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第132話 戦いの始まり

区切りを良くしようとするとどうしても短くなってしまう……もっと内容増やしてもいいかもしれないですね。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです!

 囮として先に隠れていた場所から出た雪。考えていた作戦通り、周囲にいたほとんどの住人が雪のことを追いかけ始めていた。その後に出て行った雫達に気付く者はいなかった。

 霞美の洗脳は非常に大規模ではあった。しかしその代わりに細かい指示はできていなかった。捕まえろと言われた者を見つけたら我先にと追いかける。そんなことしかできなかったのだ。

 ちらりと後ろを見た雪は思わず苦笑いする。道を埋め尽くさんばかりの人の数。その全てが雪を捕まえるためにきているのだ。

 捕まればただではすまないことは明白だろう。普通であれば逃げ切ることは不可能……しかし、雪は普通ではなかった。


「鬼さんこちらってな!」


 十分にひきつけたと思った雪は走るスピードをさらに上げる。

 雪はただ囮を引き受けたわけではない。雫達を逃がすためなんていう殊勝な気持ちなど全く持ち合わせていなかった。一人の方が動きやすいからである。


「さぁ、ついて来れるもんならついてきてみろよ! その鈍間な足でなぁ!」


 軽快に走り続ける雪、しかし真っすぐ学園に向かうわけにはいかない。一応とはいえ囮を引き受けたのだから、町の住人をある程度は雫達から離しておかなければならなかった。


「ん、あいつらは……」


 追いかけてくる住人たちの中でひと際足の速い者達が数人。その人達は雪と同じ学園の制服を着ていた。


「あれは……陸上部の奴らか!」


 さすがの雪といえど、現役の陸上部を相手では油断できない。長距離ならまだしも短距離だけなら追い付かれる危険すらある。


「くそったれが!」


 直線を走り続けたら追い付かれると思った雪はとっさに見えた住宅街にある裏道へと逸れる。人がだけ通れる程度の幅だ。

 陸上部の人ももちろん追いかけてくるが、その道はぐにゃぐにゃと曲がりくねっており、しかも障害物すらある。


「お前ら走るのは得意みたいだけどなぁ……この道ならオレの方が早いんだよ!」


 雪は様々な障害物を飛び、かがみ、走りながら避けていく。


「オレはパルクールも得意だからな」


 壁蹴りやジャンプを駆使して雪は裏道を走りぬける。

 陸上部の人は上手く走ることができずにドンドンと雪に引き離されていく。

 それからしばらく裏道を走り続けた雪は、完全に引き離したと確信したところでいったん走るのをやめる。


「はぁ、はぁ……学園からだいぶ離れちまったな」


 さすがの雪も走り続けでは体力が持たない。家の陰に身を隠して体力の回復に努める。


「はぁ……さすがにあの人数相手はしんどかったな。でもまぁ、ここまでくりゃ大丈夫だろ」


 周囲に気を配りながら休む雪。しかしいつでも走れるように座りはしない。


「あいつらの方はどうなったか……ま、昼ヶ谷がついてるなら大丈夫だろ。あれで結構頭は良いみたいだしな」


 ここにいない他の人のことを心配している余裕は今の雪にはない。気を抜けば雪が捕まりかねないのだから。


「こんなに苦労させられてんだ。絶対に一発はぶん殴ってやるからな。二人ともだ」


 霞美と零音に対する怒りを糧に、雪は再び学園へと向かおうとする。


「さ、追手は振り切ったことだし、一気に学園まで走るか」

「残念だけど、それは無理だわ」

「っ!?」


 突然聞こえた声に警戒をあらわに背後を振り向く雪。そこには三人の生徒が立っていた。


「誰、君達?」


 警戒もあらわに雪が尋ねると、よくぞ聞いたとばかりに生徒達はニヤリと笑う。


「我ら、霞美様三銃士!」

「霞美様にあだなす輩を成敗する者!」

「喜べ、貴様は我ら三銃士が直々に捕まえてくれるわ!」


 ババン、と擬音が聞こえそうなポーズを決める三人。綺麗にポーズを決められたからか、非常に満足そうだ。

 雪はもはやバカを見る目だ。


「それで、その三銃士が何の用?」

「言ったであろう。貴様を捕まえるとな! とう!」


 三銃士の内の一人が人間とは思えない跳躍力で雪の背後へとまわる。


「おいおい、マジかよ……」

「俺は三銃士のチェイサー。《スプリングマン》飛田飛雄だ! これで貴様の退路は絶ったぞ」

「ぬぉおおおおおおおお! 俺は《パワーオブパワー》剛力剛だ!」


 さらに、三人の中の一番の大男がブンブンと腕を振り回す。壁にかすっただけで一部が吹き飛ぶほどの力だ。


「……いつからこの世界はこんなファンタジー世界になったのさ」


 そんな力を目の当たりにして冷や汗を流す雪。


「こんのバカ男! 壊してどうすんのよ! 私達弁償できないでしょ!」

「ぬぅ、す、すまん」


 一人だけいる女生徒に怒られてバツの悪そうな顔で頭をかく剛。


「しょうがないわね。私は《ブレインハッカー》脳魅かしこ。私達のこの力は全て霞美様から与えられたもの……この力で、私達はあなたのことを捕まえるわ!」

「……ふぅ、よし上等。全員まとめて相手にするよ!」


 逃げることはできないと思った雪は、三人に対してそう宣言する。

 その言葉を皮切りに、三人は一斉に雪へと飛び掛かった。

 雪と三銃士の戦いが始まりを告げた。



かしこ「いい、あそこに夕森雪がいるからカッコよく登場するのよ」

飛雄「あぁ、俺達の初陣だからな!」

剛「ぬぉおお——むぐっ」

かしこ「あんたはそのすぐに叫ぶ癖をやめなさいこのバカ!」

剛「す、すまん」

かしこ「さぁ、行くわよ!」

飛雄、剛「「おう!」」


 以上、雪の前に現れる直前の三銃士のやりとりでした。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントをしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は2月6日21時を予定しています。


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