第121話 昼ヶ谷雫を見つけ隊7
寒くてボーっとしてたら終わってしまった一日。少しでも書いていればよかったと後悔しても遅かったのです。
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無事に雫と再会できた花音達。ようやく雫と再会できたことに感情の崩壊した花音をなんとかして落ち着かせ、お互いの状況についての情報を交換するのだった。
「……そう。それで探してくれたのね」
「花音の考えすぎかと思いましたけど、この状況を見るに相当大変だったみたいですし」
「そうね。でもあなたのおかげでこうして外に出ることができたわ。ありがとう」
「そんな、お姉さま。感謝なんていいです。私がお姉さまを助けるなんて当たり前のことなんですから!」
「ふふ、まさかあなたに助けられる日が来るなんてね」
感慨深げに花音を見る雫。仕事は優秀だがなにかと問題を起こして手を焼いていた後輩である花音。雫自身、花音が自分に対して大きな感情を抱いていることは知っているが、ここまでだとは思っていなかった。
「お姉さまのためなら火の中水の中です!」
「花音ならやりかねないのが怖い」
「さすがにないと思うけどねー」
「あなた達も、ありがとう。私が不注意だったばっかりにごめんなさいね」
「いえ、私は花音の手伝いをしただけですから」
「言葉よりもお金が——いたっ!」
「依依はちょっと黙りなさい」
余計なことを言おうとした依依の頭を弥美が叩く。
そのまま花音も混じってわちゃわちゃと騒ぎ出す三人。
なんだかんだと上手くやっている様子の中学生組を見て雫は頬を緩める。しかし、すぐにそれどころではないと気を引き締め直す。
「三人とも今はそれくらいにして。早くこの場を離れるわよ。いつ見張りが戻って来るかわからないし」
そう、花音達は偶然雫の見張りが離れている時にやってきたのだ。ドアは雫では開けられなかったため、少しの時間ならば一人にしても大丈夫だと見張り達が判断したのが幸いした形だ。
「急いでこの場を離れるわよ」
「「「はい!」」」
そうして霞美の家から離れる雫達。見張りが戻って来たのはそれから数分後。派手に壊され、もぬけの殻になった家を見て顔を真っ青にした見張りの生徒はすぐに他の生徒へと連絡をし、逃げた雫を追いかけ始めた。
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放課後、空き教室でお菓子を食べながら空を眺めていた霞美のもとに、洗脳した生徒が慌ただしく入って来る。
「なに。うるさいんだけど。大事なこと以外は全部そっちで処理しろって言ったはずだけど」
せっかくの一人の時間を邪魔された霞美は不機嫌な様子でやって来た生徒の方を見る。霞美はその生徒の名前すら知らない。知るつもりもない。使えればそれでいいのスタンスで興味の欠片もなかった。
「いえ、あのそれが……」
言いにくそうに顔を背ける生徒。
その様子を見て霞美は若干嫌な予感を覚える。
「何があったの?」
「その……会長に、昼ヶ谷雫に……逃げられました」
「…………は?」
予想の斜め上を行く言葉に、霞美は思わず目を点にする。
「どういうこと」
「それが、俺達もよくわからないんですが……見張りが言うには、少し目を離して戻ってきたらドアが壊されていて、家の中がもぬけの殻だった……と」
(あの家のドアは私の力で閉じてあったはず。中からも外からも開ける手段なんてないはずなのに……いや、そうじゃない。問題は逃げられたってことだ。どのくらい時間が経った。まだそんなに遠くまではいけてないはず……あぁもう!)
「なんで目を離した!!」
「ひっ……も、申し訳ありません」
大人でも思わず竦み上がるような怒声を放つ霞美。
それを真正面から受けた生徒は、飛びそうになる意識を必死にとどめながら謝罪の言葉を口にする。
しかし、そんな態度すら今の霞美には苛立つ要因でしかなかった。
「全部上手くいってたのに、くそっ!」
霞美の計画通りに進んでいた物事に突如として生じたイレギュラー。霞美は苛立ち、爪を噛みながら考える。
(このタイミング……もしかして昼休みの時に言ってた中学生の奴らか? でもどうやって雫の居場所を……知ってるのは私とこいつらぐらい。零音もなんとなくは知ってるだろうけど、話すわけがない。雪も今日は学園に来てない。可能性があるとしたら……)
そこで霞美は一つの可能性を思いつく。
「あの女かぁ!」
霞美の導き出した答え、それは彩音が教えたというものであった。それしか考えられなかった。
「なにが見ているだけだクソ女が!」
苛立ちのそのままに近くにあった椅子を蹴り飛ばす霞美。いつものひょうひょうとした態度などすでにかなぐり捨てていた。
あるいはこれこそが霞美の本性なのかもしれない。
事態を伝えに来た生徒は、顔を青くしてただ立ち尽くす。
それを見た霞美はその生徒の近くまでいき、さらに怒声を飛ばす。
「なに突っ立ってんだよ! 探しに行けよ早く! 他の奴らにも伝えろ。絶対に逃がすな、草の根をかき分けてでも見つけろってな!」
「は、はいぃ!」
来た時以上に焦って出て行く生徒。その背を見送った霞美は苛立ちつ感情を吐き出すように深呼吸する。
「すぅー……ふぅ……。うん、落ち着いてきた」
胸の内にくすぶる苛立ちは努めて無視して、霞美は落としていたお菓子を拾い上げる。
「はぁ、もったいないなー。でもしょうがないか」
まだ開けていない新しいお菓子を手に取り、霞美は椅子に深く座り込む。
「あと少し……あと少しなんだから。絶対誰にも邪魔なんてさせない」
胸の内にある黒い感情と共に霞美は呟いた。
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