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ある者の縁由と由縁

作者: 幸星

この物語はオリジナル作品です。

登場する人物、場所等は全て架空のものです。

覚えている限り昔の事は年中の頃の幼稚園での記憶。先生たちと歌ったり同い年の友達と男女関係無くままごとをしたり、当時はとても楽しかったのだろう。大人になった今じゃあ何が楽しかったのかと思ったりする。

 小学生になってからは恐らく、一番元気ではっちゃけていた時期だっただろう。友達も割と沢山出来たし、よく遊んだ。

 6年生の時に初めて告白をした。相手はとても可愛かった。。しかしフラれてしまった。感じたことのない気持ちに当時は凄く困惑していた。多分、数日間は落ち込んでいただろう。友達はその事をよく茶化してきた。すぐに気に留めなくなって普通に接していたが。

 中学時代は穏やかだった。地元の公立に行った。ほとんどの同級生が同じ学校だった。だから別に人間関係にはなんの問題も無かった。実のところ友達が出来るのか不安だったのだが、案外普通に出来た。

2年の時初めて告白された。相手はとても可愛らしかった。そのまま付き合ったが所詮子供の恋愛、1年ギリギリ持たなかった。定期テストではいつも上の下の成績だった。それが理由かは分からないが、成績優秀者とも仲が良かったし成績が悪かったやつとも仲良くできた。

 部活はバスケ部に入った。汗を流すのはとても気持ちが良かった。今は汗は掻きたくないものだが。県大会には行けなかったのが悔しいが、とても楽しい活動だった。

 高校受験ではかなり悩まされた。成績は申し分無いのだが、上の下という微妙なところにいたので自分に合う学校が近くには無かったのである。結局、電車で50分程の少し遠い高校に通うことになった。

部活は中学と同じバスケ部に入部した。その学校はバスケが盛んで本格的な練習をしていた。大会の期間はそれはもう忙しかった。朝練から始まり、昼休みの練習、そして放課後は7時半まで。夏の時期は倒れる人もよくいた。

 最後の大会では猛練習も空しく、市大会ベスト4で終わった。皆涙で顔をくしゃくしゃにしていた。自分がどうだったかは、はっきり覚えていないが恐らく泣いていたと思う。

 少し遠いが自分に合った高校を選んだおかげで、高校でも成績は上の下だった。理系を専攻したが、実際のところ文系でもいけた。

 部活と、勉強尽くしだったためか、恋愛沙汰は一切無かった。あの当時はそんなこと全く意識していなかったが、もう少し恋愛していれば良かったと考えた事もあった。そんな願望は今っとなってはどうでも良い、のかもしれない。

 大学受験はそんな苦労しなかった。何故なら……上の下だったからだ。それなりの中堅大学に入った。特にこれと言ってやりたい学問があったわけでは無かったの教師のアドバイスを参考に進学した。

大学に入ってすぐはやはり忙しかったがそれも直ぐにダレたものになっていた。想像していた通り、高校とは違い何をするのも自由でキャンパスに行くも行かぬも大して変わらない。何故なら、上の下だからだ。

 入学から翌々週、暇だと思い何かサークルに入ろうと思い、キャンパス内を歩き回った。サークル巡り2日目、友人に勧められテニスサークルという名のお遊びサークルを覗いてみた。友人はそのサークルに先輩が居るらしく、その和に自然に入っていった。その後、友人に手招きされ和に入った。

 結局、そのままこのサークルに入った。このサークルの人たちは皆温かく、分け隔てなく話したり遊んだりしていた。部室は以前倉庫に使われていたらしく人数の割に広く、小さい窓が一つだけあり電気を付けないと真っ暗になる。5人掛けのソファーが2個、その間に低いリビングテーブルが1つ。脇には何故か古めかしいテーブルサッカーが置いてある。それを数人が白熱してプレイしている。

 たまにみんなでテニスコートを借りて、楽しくテニスをした。たまに体をしっかり動かすといい感じに汗を掻いて、運動不足を解消してくれる。もちろん勉学を疎かにしてはいない。何故なら上の下を維持しなければならないからだ。

