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閑話 入学式 雪視点

入学式の時の雪視点です。

雪は表と裏のギャップが一番すごいかもしれませんね。

その辺りを今後はもっと上手く表現できるようになりたいです。

 オレはこの世界に夕森雪としての生を受けた。別に望んだことじゃねぇ。神を名乗る奴の享楽に巻き込まれただけだ。

 生まれた当初はなんもわからなくて戸惑ったけど、自分につけられた名前と育っていく自分の姿見てこの世界が本当に『アメノシルベ』の世界なんだって理解した。

 そっからは早かった。この世界がホントに『アメノシルベ』の世界だってなら、あの神の野郎が言ってた元の世界に戻るために必要なことをするだけだ。そして始めたのは夕森雪になることだ。夕森雪については詳しかったから、演技するのは簡単だった。慣れるまでは大変だったけどな。

 そんなこんなで成長してったオレは無事に高校に入学した。









「雪ちゃーん! 一緒に写真撮ろ、写真!」

「オッケーいいよ! どこで撮る?」


 こいつとは中学の時からの知り合いだが、やたらと写真を撮りたがる奴だ。いや、まぁこいつだけじゃなく女子全般に言えることかもしんねーけどさ。

 なんて考えてる間にもう十枚以上撮ってやがる。なんて早業だ。


「高校は雪ちゃんと同じクラスになれるかなー。なれたらいーね」

「そうだねー。アタシも鈴ちゃんと同じクラスになりたい!」


 ゲームの時にこいつはいなかったから同じクラスになることはねーだろうけどな。いや、もしかしたらいたのか? ゲームの時はクラス全員出てたわけじゃねーし。わかんないな。


「雪ちゃんは部活どうするか決めた?」

「うーん、アタシは入らないかなー」

「えぇ! もったいないよ。せっかく運動神経いいのに」

「あんまりやりたい部活もないし」


 これは元の世界と同じ。オレは元の世界でも運動神経が良かった。色んな部活の助っ人したりもしたし、勧誘もされた。でもどうやらオレは一つのことを続けるのには向かないらしい。まぁ言っちまえば飽き性だ。そしてこの性格はこの世界でもかわってねぇ。だから部活には入らない。一番の理由はゲームの夕森雪が部活してなかったからだけどな。


「鈴ちゃんは?」

「わたしは明日からの見学で決める感じかなー。でもどっかには入りたいかも」


 鈴と二人で入学式の会場に向かおうとしたその直後、にわかに周囲がざわめきだす。



「——そう、それでその時のお母さんがすっごく怖かったの」

「莉子さん怒ると怖いもんな」


 歩いてきた二人組に視線が集まる。正確には、女子の方に視線が集まる。


「うわー、あの子すっごい可愛いね。隣の人彼氏かな」

「…………」


 あれが朝道零音か。それじゃあ隣のが主人公……ってか、日向晴彦か。しかし、ゲームのまんまだな。オレが言えたことじゃねぇけどよ。


「雪ちゃん? どうかした?」

「あ、なんでもないよ。アタシもあの子可愛いなーって思ってただけ」

「ね! ほんとに可愛いよね。あ、でもでも雪ちゃんも全然負けてないよ!」

「えー、ホントにそう思ってる?」

「思ってる思ってる! 神様に誓って!」


 神様なんてろくなもんじゃないみたいだけどな。

 しかし、あの朝道零音はどうなんだろうな……オレと同じかそうでないのか。今見た感じだと全然わかんねぇな。


「雪ちゃん、もうそろそろ時間だよ! 早く行かないと」

「え、マジで? ホントだ! 行こ、鈴ちゃん」


 さてさて、この後の出会いイベントはどうなるか……まぁ、なるようになるだろ。






入学式が終わった後、オレは校舎へやってきていた。この後の出会いイベントのためだ。

入学式でテンション上がった夕森雪が階段から飛び降りて日向晴彦にぶつかる。そんなイベントなわけだが……意味がわからねぇ。なんでそんな勢いで階段から飛ぶんだよ、とか言いたいことはいろいろあるが、まぁやるしかねぇんだ。腹くくるか。

 向こうから目的の二人が歩いて来るのが見える。


「今だ!」


 意を決して階段から飛ぶ。


「とーう! ってあぁ、そこあぶな、どいてー!」

「うぶっ!」

「むぎゃっ!」

「ハル君っ!」


 やべぇ、勢いつけ過ぎた。衝撃で意識飛ぶとこだった。


「あ、ごめん! 大丈夫?」

「…………」

「……おーい、起きて……る? 起きて……なさそうだな」


 視線を晴彦から外し、朝道零音を見る。そして確信する。こいつはオレと同じ転生させられた奴だと。

 そしてその目には本人も無自覚な敵意がこもっている。

 

「……はじめまして、でいいのか。朝道零音だよな」


夕森雪としての仮面を外してオレは話す。こんなとこ、他の誰かに見られたら終わりだな。いや、そもそもこいつが違かったらその時点で詰みだ。


「……えぇ、夕森雪さん」


 これがオレと日向晴彦、そして朝道零音との出会いだった。


 







「どうした雪、今日は随分と機嫌良さそうじゃないか」

「ホント、何かいいことでもあったの?」


 学校でのイベントが終わった後、オレは今世での両親と一緒にいた。親父がどうしても一緒に写真を撮りたいみたいだ。

 

「え、パパもママもいきなりどうしたの?」


 最初は抵抗のあったパパママ呼びも今では慣れた。人間の慣れってこえーよな。


「今日はいつにも増して楽しそうな顔をしているからさ」

「え、そう?」


 楽しい……か。確かにそうだ。オレは今たしかに楽しいと思ってる。明日から、これからどうなっていくかわからない現状にワクワクしてる。元の世界に戻るってのが最終的な目的だ。でもその過程も楽しまないと損だろう。


「そうだね。確かに、楽しいのかもしんない」


 せっかくLITI交換してんだ。一言ぐらい朝道に言ってみるか。


「負けねぇぞ」


 これでいいだろ。まさかLITI交換して最初の連絡がこれになるとはな。あいつもびっくりするだろうな。

 すると送ってからすぐに返信が来た。


「……フッ」


 親にバレないよう、小さく笑う。

 向こうの返信も一言だった。


『こっちこそ負けない』


「上等じゃねーか」


 これから何が起こるかわからない。想定外のこともあるかもしれない。

 だが、それでも最後に勝つのはこのオレだ。


今回も読んでいただきありがとうございます。

次回は所変わって喫茶店の話になると思います。

それでは次回もよろしくお願いします。


次回投稿は8月12日9時を予定しています。

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