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第92話 めぐみの日曜日 前編

前話で話数を間違え、さらに予約投稿の時間すら間違えるという愚行。

申し訳ありませんでした!

次からはちゃんと気を付けます!



誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 日曜日の夕方、少しづつ空に雲が広がり始めてきた頃。

 めぐみは部屋で一人本を読んでいた。

 ずっと楽しみにしてた本の続きが出たことが嬉しすぎて、一巻から改めて読み直していたのだ。

 

「あぁ、面白かったー。次がでるのはいつかなー、今から待ちきれないよ。うぅーん……体痛い」


そして、一日かけて発売された最新刊まで読み切っためぐみは、ずっと同じ姿勢だったせいで凝り固まった体をほぐすように伸びをした。

 そしてその際に時間を確認して、ぎょっと目を見開く。


「嘘、もうこんな時間!?」


 本に集中するあまり、時間のことを全く気にしていなかっためぐみ。読み始めた頃は天高く日が昇っていたというのに、気付けば沈みかけている。めぐみの感覚では二、三時間しか経っていなかったのに、実際はその倍以上の時間が流れていたのだ、驚くのも無理はない。


「またやっちゃった……」


 がっくりと肩を落とすめぐみ。

 そう、めぐみが本を読んで一日を潰すというのはこれが初めてではない。むしろ常習犯である。

 一度読み始めたたら止まらない、次へ、次へと本を求めてしまう。悲しき読書家の習性である。少しの後悔と、それ以上の満足感。だからこそ止められないのである。


「でもなぁ、花の女子高生が休みの日を本で潰すってどうなんでしょう。もったいない……のかな?」


 呟きながら部屋を出ると、ちょうどその時、弟が外出から帰って来る。


「あれ、どこか行ってたの?」

「ただいま、お姉ちゃん。やっと本読み終わったんだ」

「うん。秋嘉はどこに行ってたの?」

「え、ボクは友達と買い物だよ、ほら」


 そう言って秋嘉は今日買ってきたという服を見せてくる……明らかに女性物の服を。


「この服可愛いよねー。ずっと欲しかったんだ」

「あー……うん。いいんじゃないかな」


 目をキラキラと輝かせながら言う秋嘉。

 そう、秋嘉は女装男子であった。それも生粋の。ハマったのも最近のことではない。ずっと昔、それこそ幼稚園の頃から秋嘉は女の子らしい恰好しかしてこなかった。

 今も長く伸びた髪を後ろでまとめてポニーテイルにしている。

 白シャツに、プリーツスカートを履いていて綺麗な黒髪が白に映えていた。男性が町で見かければ十人中九人は振り返るであろう可愛らしさにあふれていた。見かけだけは。しかし、しかしめぐみの弟なのである。


「お姉ちゃんもたまには外に出ないとダメだよー」


 対してめぐみの恰好はと言えば、ラフな部屋着で、動きやすさを重視しているがためにおしゃれさなど皆無だ。なぜか喪女という言葉がめぐみの脳内をよぎる。


(あれ……もしかして私弟に女子力で負けてる?)


「あ、そうだ。ママもパパも今日は外でご飯食べて帰ってくるってさ」

「え、そうなの? じゃあご飯は」

「自分で用意しろってさ。ボクはちょっと早いけど外で食べてきたから」

「そっかー……冷蔵庫なにかあったかな」

「何もないと思うよ。最近買い物行ってなかったみたいだし」

「うーん、じゃあ買いに行くしかないのかな。ちょっと行ってくるね」

「ちょっと待って」

「え、何?」


 お金を持って出かけようとしためぐみを、秋嘉が呼び止める。


「もしかしてその恰好で外にでるつもり?」

「そうだけど。そこのコンビニに行くだけだし」

「ダメ!」

「えぇ!?」

「そんな恥ずかしい格好で外に出るなんて、お姉ちゃんが良くてもボクが良くない!」


 そのまま無理やり部屋へと戻され、強制的に着替えさせられるめぐみ。

 

「ちょっとそこに行くだけなのに……」

「いつどこで誰に会うかわからないんだから」

「誰にも会わないよー」

「そんなのわかんないでしょ。っていうか、お姉ちゃん高校生なのに服持ってなさすぎ。ボクより少ないってどういうことなの」

「それはほら、欲しい本がいっぱいあるから」

「はぁ……まぁもういいけどね。ちょっとくらい服にもお金使ったほうがいいよ……そんなんじゃ好きな人に笑われるよ?」

「はぇ!? な、なんのこと」

「動揺しすぎ、っていうかバレバレ。お姉ちゃんわかりやすいんだもん」

「ふふ、また後でどんな人か教えてね」


 いたずらっぽく笑う秋嘉に見送られて家を出るめぐみ。

 そのまま近くのコンビニに向かう。

 弟にバレていたという恥ずかしさに打ちひしがれていためぐみは、ふと別の本の続きが出ていたということを思い出す。


「うーん、せっかく着替えたんだし本買いに行こうかな」


 時間を確認していけると思っためぐみは、雨咲駅前にある本屋まで行くことに決めた。

 駅から電車に乗って、本屋まで向かう。

 日曜日の夕方という時間帯、帰る人で電車の中は溢れていた。


「人多いなぁ……それになんか見られてる気がする。気のせいかなぁ。気のせいだよね」


 呟くめぐみ。しかし、それは気のせいではなかった。普段、零音や雪といった超級の美少女と一緒にいることで目立っていないが、めぐみも十分美少女だ。そして今は弟の秋嘉のコーディネートもあって、その魅力がいつも以上に出ていた。 

 しかし、そんなことは露も気づかないめぐみ。変だな、とは思いつつもそのまま本屋へと向かう。

 そして、駅に着き、本屋に入っためぐみは目的の棚へと向かう。

 すでに何度も来たことがある本屋なので本の配置は熟知しているのだ。


「他の本は見ない、他の本は見ない」


 呪文のように呟きながら本の間を歩くめぐみ。

 そうでもしなければ他の本を見てしまい、気付けば二冊、三冊と際限なく買う本の量が増えてしまうからだ。

 他にも買いたい本の発売日が控えているめぐみとしては、今ここで多くの本を買うわけにはいかなかったのだ。


「えーっと……あった!」


 目的の本を見つけためぐみは、他の本に意識をとられないうちにレジへと向かい、本屋を出る。


「ふぅ……買えたぁ」


 他の本からの誘惑に打ち勝っためぐみは満足気に手に持った本を見る。


「ふふ、これで帰ったあとの楽しみが増えたなぁ。さ、あとはお弁当でも買って帰ろう」


 再び駅へ向かおうとしためぐみ、その時だった。


「あれ、井上さん?」

「え?」


 聞き覚えのある声にめぐみは振り返る。


「ひ、ひひひ、日向君!?」


 そこに立っていたのは、晴彦だった。


めぐみ「あれ、アキ君何読んでるの?」

秋嘉「んー、女性水着の特集だよー。今年はどんなのにしようかなーって」

めぐみ「え、着るの?」

秋嘉「着るよ。あたりまえじゃん。このビキニとかどうかな」

めぐみ「あー……うん、いいんじゃないかな」

秋嘉「だよねー。これも候補に入れとこうっと」


 それでちゃんと隠れるのかな、そう思っためぐみであった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントをしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は12月6日21時を予定しています。

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