第7話 放課後デート 前編
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俺が入学してから一週間が経った。一週間ではまだまだクラスの雰囲気もぎこちないけど、グループが形成され始める頃でもある。
うちのクラスも自己紹介をきっかけに複数のグループが形成され始めている。といってもそんなに明確に線引きされるわけじゃない。なんとなくいつも一緒にいる人が決まっていくだけだ。ゲームや漫画が好きな人は好きな人たちで集まるし、アウトドアが好きな人は好きな人で集まる。そうやって少しずつグループができていくのだ。
ちなみに俺は何の因果か友澤と一緒にいることが多くなってきた。話していると意外といい奴だった。女好き過ぎるところ以外はな。
「まったくよー。お前幼なじみだからって羨ましすぎるぞ。朝道さんと毎朝一緒に登校とかさー」
「そんなこと言われても。そんなに羨ましいのか?」
「羨ましいぞ! 恨みで人が殺せるならお前はもう十回以上死んでるだろうな」
「一日一回以上のペースで殺されてんのかよ俺は」
「あはは、友澤君は朝から元気だね」
「そりゃもう! 朝道さんの姿を見れたのならば元気百倍!ってなもんですよ」
「そ、そうなんだ」
「やめろ友澤。零音が困ってるだろ」
「なんだって! 朝道さんを困らせるなんてどこのどいつだ! オレがとっちめてやる」
「お前だって言ってんだろ!」
まぁ、ノリがいい奴なんだ。友澤は。
そういえば、一週間経ってなんとなく俺のこの好感度が見える目にも慣れてきた。あの選択肢みたいなやつはあれから出てきてないな。なんだったんだろうか。
零音の方を見ると好感度は『68』となっていて、初めて見た時から変わっていない。
「どうかした?」
「いや、なんでもない」
「そうなの? てっきり今日の夜ご飯のことでも聞くのかと思ったのに」
「いやなんでだよ! 朝からそんなこと聞くわけないだろ」
「ふふ、ちなみに今日の夜ご飯はオムライスでも作ろうかなって思ってるよ。あ、また前みたいにあーんってしてあげよっか?」
「ちょっ、バカ。お前——」
零音のあーん発言にクラスがざわめく。女子達はあからさまにひそひそと話しているし、男子は男子で俺を殺さんばかりの目で見ている。
「おい……日向ぁ。どういうことだぁ! 夜ご飯はまだいい。許せんがまだいい! しかし、しかしだ。あーんだと? あの伝説のあーんを朝道さんにされたことがあるってのかお前は!」
「は、いや、落ち着けって! あれは流れというかそういうので別に」
「うるせぇぇえ!」
まずい。なんとかしてこいつを止めないと。っていうか、なんで俺は朝からこんな苦労しないといけないのか。とにかく今は方法を——
「おっはよー!」
ざわめき立つ教室の雰囲気を吹き飛ばすように一人の少女が教室に入って来る。
「夕森さん!」
「あ、ハルっちにレイちゃんにトモっちじゃん。おはよう!」
「おはよう、雪ちゃん」
「どったのトモッち。腕なんか振り上げて」
「いやこれは、あー……別になんでもない」
助かった。夕森さんのおかげで友澤の勢いが削がれたみたいだ。
今だけは夕森さんが救世主に見える。
「おはよう夕森さん。助かったよ」
「お、何か知らないけどアタシ感謝されてる! もっと感謝していいよ!」
「結構です」
「冷たいっ!」
すぐに調子に乗るのが夕森さんの悪いところかもしれない。まぁ、明るくていい人だけどさ。
夕森さんはさっきのグループに当てはめると、どこにも所属していない。というより、どこにでもいるというのが正しいかもしれない。
クラスの女子達と服の話で盛り上がっていたかと思えば気付けば男子のオタク集団の所でアニメの話をしていたりする。どこにでもいて、どこにもいない。それが夕森さんかもしれない。
実は夕森さんはクラスの中で一番好感度が低かったりする。夕森さんの好感度は『22』で。前回部活見学の時に1上がってからそのままだ。他のクラスメイトを見ていると『26』とか『30』とかの人が多い。
俺気付かないうちに夕森さんになんかしたのかな? いやでも、初めて見た時からこの数値だしなー。あんまり気にしてもしょうがないか。すぐにどうこうなる話でもない。
まぁ、せっかくクラスメイトになったんだし。せめて嫌われないように努力しよう。
「そういえば今日はいつもより遅かったね。私達が登校してくる頃にはいるのに」
「いやー、昨日の夜遅くまで起きてたら寝坊しちゃって。焦った焦った。パパは仕事に行ってたし。ママはのほほんとしてるから起こしに来てくれないんだよねー」
「あんまり夜更かししちゃダメだよ雪ちゃん」
「えへへ、ごめんなさーい」
「ハル君も、だからね」
「うっ、わかってるよ」
しっかりと釘を刺されてしまった。仕方ないと言えば仕方ないけど。春休みの感覚が抜けずに夜更かしして結局朝に零音が起こしに来るまで寝てしまう。早く慣れないとな。
「日向はいいよなー、朝道さんに起こしてもらえるんだから。きっと優しいんだろうなー。オレの母さんなんてあんまりに起きなかったら水かけてくんだぜ」
「それはキツイな」
流石に朝から水を掛けられたくはない。だから零音さん、それいいねみたいな顔するのやめてください。
「……するなよ?」
「ふふふ」
「やる気か、お前やる気だな!」
「冗談だよ。そんな起こし方するわけないじゃない」
「だ、だよな。さすがに水は……」
「あんまりにも起きなかったら考えるけど」
「今度からはすぐ起きます!」
「アハハハハ! 二人ともほんとに面白いね! アタシもレイちゃんに起こしてもらいたいかも」
「さすがに朝に雪ちゃんの家には行けないよ」
「そうだよねー。あーあ、残念。アタシももっと家が近かったらよかったんだけど」
「夕森さんって電車通学だっけ?」
「そうだよ。ここからちょっと離れた住宅街に住んでるの。レイちゃんまた今度遊びに来てよ」
「ハイハイ! オレも行きたい行きたい!」
「うーーん、ゴメンね! 男の子連れてくるとパパがうるさいから」
「ガーーン!! まぁそうだよな、しょうがないか。日向、俺達は男同士で「あ、でもハルっちはレイちゃんと一緒なら大丈夫かも」てめぇ日向やっぱり表に出やがれ!」
「ちょっ、夕森さん! 友澤の火に油を注がないでくれ!」
せっかくさっきのは忘れられそうだと思ったのに、まさか救世主だと思った。夕森さんから新たな燃料が注がれるとは。
燃料を注いだ当の本人はケラケラと笑っている。
「あ、そだ。思い出した!」
「どうしたの?」
笑っていた夕森さんが手をポンと叩く。そして、
「ねぇ、ハルっち。今日の放課後にアタシとデートしない?」
「…………は?」
今日一番になるであろう爆弾が落とされた。
クラスのグループって気づいたらできあがってますよね。ちなみに私はどこにも属していませんでした。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。また次回もよろしくお願いします。
次回は雪ちゃんのターンです。
次回投稿は8月14日9時を予定しています。