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第96話 始まりの月曜日 後編

すいません、もう少し話を進めるつもりだったんですが、風邪気味で上手く頭が回りませんでした。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

「朝ごはんできたよ」


 晴彦が二階に上がってからしばらくして、朝ごはんの用意をすませた零音が晴彦のことを呼びに部屋までやってくる。


「お、もうできたのか」

「それじゃ、用意ができたら降りてきてね」

「あぁ、わかった」


 鞄の中を見て忘れ物がないことを確認した晴彦は部屋を出てリビングへ向かう。

 晴彦が席に着くのとほとんど同じタイミングで、零音が飲み物を出してくる。

 零音は晴彦の向かいに座り、ご飯を食べ始める。

 ご飯を食べている最中、ふとついていたテレビを見てみればちょうど天気予報をやっていた。


「今週ずっと雨だってよ。今日も朝から降ってるしなぁ」

「え、ホントに? やだなぁ。洗濯物が乾きにくくなっちゃう」

「雨で一番に心配するのはそこなのかよ」

「他にもあるよ? 生ものが腐りやすくなるから早く食べないとなぁとか」

「くく、なんか悩みが所帯じみているな」

「えぇ、そんなことないよー。みんなそんなもんだって」

「いやいや、零音ぐらいだと思うぞ。高校生でそんな心配するの」

「そうかなー」


 納得のいってない顔で言う零音。しかし、現代高校生で洗濯物や生ものの心配をする高校生というのはそうはいないだろう。


「ま、昨日の夕方から雨降りそうだったしなー」


 何気なく言う晴彦。しかしその言葉を聞いた零音の表情が若干変化する。


「そいえば……さ」


 少しだけ声のトーンが下がる零音。

 しかし、晴彦はそのことに気付いていない。


「ん、どうした?」

「ハル君、昨日は何してたの?」

「昨日?」


 何をしていたのかと問われれば、昨日の晴彦は雫の家でゲームをしていた。しかし、それを素直に言うことを晴彦は躊躇ってしまった。別にやましいことがあるわけじゃない。ただ単純に、好きな人に向かって別の女の子の家に行っていましたというのがなんとなく嫌だったというだけの話だ。


(まぁ雫先輩の家に行ってたって言っても零音は気にしないだろうけどな……ってそれはそれでなんか悲しい気がする)


 実際は気にしないなどということは絶対にないのだが、零音の気持ちを知らない晴彦は、まだ零音は自身のことをただの幼なじみとしか思ってないと考えている。

 するとその時、久しく出てきていなかった選択肢が現れる。


『そんなこと零音には関係ないだろ、と突き放す』

『昨日? ずっと家でゲームしてたぞ、と嘘をつく』

『雫先輩の家に行ってたよ、と正直に言う』


(一番目の選択肢は無しとして……零音は昨日一日出かけてたんだし、ずっと家に居たって言ってもバレない……いやいや、ここで嘘吐いちゃいけないか)


 二番目の選択肢を選びそうになった晴彦は、寸前で思い止まる。零音の雫が話すことがあればその嘘もバレるかもしれないしと思ったのだ。


「昨日なら、雫先輩に呼ばれて先輩の家に行ってたよ」

「……そうなんだ。実は昨日駅で買い物する前にハル君のこと見かけてね。何してたのかなーって思って」

「え、そうなのか? だったら声かけてくれたら買い物手伝ったのに」

「ふふ、そうだね。そうすればよかった」


(あっぶねーーーー!!!)


 平静を装いながらも、内心冷や汗ダラダラな晴彦。ここでもし嘘をついていたならそれはバレていたということだ。正直に言ってよかったとホッと肩をなでおろす。

 零音の好感度は上りも下がりもしていない。しかし、嘘をついていたら確実に下がっていただろうと晴彦は思った。


「先輩と何してたの?」

「え!?」

「どうしたの?」

「いや、その……えーと……」


 引きそうになっていた冷や汗が再び吹き出す晴彦。

 雫がゲーム趣味を秘密にしているので、話すわけにもいかない。


「勉強、勉強教えてもらってたんだ。ほら、中間の成績もそんなによかったわけじゃないからさ」


 嘘をつきたくないと思った直後に嘘をついている自分に内心自分にあきれ果てる晴彦。しかしこればかりは仕方がないと言い聞かせる。


「勉強なら私が教えてあげるのに」

「いや、まぁそれはまた今度でいいよ」

「じゃあまた今度ね。ハル君が勉強熱心になってくれて嬉しいな♪」

「……うん、そうだな」


 笑顔で言う零音。

 晴彦は雫の秘密を守ったことと引き換えに、零音との勉強会を再び過ごさなければいけなくなってしまったのだった。






□■□■□■□■□■□■□■□■


「ククク、おっかしいの」


 そんな二人の様子を霞美は陰から見ていた。

 

「晴彦は上手いこと地雷選択肢かわしたみたいだね。ま、ここでゲームオーバーされてもつまんないからいいんだけど」


 もしあの時、晴彦が他の選択肢を選んでいたなら、晴彦の嘘を知っている零音は嫉妬に怒り狂ったことだろう。

 しかし、雫の家に行っていたと晴彦が言った瞬間、ブワッと溢れるように出た零音の嫉妬の炎を霞美は見逃さなかった。晴彦に対しては上手く隠したようだが。


「誰かとしたなら自分とも……ねぇ。ホント好きだね、晴彦の事」


 呆れるように呟く霞美。


「まぁそうじゃないと意味がないんだけど」


 零音が晴彦のことを好きであればあるほど、晴彦が零音のことを好きになればなるほど、霞美の思い描く未来は美しくなる。

 

「まだ焦るようなタイミングじゃないけど、ついつい気持ちが逸っちゃうんだよね」


 本当なら今日はまだ見ているだけのつもりで、晴彦の家に来るつもりはなかった。

 それでもようやく整った舞台に気持ちが抑えきれなかったのだ。


「今日が始まり、本当の始まり。これから終焉の日まで、想い人との睦まじい時間を楽しんでね」


 そう言い残して、霞美はその場からいなくなった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントをしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は12月12日21時を予定しています。

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