第98話 問われる想い
今回も短めです。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「あ、ありがとね、朝道さん。片付け手伝ってもらっちゃって」
「ううん。一人より二人でやった方が早く終わるし」
授業が終わった後、日直だっためぐみは先生から授業後の片づけをするように言われていたのだ。
「今日が日直だったのは運が悪かったかもね」
「運が無いのはいつものことだけどね。昔からこういうこと任されることが多かったから」
「そうなんだ」
二人は話しながらも着々と片づけを進めていく。
そんな中で、ふと片付ける手を止めた零音はめぐみの方を見る。
「えーと……これはこっちかな」
零音から見られていることに気付いていないめぐみは、手に持った本の片づけ場所を探していた。
「…………」
(最近、井上さんは明るくなってきた……私達と、晴彦と関わるようになってから)
ジッとめぐみのことを見ながら、零音は出会った当初のことを思い出す。
(最初はおどおどしてて、自信のなさそうな子だなって思った)
だからこそ零音はめぐみに声を掛けたのだ。自分に自信の持てなかっためぐみは、新しい環境になってもそれが変わることはなく、結局人見知りを直せないままだった。
でも、だからこそ零音の目に留まった。零音に必要だったのは、晴彦に近づきすぎない人だった。
円滑に高校生活を送るために、何人かは仲良くなっておく必要があると思った零音が、この子なら晴彦に近づきすぎないだろうと判断した少女、それが、めぐみだ。
(我ながら酷い理由……だって、彼女でなくてもよかったんだから)
ただ、めぐみが零音の求めていた条件を満たしていたから近づいた。友達になろうと思った。
(でも……井上さんは変わった。きっとその原因は……)
ゴールデンウィーク、校外学習、そして日曜日に零音が見た光景。めぐみを変える原因になっていたのは晴彦だと零音は思っていたし、事実そうだった。
もちろん、零音や雪達の影響もある。しかし、人を一番変えてしまうのは恋なのだ。
(バカな私は気付かなかった……ううん、気付いてたけど、気付かないフリをした。井上さんのことを、友達だと思っていたから)
めぐみの晴彦への想い、本当は一番最初に気付いて対処しなければいけなかったのに、零音は友達だからと見ないフリをしてしまった。情にほだされてしまった。
(それが間違い……だったのかな)
めぐみに感じていた友情も、少しづつ嫉妬の黒い感情に呑まれようとしていた。
そして零音は、一つの決断を下す。
「朝道さん? その……どうかしたの?」
さすがに零音からの視線に気づいためぐみが、何も言わずにただジッと見てくる零音に問う。しかし、その雰囲気がいつもと違うということに気付いていた。
「…………井上さんに聞きたいことがあるの」
「聞きたい……こと?」
二人以外誰もいない教室の中に、異様な雰囲気が満ちる。
聞こえるのは降り続ける雨が窓を叩く音だけ。
「ハル君のこと……どう思ってるのかな」
「……え?」
思いもよらぬ質問に、思わず固まってしまうめぐみ。
しかし、零音の表情はいたって真剣だ。
めぐみが答えられずに黙っていると、零音がゆっくりと近づいてきながら言う。
「私はね、ハル君のことが好きだよ」
目を閉じて、晴彦の事を思い浮かべながら零音はゆっくりと語りだす。
「幼なじみとしてじゃなく、異性として好き」
思わず一歩後ずさるめぐみ。
「これからもハル君の隣にいたいの」
そこでめぐみは気付く。これは零音からの宣戦布告のようなものなのだと。
めぐみを見る零音の目には、今までとは違う意思が宿っていた。友達を見る目ではない。恋敵を見る目だ。
零音は決めた。めぐみのことを友人としてではなく、雪や雫と同じような恋敵としてみるということを。
「だから、もう一回聞くね」
今、零音が聞いているのはめぐみの意志だ。めぐみに、戦う意思があるのかどうかを聞いているのだ。
めぐみが晴彦への想いを認めるならば、零音がめぐみのことを友人として見ることは無くなるだろう。
「井上さんは、ハル君のこと……どう思ってるの?」
霞美「さてさて、零音はどんな様子かなーと」
女生徒1「あ、かわいー! あなた普段見かけないけど、中等部の子?」
霞美「あ、やば、気配消すの忘れ——」
女生徒2「なになにー。え、ヤバ。超カワイイんだけど、髪も真っ白だし」
女生徒1「あなた名前は?」
女生徒2「こっちおいでよ。一緒にお菓子食べよー」
霞美「ちょ、あの、私することが……うわぁぁあああ!!」
霞美は学園内で気配を消すことを忘れると、たちまちこうなるのです。
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次回投稿は12月15日18時を予定しています。