第116話 昼ヶ谷雫を見つけ隊2
投稿する三十分前に書き終わるというギリギリ感。もっと時間に余裕を持って書くようにしなければ……。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「はぁ? 誰かが雫の事を探してる? なんで?」
空き教室でのんびりゴロゴロしていた霞美は、洗脳して使いパシリにしていた生徒からそんな報告を受けてめんどくさそうな顔をする。
「それはわかりません」
「えー、誰よそんなことするの」
「探していたのは中等部三年生の桜木花音と病ヶ原弥美の二名です」
「……あー、そういえばいたっけ。いたなぁ。すっかり忘れてた」
花音と弥美のことについては、雫の身の回りについて調べた時に出てきてはいた。しかし、晴彦との関わりが薄かったということもあって、すっかり忘れていたのだ。
「確か……桜木って子が異常に雫のこと好きだったっけ。急に連絡が取れなくなったから探してるとかかなぁ。たった一日連絡が無いだけで探し始めるとか、零音でもそんなことは……しそうだけど、普通はしないよねぇ」
「そうですね」
霞美は洗脳した生徒に聞くが、もとより霞美の言うことに異論を述べるなんていうことはしない。聞く意味などないのだ。
「どういたしますか?」
「そうだねぇ。ほっといていいよ。どうせ見つけられないんだしさ。あ、でももし森に近づくようなことがあったら捕まえといて」
「わかりました」
それだけ言うと生徒はスッと音を立てずに去っていく。
「はぁ、なんかあったら報告するようにって言ってたけど。ホントになんでもかんでも報告してくるなぁ。さすがにめんどいかも。もっと報告してくる内容絞っておこっかな」
ポリポリとお菓子を食べながら呟く霞美。実際、花音達のことだけでなく洗脳した生徒達が何度もやってきては霞美に判断を仰いでくるため、辟易していたのだ。
「きーめた。ある程度は勝手に判断するように命令しとこっと。もう大した事件なんて起きないだろうしね」
そう決めた霞美は、空き教室で一人横になり昼寝を始めるのだった。
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「え、双葉先輩も休んでるんですか?」
「うん。まぁあの子は前から急に休んだりすることあったから、今回もそうなんじゃないかなぁ」
「そういえば……」
基本的に毎日集まる生徒会の面々なのだが、双葉に関してはいたりいなかったりすることが多くあった。
「何か用でもあったの?」
「いえその、お姉さま……生徒会長のことを聞きたくて」
「あぁ、そういえば今日休んでるんだっけ。いつも休まない会長が休んでるもんだから私もびっくりしたよ。君達……あれか、中等部の生徒会の子だ。前に見たことある気がする」
「あ、はい。中等部生徒会長の桜木花音です」
「副会長の病ヶ原弥美です」
「そっか。君たちが次代の生徒会メンバーってわけだ。会長に仕事で聞きたいことでもある感じ?」
「えーと、まぁそんな感じです」
「うーん、でも私じゃ力になれないしなー……あ、そうだ」
思い出した、と手をポンと打つ女生徒。
「参考になるかわかんないけどさ。昨日会長と会ってる人なら知ってるよ」
「え、誰ですか?」
「名前まではわかんないんだけどさ、昨日生徒会室に用事があって行ったら白い髪の女の子とか他の生徒と一緒に歩いてるの見てさ」
部活のことで話のあった女生徒が生徒会室近くで見た光景。雫と白い髪の少女——霞美を中心にして歩いている姿だった。
その白髪の少女があまりにも目立っていたので、女生徒の記憶に焼き付いていたのだ。
「他にいた人が誰かは覚えてないけどさ。その白い髪の女の子だけ印象的だったから覚えてるよ。まぁ、何してたかまでは知らないけど。名前まではわかんないけど、服の色的に一年生だったかな」
「白髪の一年生……わかりました。ありがとうございます」
「ごめんね。あんまり役に立てなくて」
「いえ、とても助かりました」
