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第104話 生徒会室での作戦会議

寝落ちして気付いたら朝。パソコンも部屋の電気もつけっぱなしだった時のやってしまった感は半端ないのです。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 昼休み、相変わらずイチャついている晴彦達を尻目に居心地の悪い教室を出る雪。

 零音も雪が教室を出たことには気づいていたが、もうできることなどなにもないと放置する。


(どうせ昼ヶ谷先輩の所に行くんだろうけど、それは無意味だよ。もう私の勝ちは決まってるんだから)


 雪の行動を無駄な足掻きと決めつけて、零音は晴彦と昼ご飯を食べる。


「どうかしたのか?」

「ううん。なんでもないよ。食べよっか」

「あぁ、もう腹減ってしょうがなかったんだよ」

「ふふ、それじゃあーんってしてあげよっか?」

「いやいいって! 恥ずかしいから」

「えー。恥ずかしがらなくてもいいのに」


(大丈夫。このままでいい。このままいけば大丈夫だから)


 優位であるのは自分だということを理解していても消えない心の不安と焦燥感。雪に見せているほど零音の心に余裕があるわけではなかった。


(待っててね晴彦。もう少しだから)





□■□■□■□■□■□■□■□■


「それで、どうだった?」


 雪は零音の考えた通り、雫のいる生徒会室へとやって来ていた。

 雫が人払いしたということもあって、生徒会室には雪と雫の姿しかなかった。


「君の言う通りでしたよ」


 朝からクラスメイトの様子がおかしいと思っていた雪はそのことについて雫に連絡をしていた。そして、昼休みまでの時間で雫が調べれるだけ調べたのだ。


「君のクラスメイトがおかしくなっているというのは事実です。そしてその現象は、君のクラスでだけ起きている」

「他のクラスはいつも通りなのか?」

「調べられた範囲では、ですが。少なくとも、日向晴彦と朝道零音がイチャイチャしているのが普通だという認識を持っている人はいませんでした」

「確かに、他のクラスにいたオレの友達はいつも通りだった」


 授業の合間に雪は鈴に会いに行った。鈴の様子を確認するためだ。そして鈴はいつも通りの雪の知る鈴だった。晴彦と零音のことを聞いても、大っぴらにイチャイチャしている姿など見たことがないと言っていた。


「ですが、おかしいということがわかっているだけで、その原因も、解決方法もさっぱりです」

「お前でもわかんないのか?」

「調べるにも時間が無さすぎましたからね。それに、一人に対する催眠ならまだしも、話のような集団催眠を時間をかけず、一日で行う方法をボクは知りません」

「やっぱそうだよなぁ」

「むしろなぜ君だけ大丈夫なのかわからないですね」

「あ? どういうことだ?」

「だってそうでしょう。一番の朝道さんが晴彦と結ばれるという点において最大の障害はボクとあなたです。催眠なんて芸当ができるなら、まずボク達にかければいい」

「あ、そっか」


 雫の言葉に雪もそういうことかと納得する。言われてみればむしろなぜそうしないのかということがわからなかった。


「考えられるとするなら、ボク達にはかけられない理由があるか、もしくはかけようとしてかけられなかったか……だね」

「なるほどな……あ、いや、そういやさ」

「なんだい?」

「朝道の奴と話してた時、一瞬だけ変な感覚になったんだ」

「変な感覚?」

「あぁ。まるで朝道と晴彦がイチャついてるのが当たり前っていうか……そんな感覚だ」

「なるほど……やはり催眠なのかな」

「それで、どうすんだ?」

「どうするとは?」

「だから、晴彦達のことだよ」

「さぁ?」

「は?」

「正直、さっぱりだよ」

「どういうことだよ」

「これが催眠だとして、その方法もわからない。対策の仕方もわからない……今は大丈夫だとしていつまで大丈夫かわからない……手がかりが無さすぎるからね」

「じゃあ諦めろって言うのかよ!!」


 あっさりと言い放つ雫に、怒気と共に立ち上がり叫ぶ雪。

 対策が無い、手掛かりがない。だからと言って諦めるなどできるはずもなかった。


「別に諦めろと言ってるわけじゃないよ。ただ今できることが無さすぎると言ってるんだ」


 雪の怒りの感情を真正面から受けても雫はあくまで冷静だった。しかし、その言葉の端には隠しようもない苛立ちが見えている。


「はっきり言って晴彦を押さえられてしまったのは最悪だった。そしてそれを許してしまったのはボクと君だ」

「…………」

「君は連絡してきた時に言っていたね。昨日から朝道さんの様子がおかしかったと」

「……あぁ」

「なぜその時に連絡してこなかったんだい? 昨日まではキミのクラスメイトも普通だったんだろう。もし早めにボクに連絡してくれれば……動いていれば打てる手もあったかもしれないのに」

「それは……」


 そのことを昨日の段階で全て予測しろというのは無茶な話ではあった。しかし、何もしなかったということも事実なのだ。


「……悪い」

「……いや、ボクも言い過ぎた」


 お互いに息を吐き、心を落ち着かせる。


「とにかく、もう一度状況を確認しよう」

「あぁ」

「朝道さんの様子がおかしくなったとわかったのが昨日の事。そして、晴彦やキミのクラスメイト達が変わったのが今日のこと。催眠術のようなものなのか、はたまた別の何かなのか……それはわからない。打つ手もない。まさしく絶望的だね」

「どうすんだ?」

「動こうにも情報がなさすぎる。まず必要なのはそれだよ」

「情報か……そういえば」


 そこでふと雪は昨日零音と話していた時に言っていたことを思い出す。


「昨日、あいつが彼女に言われたとかどうとか言ってたな」

「彼女?」

「それが誰だかはわかんねーけどな」


 それを聞いた雫が少しだけ考え込む。


「どうかしたのか?」

「……白髪の少女」

「?」

「最近……特に、ここ一週間、目撃情報が増えてるんだよ」

「それって晴彦の言ってた?」

「あぁ。以前聞いてからずっと探してはいたんだ。情報が少なすぎて雲を掴むようなものだったけど……最近になって一気に目撃情報が増えたんだ。お菓子をあげたとか、そんな眉唾な話まであったけどね」

「でもそれが何の関係があんだよ」

「まだそれはわからないけど……狐と関係のあるかもしれないその白髪の少女と、朝道さん。二人がもしなんらかの形で関わっていたとしたなら、この状況もその少女が引き起こしたことかもしれない」

「は? じゃあ朝道の奴が原因じゃねぇってことか?」

「そうとは言い切れないけれど……その可能性もあるっていうことだよ」


 雫にそう言われた時、雪はなぜか日曜日に一瞬だけ目撃した白髪の少女のことを思い出していた。


(あれもしかして……いや、まさかな)


「とにかく情報を集めよう。後はできるのはそれからだ。また何かあったらボクに連絡してくれ」

「あぁ。わかった。お前に頼るのは癪だけどな」

「そんなことを言ってられる状況でもないよ。朝道さんが今週中に終わらせると言ったんなら、もう余裕はないんだろうしね」

「まぁしょうがねぇか」

「それと、気を付けた方がいい」

「気を付ける?」

「おかしくなるのが、君のクラスメイトだけだとは限らないからね。もしかしたらすでに……ということも考えられるからね」

「わかった」


 そこまで話して、一度目の予鈴が鳴る。


「ボクも今日の内にできるだけの情報を集めておく。それじゃあまた明日」

「あぁ」


 そこで雪は生徒会室を出て教室へと戻るのだった。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントをしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は12月23日18時を予定しています。

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