プロローグ 入学式 前編
前から書こうと思っていた作品をようやく形にできました。
まだまだ未熟で慣れないことも多いですが、これから連載していくなかで少しづづ成長していきたいと思います!
四月。春。それは新しい何かの始まりを告げる季節だ。俺こと日向晴彦も今年の四月から晴れて高校生となった。今日はその入学式の日……なのだが、
「おーい、ハル君、起きてるー?」
階下から聞こえてくるのは我が幼なじみ——朝道零音の声だ。その足音は徐々に部屋に近づいて来ている。
対する俺は、いまだ布団のベッドの中だ。ついさっき目覚ましの音に気付いて目を覚ましたが、春休みの間夜更かしを続けていた体はまだまだ眠りを欲している。
そして、そうこうしているうちに零音が部屋の前にたどり着く。
「ハル君? 起きてるの? 入っちゃうからね」
数度のノックの後、返事がないことにしびれを切らした零音が俺の返事も待たずに部屋に入って来た。
緩くウェーブのかかった髪が、窓から差し込む朝日に反射してキラキラと輝いている。幼なじみのひいき目を抜きにしても零音は美少女だと思う。そんな幼なじみが起こしに来てくれるというこの状況。それはきっと男子高校生の夢と言ってもいいだろう。しかし、しかしだ。それを理解していても俺はまだ寝たいのだ!
「あー、まだ寝てる」
「……起きてるよ」
「布団に入ったままの人は寝てるっていうんですー。二度寝しないの!」
「うわぁ!」
再び寝るべく布団を被りなおそうとしたが、その前に零音に布団を奪われてしまう。
「早く着替えてご飯食べないと、入学式に間に合わないよ」
「うーん、わかったよ」
流石に高校の初日から遅刻するわけにはいかない。布団は恋しいが起きるとしよう。
ベッドから抜け出し、服を手に取るのと同じタイミングで零音が部屋から出ていく。
「それじゃあ、ご飯の用意してるから早く降りてきてね」
いつものことながら、我が幼なじみ様は優秀である。ご飯の用意までしてくれているようだ。もろもろの用意をすませて一階に向かうと、リビングから味噌汁の匂いが漂ってくる。今日は和食のようだ。
「やっときた。あらためておはよう、ハル君。今日の朝ごはんはご飯にお味噌汁、卵焼きと、鮭だよ。納豆もあるけど食べる?」
「おはよう。相変わらず朝から用意がいいな。ありがたいけどさ。あと、納豆はいらない」
「ハル君はほっとくと菓子パンとかしか食べないでしょ。朝ごはんは大事なんだから、ちゃんと食べないとね」
たしかに零音のいない日は朝ごはんも適当にすましてしまうことが多い。というか、男が一人で暮らしていたらみんな似たようなものだろう。料理をしようと思ったこともあったが、結局覚えられなかった。
「早く食べよう。じゃないとホントに遅刻しちゃうよ」
「そうだな。じゃあいただきます」
「はいどうぞ召し上がれ」
快晴の青空の下、俺達は学校へと向かっていた。入学式をするには絶好の日だろう。
「いい天気でよかったね」
「ホントにな。せっかくの入学式だし、雨よりは晴れてるほうがいい」
「あ、雨で思い出したんだけどさ。雨咲学園の噂というか、伝説知ってる?」
「いや、知らないけど……そんなのあるのか?」
「私も友達に聞いたんだけど、天気雨の日に学校内にあるお狐様の像に願い事をすると叶うっていう伝説があるんだって。でも不思議なのはね、学園の中にはそんな像はないみたいなの」
「なんだそれ。どういうことだ?」
「学園にお狐様の像はないけど、その像を見つけて、願い事が叶ったって人がいるんだって。それも何人も。だけどやっぱり像は見つからないから伝説だって言われてるの」
「学園に伝わる七不思議みたいなもんか」
「また今度探してみようよ。噂だと、旧校舎の近くにあるらしいの」
「うーん、まぁ時間があったらな」
「やった! 約束だからね」
零音は昔からこの手の噂が好きだった。小学校の時も七不思議の検証に付き合わされたりしたものだ。俺自身も全く興味がないわけじゃないしな。
「そうそう、昨日のことなんだけどね——」
もはや零音は次の話題へ移ろうとしていた。これは零音だからなのか、女の子とはそういうものなのか、昔からすぐに話題がころころ変わる。まぁ、慣れたもんだけどな。
他愛もない話を続けながら、俺達は通学路を歩いて行った。
どこで話をきるか悩んだ結果すごく短くなってしまった第1話。
次で晴彦サイドのプロローグは終わるはず……です。
次回投稿は8月2日の9時を予定しています。