っすぐ速いスピードで動く飛雄はそれに反応できなかった。そして、雪に避けられてしまった今、その先にあるのは壁だ。


「あ、ちょっ!?」


 止まろうとする飛雄だが、上手く止まることができずにそのまま壁にぶつかってしまう。


「ぬぉおおおおおお!!」


 壁にぶつかった飛雄には目もくれず、まっすぐ雪に直進してくる剛。岩のように大きな体格も相まって、さながら壁が迫って来るようであった。飛雄にくらべればスピードはまったくないものの、だからといって油断できるわけではない。その太い腕から繰り出される一撃が壁を砕くのを雪は見ていたのだから。もしその腕に捕まるようなことがあれば雪では逃れられないだろう。


「怖いなぁ、まったく」


 ブンブンと振り回される腕を避け続ける雪。


「怖いのは当たれば、の話だけどね。そんな大振りが当たるわけないじゃん」

「くっ、黙れ!」


 挑発するように言う雪に苛立ったのか、さらに大きく腕を振り回す剛。されど雪には当たらない。そうしているうちに疲れ始めたのか、少しづつ動きが鈍る。それを雪は見逃さない。


「足元がお留守になってる……よっと!」


 滑るように剛の足元にたどり着いた雪は剛に足払いをかける。それを避けることができなかった剛は体勢を崩し、前に倒れる。それに合わせて雪が剛の顔に足蹴りを叩き込む。完全に入った一撃。普通であるならばこれで動けなくなるのだが、


「ぬぅん!」

「おっと」


 しかし、剛は怯むことなく雪のことを掴もうと腕を伸ばす。間一髪それを躱した雪は苦笑する。


「うっそ。今の当たっても動けるの? どんだけタフなのさ」

「いや、効いた。確かに効いたぞ……しかし、霞美様によって鍛えられた俺の力は何も力だけではない。タフネス、耐久力もまた上がっているのだ。そしてそれは、飛雄も同じだ」

「っ!?」


 ゾクッと嫌な気配を感じた雪はとっさにその場から飛び退く。一瞬前までいたその場に伸びてきたのは壁にぶつかって倒れていたはずの飛雄だ。


「おい剛。余計なことを言うな。捕まえ損ねただろ」

「それはすまないな」


 不満気な飛雄に謝りつつ、剛は出ていた鼻血を吹き出す。


「まぁいいさ。こっちが有利なことに変わりはないんだからな。それよりも驚いたよ夕森雪。さっきの剛への足蹴り。しかも躊躇することなく顔面に叩き込んだ。普通の人なら忌避しそうなものだがな」


 雪は元の世界にいた時、喧嘩に巻き込まれることも多かった。だからこそ少しだけ喧嘩慣れしていたのだ。今の足蹴りもその時に身に着けたものだ。


「ま、スポーツも喧嘩も慣れだからね」

「なるほど、案外野蛮なのだな。お前も」

「いきなり襲い掛かってきた君たちに言われたくないけどね」

「ちょっとあんた達時間かけすぎよ。女一人捕まえるのにどれだけ時間かけてるのよ」


 それまで静観していたかしこが出てきて、苛立たし気に飛雄と剛のことを睨みつける。


「あんた達バカだからそうなるのよ。いいわ、私が直々に指示してあげる。さっさと終わらせて霞美様の所へ帰るわよ!」

「バカと言われるのは不本意だが、いいだろう」

「ぬぅん! 指示は任せるぞ」


 並び立つ三銃士。ふぅ、と息を吐いた雪は再び構える。

 雪の戦いはまだ終わりそうになかった。





□■□■□■□■□■□■□■□■


 一方、雪が囮となって出て行った後、洗脳された住民達が雪のことを追いかけていくのを確認した雫達は学園へと向かっていた。


「ほとんど雪さんのこと追いかけていきましたね」

「えぇそうね。あそこまで効果があるとは思わなかったわ」

「でも……大丈夫ですかね。あれだけの人に追いかけられたらさすがに逃げられないんじゃ」

「……信じるしかないわ。夕森さんのことをね」

「……はい」


 ほとんどが雪を追いかけていったとはいえ油断はできない。所々で身を隠しながら学園に向かう雫達。

 そして、そんな様子を霞美は狐狼の目を通して学園から見ていた。


「へぇ、なるほど。まさか雪を囮にするなんてねぇ。まぁそれくらいしかあの軍団から逃げる方法なんてなかっただろうけどさ」


 雫達に洗脳した住人の手から逃れられたというのに、霞美に焦った様子はまったくない。


「雪の方にはあの三人を向かわせたし……そうなると雫達を捕まえる手段がない! なんてこと、あるわけないよねぇ」


 ニヤニヤと笑う霞美は先ほどから隣に立っていた女性に目を向けて言う。


「それじゃあ、よろしくお願いするね——奏さん」



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントをしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は2月7日21時を予定しています。

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