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第118話 昼ヶ谷雫を見つけ隊4

最近タイムスケジュールを作り始めました。でも全然守れる気がしないのです。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

「それで、なんで私も連れて来られたのさー」


 放課後になって、花音と弥美の二人は依依を連れて校舎の中を歩いていた。


「ほら依依、のんびり歩いてないで急いで。先輩達に帰られたら手掛かりなくなっちゃうんだから」

「そうだよ依依ちゃん。お姉さまのためにも早くしないと」

「いやだからー。それ君達だけでよくない?」

「ダメ。私達もう日向先輩達に顔バレしてるし。この作戦の要は依依なんだから」

「その作戦……ホントにやるの?」


 すごく嫌そうな顔をする依依。弥美と花音が考えた作戦を聞いた依依がまず第一に抱いた感想は「こいつらバカだ」というものだった。


「お金にならないことはしたくないんだけどなぁ。それに私このあとバイトあるんだけど」

「「バイト?」」

「あっ……」


 言ってからしまったという依依。


「うち……バイト禁止だよね」

「というか中学生の年齢でできるバイトってあるの?」

「いや、それは、その……」


 二人からジトーっとした目で見られてダラダラと冷や汗を流す依依。


「普通にバレたら停学ものだよね」

「私真面目だからついうっかり口が滑るかも」

「あー、私も。もし今の悩み事解決できるなら忘れられそうな気がするんだけどなー」

「くっ」


 チラチラと依依の方を見ながら話す花音と弥美。

 二人の白々しい三文芝居を見せられて若干イラっとする依依だが、口を滑らせ弱みを見せてしまったのは自分なだけに何も言い返せない。


「わ、わかったよ! やればいいんでしょ」

「え、ホントに! やってくれるの?」

「白々しい……」

「何か言った?」

「別に」

「そう、それじゃあよろしくね」


 そういって笑う花音の笑顔が、依依には悪魔の笑みに見えた。





□■□■□■□■□■□■□■□■


「よし、それじゃハル君帰ろっか」

「あぁそうだな」

「今日は特売があるから、帰りに買い物付き合ってくれる?」

「それはもちろんいいけど。特売までちゃんとおさえてるなんて零音はすごいな」

「えぇそんなことないよ」

「謙遜するなって。家事は完璧だし、家計のこともちゃんと考えられる。零音と結婚できる奴は幸せだな」

「もう、ハル君たら。恥ずかしいよ」


 顔を赤くしながらも嬉しそうな零音。

 零音の好感度が上がったのを確認した晴彦は満足する。

 完全に洗脳が完了している晴彦は、ただただ零音の好感度が上がるようにと行動する。

 そして好感度の数値が目標値に達した時に、晴彦は零音に告白する。そういう風に霞美に設定されている。

 はたから見れば仲睦まじい恋人同士のように見える零音と晴彦。

 そんな二人の世界を切り裂くように、一人の女生徒が零音達の前に現れる。言うまでもなく依依である。

 近くには花音達が隠れて早くやれという目線を送ってきている。


「くっそ。やるしかないか……よし。恥を捨てろ私」


 誰にも聞こえないくらいの小言で何かを呟いた依依は、零音達の前に立ち——


「うぐぅうううううう!! おなか、おなかがぁああああ!!」


 突如お腹を押さえてその場にうずくまった。

 これこそ、花音と弥美の考えた作戦。『お腹痛くなったふりしてトイレに連れて行ってもらい、朝道先輩と日向先輩を引き離そう作戦』である。そうして一人になった晴彦に話を聞くというのがこの作戦の目的であった。

 この作戦を考えた花音も、いけると思った弥美も、どちらも頭がおかしいと依依は思った。しかし悲しいかな。これが中等部生徒会のナンバー1とナンバー2なのである。依依はそれを考えて悲しくなった。


(ツラい……人として大事な何かを捨ててしまった気がする。お金絡むならまだしも、一銭にもならない真似をするなんて……もう絶対しない。二度としない)


 依依は心に固く誓った。


「えぇと……大丈夫?」

「どうかしたのか?」


 依依の迫真の演技はどうやら効果があったらしく、零音と晴彦が心配そうな顔をして近づく。


「あ、あの、その。お腹が痛くてー。あそこのトイレに連れて行っていただけたらなーと」


 依依が指さすのは廊下の端にあるトイレ。しかし、それを聞いた零音は怪訝な顔をする。


「え、でもトイレならここにもあるよ?」

「えっ!?」


 零音が指さすのは廊下の端のトイレではなく、零音達のすぐそばにあったトイレだった。依依は緊張のあまりそのトイレの存在に気付いていなかったのだ。


(まずい。このトイレは近すぎる。それじゃ意味がないしー)


 必死に頭を働かせる依依。この状況では花音達の助けも期待できない。


「それにそんなにお腹痛いならトイレじゃなくて保健室に行ったほうがいいんじゃないの?」

「いやあの保健室に行くほどじゃなくて……それとそこのトイレは……そう! 嫌な感じがするんですー」

「嫌な感じ?」

「私昔から見える体質でー。そこのトイレからはもう気配がビンビンでー。できれば入りたくないなーって感じのトイレですー」

「えぇそうなの!?」

「マジか!」


 もちろん嘘である。

 しかし零音と晴彦は信じたのかギョッとした表情でトイレを見る。


「あぁもうダメです限界です。お願いしますー!」


 これ以上話してボロが出ててはいけないと依依は二人のことを急かす。


「連れて行ってやるしかないんじゃないか?」

「そうなんだけど……」


(あと一押しでいけそう)


 いけそうな雰囲気を感じた依依は最後の手段を使おうとする。がしかし、その瞬間予期せぬ人物が現れる。


「どうしたさっきから。騒がしいぞ」

「風城先生ちょうどよかったです。この子急に体調が悪くなったみたいで」

「なんだと?」


 零音の言葉を聞いて、保険医である彩音が依依に近づく。


「トイレに行きたいみたいなんです」

「トイレ? ふむ、しょうがないな。私がつれていこう。そのあと保健室だな」

「えっ!?」


 考えもしていなかった展開に戸惑う依依。


「さ、行くぞ」

「え、あのちょっと」

「それじゃあ二人も早く帰るようにな」


 言っている間に彩音に連れられて行く依依。問答無用で彩音は依依のことを連れていく。

 連れていかれる依依の姿を花音と弥美はただ見送るしかなかった。

 こうして、花音と弥美が考え依依が自身のプライドを捨てて決行した作戦は失敗に終わったのだった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントをしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は1月17日21時を予定しています。

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