第120話 昼ヶ谷雫を見つけ隊6
思ったより長く続いている花音達の話。話をぶつ切りにしすぎかもしれないですね。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
森に入って少し、花音達は……
「ここ、どこ?」
「これってもしかしなくてもさ」
「うん、私達……」
「「「迷った!?」」」
迷いに迷っていた。それもそのはず。もともと森に入る準備などしておらず、さらに雨は一時的に止んでいるものの、いまだ晴れ間も見えず森の中は暗く見通しが悪かった。そしてなにより、森に入ったはいいものの、花音達は雫がどこにいるのかということの見当すらついていなかった。
「どうすんのこれ」
依依が呆然と呟く。
「どうするもこうするも……お姉さまを見つけるしかないでしょ」
「いやだからー。この広い森の中のどこにいるかもわかんないのにどうやってみつけるのってことー」
「うーん、そうだなー……」
「ねぇ花音、あんたいつも謎センサー発動して会長見つけてんだから、それ使えないの?」
「なるほど、その手があったね」
「え、なにそれ」
「ちょっと待ってね。集中するから……」
スッと目を閉じて黙る花音。考えるのは雫のことのみ。他の全てを差し置いてただただ頭を、心を雫で埋め尽くす。
「ねぇ、なんなのそのセンサー。私知らないんだけどー」
「何って聞かれてもね。花音がいつも会長見つけるのに使ってる謎のセンサーとしかいいようが……理論なんか私にわかるわけないし」
「いや、そんなセンサー信用できるわけが——」
「見つけたっ!」
カッと花音が目を見開き、歩き出す。
「こっち、こっちからお姉さまの気配を感じたよ」
「そう。じゃあ行こ」
「えぇ!? ホントに信じるの? そんなわけのわからないセンサー信じるなんて、仕事の内容書いてないのに無駄に時給が高いアルバイトに行くよりも危険だよー」
「手がかりがないんだからしょうがないでしょう。っていうかなによその例え。ほら、おいてくよ」
「……あぁ、もうどうなっても知らないからねー」
先を行く花音についていく弥美。わけのわからないセンサーなど信用したくない依依だったが、ここで一人になるのも嫌だったのでしぶしぶついて行くしかないのだった。
しかし、それから数分ほど歩いたところで、突然森が開けて少し広い空間が花音達の前に広がる。そしてその空間の中心には廃屋にしか見えない家がポツンと一つだけあった。
「なにあの家。なんであんな家がこんな場所にあるんだろ」
「私に聞かれてもわからないわよ。それで花音、まだ着かないの?」
「えーと、それがね。お姉さまの気配あの家から感じるんだよね」
「「はぁ!?」」
驚いたような声を上げる弥美と依依。二人の目にはあの家がとても人が居れる場所のようには見えなかった。少なくとも、自分はあんな場所で過ごしたくはないと弥美と依依は思った。
「それホント?」
「うん。自分でも驚いてるけど」
「やっぱりそのセンサーダメなんじゃないの?」
「むっ。なら調べてみようよ。そしたらホントにお姉さまがいるかもしれないんだからさ」
あくまで花音のセンサーを信じない依依の態度に少しだけムッとした花音はズンズンと家の方へと近づいていく。
「……あれ?」
ドアを開けようとした花音はおかしなことに気付いて首を傾げる。
「どうしたの?」
「開かない」
「え?」
「だから、このドア開かないの。鍵がかかってるとか、そういう感じじゃなくて……こう、変な力がかかってるっていうか」
「何言ってるの?」
「いや、わたしにもわかんないよ!」
試しにと弥美と依依の二人が改めてドアを開けようとするが、やはりびくともしないドア。
「……なにこれ」
「どうなってんのー?」
「わかんないよー」
押しても引いてもドアが開く気配はない。何か見えない力に塞がれているかのように固く閉ざされたままだった。見た目はボロボロのドアなのに、そこだけはまるで強固な鉄の扉であるかのように三人は錯覚するほどだ。
「この中から会長の気配を感じるんでしょう?」
「うん。もうビンビンに感じるよ」
花音の頭に生えていえるアホ毛がピョコピョコと揺らめいている。
風を受けたわけでもないのに激しく動き続ける花音のアホ毛に依依は何とも言えない顔をする。
「え、何それ生きてるの?」
「何言ってるの? 生きてるわけないじゃん」
「……なんかもう花音ちゃんが同じ人間だとは思えないよ……」
放課後に入ってからのわずかな時間で色々なことが起きすぎて依依はいよいよ考えるということをやめようとしていた。
「何バカなこと言ってるのよ。二人とも呑気に話してないでこのドアを開ける方法考えないと。誰かが来るかもしれないし」
「それもそうだね……よし!」
少しの間何かを考えた花音は思い立ったように家のドアの前に立ち、拳を構える。
「? 何してるの?」
「押してもダメ。引いてもダメなら……ぶち壊す!!」
「「はっ!?」」
宣言と同時、花音は目の前の扉を壊さんと烈火の如き勢いで扉を殴る蹴る。しかし、ボロボロで吹けば飛びそうなドアだというのに壊れる気配はない。
それでも花音は諦めない。花音の直感がこの中に雫がいるということを確信していたから。
「誰だか知らないけど、私のお姉さまを捕まえようなんて許せるかぁああああああああ!!」
さらに勢いの増す花音。すると、ドアからミシリと軋むような音が鳴り始める。徐々にドアにひびが入り、どんどんと広がっていく。
そしてついに、
「どらぁああああ!!!」
花音の渾身の一撃が扉に叩きこまれた瞬間、轟音とともにドアが崩壊する。
その様を弥美と依依は驚き、呆然と見つめていた。
「……花音ちゃんてマジで人間やめてない?」
「そんなことはない……と思いたいけど」
「っていうかこれもしかしなくても器物破損なんじゃ……」
「言わないで」
努めてその現実からは目を逸らす弥美。このことが露見した時のことなど考えたくもなかった。
当の花音はと言えば、そんなことはまったく気にせずに家の中へと入って行く。
「お姉さま!」
「……いきなりドアが壊れたから何事かと思ったら……あなただったのね」
家の中には弥美達と同様、驚いた顔をした雫がいた。
その姿を見た瞬間、花音の目にジワリと涙が滲む。
「おねえ……お姉さまぁああああああ!!!」
ドアを破壊した後にどこにそんな体力が残っていたのかわからないが、弾丸のような勢いで花音は雫に抱き着く。
「うぐっ、ちょ、花音」
「お姉さまお姉さまお姉さまぁあああああああああああ!!!」
「いた、痛いんだけど花音! ちょ、離れ……話を聞きなさい!!」
しかし花音が離れることは無く、落ち着くまでしばしの間花音にされるがままになるしかない雫なのであった。
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次回投稿は1月20日21時を予定しています。