教えてくれた女生徒にお礼を言って花音達はその場を離れる。
「で、どうするの。一年生の教室にも行く?」
「まだあと少しだけ余裕はあるよね。一応行くだけ行ってみよっかな。白い髪の人なんて知らないけど……それだけ目立ってるならすぐに見つかるかもしれないし」
「そうね」
しかし、そう言って向かったのはいいが一年生の知り合いなどいないと言っても過言ではない二人。クラスも知っていて、ある程度話せる人物と言われて思い浮かぶのは一人だけだった。
「ホントに行くの?」
「行くのって……行くっていったのは花音でしょ」
「そうだけどぉ……うぅ」
「ほら行くよ。日向先輩のところ」
「わかったから少しだけ心の準備を」
「ダメ」
先ほどの恨みがある弥美は遠慮なく花音を引っ張って晴彦のいる教室まで連れていく。
そして晴彦のクラスまで着いた時、二人は奇妙な雰囲気を感じていた。
「なんか……静かじゃない?」
「確かに。移動教室とかじゃないよね」
「たぶん違うと思うけど。とりあえず開けよっか」
おそるおそる教室を開ける二人。そして二人は教室の中を見てゾッとした。
教室の中は静かだった。たった二人を除いて、誰も何も話すことなく席に座ったまま動かない。まるで人形が並べられているかのような光景に二人は気味悪さを感じてていた。
その教室においての例外、晴彦と零音はそんな周囲の光景を全く気にすることなくお昼ご飯を食べていた。
「おいしい、ハル君」
「あぁ、零音の作るご飯だったらなんでもうまいさ」
「ふふ、ありがと。この玉子焼き自信作なんだー。いつもの甘い玉子焼きじゃないんだけど、どうかな」
「すげぇ好き」
「じゃあこっちの——」
教室のドアを開けた二人の存在に気付いてるはずなのに、見向きもせずに二人の世界に入り続ける二人。
「あ、あの!」
花音が意を決して声を掛けると、零音が二人の方を見る。
ここまで二人の事を無視しておきながら、まるで今気づいたと言わんばかりの表情で零音が花音達に近づく。
「ごめんね気付かなくて。何か用?」
「いえ、その。日向先輩に聞きたいことがあって」
「ハル君に?」
「少しだけいいですか?」
「ダメ」
「え?」
「ハル君への用事なら私が代わりに聞くから。何の用かな」
「だ、ダメってなんでですか」
別に聞けるのであれば零音でも晴彦でも構わない。むしろ晴彦じゃない方がいい花音だったが、零音の言い方に少しだけカチンときてしまいその理由を零音に尋ねる。
「だってハル君には私以外の人と話して欲しくないから」
「はい?」
「理由なんてそれだけだよ」
「いや、意味がわからないんですけど」
ここにきて花音達は零音が若干関わってはいけないタイプの人かもしれないと思い始めていた。しかし、ここまで来てしまった以上、聞くしかない。
「他の理由なんてあなた達に話す必要はないでしょう」
「っ、あなたさっきから——」
まるで花音達には興味が無いと言わんばかりの態度。むしろ邪魔だから早く帰れと言っているように花音は感じた。
カッとなって言い返そうとした花音のことを弥美が手で止める。
「あの、私達人を探してるんです」
「人探し?」
「えぇ。そういえば先輩は会長と校外学習同じ班でしたよね。連絡取れないんですけど何か知りませんか?」
「……知らないかな。探してる人って昼ヶ谷先輩のことなの?」
「あともう一人、白い髪の女の子なんですけど。何か知りませんか」
「知らないよ。ごめんね力になれなくて」
「いえ、知らないならしょうがないです」
「用がそれだけならもういいかな。お昼休み終わっちゃうし」
「はい、お食事中に失礼しました。ほら花音、行くよ」
「え、ちょっと弥美ちゃん?」
弥美に半ば無理やり手をひかれるような形で教室から離れる花音。
零音はそんな二人のことを見ていたが、すぐに興味を失い教室の中へと戻るのだった。
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次回投稿は1月14日21時を予定しています。