第105話 彼女は夢を見る3
もうすぐクリスマスですねー。ケーキ食べたいです。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
少年が転校生と出会ってから月日が過ぎて、彼らは中学生二年生になっていた。家が近所だったということもあって、ずっと一緒にいた彼らは同じ部活に入り、共に日々を過ごしていた。
「今度の大会楽しみだよなー」
「それは×××が強いからでしょ」
二人はテニス部に所属していて、運動が得意な転校生は順調に強くなり、運動がそれほど得意ではなく、転校生が入るからという理由だけで入った少年は練習について行くのが精いっぱいだった。
「お前だってもっと練習したら上手くなるって。付き合うからまたテニスコート借りにいこうぜ」
「うん、そうだね」
少年はテニスはできなかったが、部活自体は嫌いなわけではなかった。
転校生がいたということもあるし、部活内で友達ができたということもあった。
しかし少年には一つだけ心配事があった。
「あ、×××君じゃん。なになに、今から部活?」
部活に向かうために廊下を歩いていると、向かいから歩いてきた女生徒が転校生に気付いて声を掛けてくる。
「おう、そうだぜ」
「いいなー。私も女テニ入ろうかなー。そしたら×××君と一緒に練習できるんでしょ?」
「俺らと女テニは練習場所別だって」
「えーそうなの? じゃあいいや」
「なんだよそれ。じゃあ、俺ら行くな」
「うん、バイバーイ」
手を振って離れていく女生徒。その様子を少年はただ見ていた。
そしてこれこそが少年の心配事であった。
小学生の頃から少年だけでなく、多くの友達がいた転校生。彼は成長するにつれてさらにその社交性を伸ばしていた。そしてそれだけではなく、転校生自身に自覚はなかったが、彼は相当なイケメンへと成長していた。
中学生になり、本格的に色恋沙汰に興味を持ち始めた女生徒の中には、転校生のことを好きになっている人も少なくはなかった。
少年は、転校生がモテることが羨ましいという思いが全くないわけではなかった。少年自身は女顔で身長も高くなかったため、ともすれば女生徒に間違えられることすらあったほどだ。
しかし、モテる羨ましさ以上に転校生のことを奪われる恐怖があった。
今はまだいい。転校生自身が部活に夢中で、色恋沙汰に興味をもっていなかったから。しかし、それもいつまで続くかわからない。
いつ誰が転校生に告白するともわからないのだ。実際、少年の所に相談しに来る女生徒もいるほどだ。
もし転校生が誰かと付き合うと言い出した時、それを心から祝福できるのか……それが少年にはわからなかった。
「あ、お兄ちゃん! ○○さん!」
「△△。どうしたんだ?」
コートに着く直前、スケッチブックを持った女生徒が近づいてくる。その少女のことは少年も知っていた。転校生の一つ下の妹である。
「姿が見えたから。今から部活?」
「あぁ、お前もか?」
「うん。今日は外で写生大会するんだって」
「それでスケッチブックもって外に出てるのか」
「そうだよ。それにしてもさ、お兄ちゃんと○○さんってホントに仲良いよね。休みの日も一緒に遊んだりしてるのに、部活も一緒なんだもん。あ、もしかして○○さん、お兄ちゃんに無理やり付き合わされたりしてます? だったら断ってもいいんですよ。このポンコツ兄の言うことなんて聞かなくていいんですから」
「ううん。そんなことないよ。オレも×××と一緒にいるのは楽しいから」
「そうですか? だったらいいんですけど。良かったねお兄ちゃん。○○さんがいい人で」
「あぁ。俺達親友だしな」
「あー、ズルい! それなら私だって○○さんの親友になりたいもん!」
「お前はダメー。な、○○」
「オレは別にいいけどね」
転校生と同じ時期に出会い、孤独だった少年の心を癒してくれたもう一人の存在。彼女のことも少年は気に入っていた。
「な!?」
「やった! これで私も○○さんと親友~。お兄ちゃんに負けてないもんね」
「なんだとこの野郎! 騙されるな○○! こいつはお前の前では猫被ってんだからな!」
「そんなことないわよ!」
やいのやいのと言い合いをする兄妹を尻目に、少年の心は喜びに満ちていた。
転校生が何気なくいった『親友』という言葉。それが少年の中にあった心配事を吹き飛ばしてくれたのだ。
(親友……親友だと思っていいんだ)
自分と一緒いてくれる兄妹の存在に、少年の心はかつてないほどに満たされていた。
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「…………朝……か」
目覚めた彼女はゆっくりと体を起こす。
「なんで最近、あの頃の夢ばっかり見るんだろ」
幸せだった頃の夢。彼女にとって元の世界で一番楽しかった中学生の頃の記憶。
「今の私をみたら、あの人達はなんて言うのかな」
呟いた彼女は、孤独を感じていた。
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次回投稿は12月24日21時を予定しています。