冬はテニスではなく、スキーに行った。得手不得手関係無く楽しく滑ったり、転んだり。

 いつの間にか時は流れ、もう4年になっていた。この年に転機が訪れた。今度の旅行の幹事になり企画を立てているときだった。新しい入部希望者が部室に入ってきた。それは2年の女の子だった。特に入部に関して規制も無いので即承諾した。ちょうど企画書を書いていた時だったので少し手伝ってもらった。それがきっかけになり、その後2人で会う事が増え、いつの間にか付き合っていた。尤もっとも、サークル仲間に言われて気づいた事だったのだが、言われるまで2人ともそんな意識なんてなかったのだ。

 就職は大いに成功し、それなりの大企業に就職した。サークル仲間には何人か就職浪人となったが、とりあえずお疲れ飲み会を開催した。彼女はまだ未成年なので飲めないが楽しんでいるようだった。

 彼女は実家住まいらしい。どうせならという事で、独り暮らししている自分の家に招いた。そのまま同居することとなった。ふと、思ったので彼女に訊いた。

「卒業したらどうするの?就職?」

「え?養ってくれるんじゃないの?」

「言ってくれるじゃん。いいよやってやんよ」

とは言ってもまだまだ会社では平も平、給料は1人でいっぱいいっぱいだ。数日後、頭を下げて就職を勧めることになるのだった。

結果、彼女は得意な料理を活かして居酒屋でバイトをすることになった。

 入社5年で主任に昇進した。特にこれといって変わらないが、少し仕事量が増えただろうか。同僚から羨ましがられる。その仕事にも慣れ余裕が出来てきた頃、夏休みが取れたので彼女と旅行に行くことにした。旅行先でプロポーズをした。彼女は喜んで受け入れ、プロポーズは大成功した。2泊3日の旅はとてもいいものに終わり、きっと彼女もいい思い出になったことだろう。

 翌年、近い親戚と一部の友人を招待してこじんまりと結婚式を挙げた。彼女は涙を浮かべていた気がする。

 分かってはいたが、いくら営んでも子供は出来ない。しかし、自分も彼女も子供が欲しいという願望が強かった。結局彼女の提案により児童養護施設に行くことにした。そこには子供たちが沢山いた。施設長曰く、少子化が進んでも、孤児は減っていないそうだ。彼女は、部屋の隅に座って本を読んでいる振りをしながらじっとこちらを見つめている女の子の側に寄って行った。数十分後、彼女と女の子は手をつないで歩いてきた。

「帰ろう!」

そう言って彼女はにっこり笑った。その女の子の名前はゆかりというらしい。外はもう西日が眩しくなっていた。手続きを済ませ、3人で手を繋いで家に帰った。晴れて縁は家族になり、娘となった。

 家族が増え、今までの家が狭く感じてきたので遂に引っ越すことにした。縁の通う小学校と自分の仕事に支障が出ない場所に引っ越す。しかし、なかなか見つからず親にも工面してもらいながらマイホームを購入することにした。両親には本当に感謝ししてもしきれない。いつかでっかい孝行をすると言ったが、孫を見れたのが最大の親孝行だと言われた。とは言うものの、本当に大きな孝行をしなくてはならない。

 それからはローン返済のためにより一層懸命に働き、いつのまにか係長になっていた。

収入も安定して返済にも目途が立った頃。彼女はすでに専業主婦となっていた。縁も中学生になった。学校にはもう慣れたよ、とよく学校の話を楽しくしてくれる。

 しかし最近、縁が言う事がある。

「弟か妹が欲しい!」

である。きっと友達が兄弟の話をよくするのだろう。これは出来ないことでは無いのだが、そんな簡単でいいのだろうか、と考えてしまうのである。そこは普通に子供を作るのと同じと割り切るべきなのだろうか。

結局、2度目の児童養護施設にやってきた。またも嫁が1人の男の子の側に寄って行った。男の子は不貞腐ふてくされいるように見えた。数十分後手をつないで歩いてきた。男の子はまだ不貞腐れているように見えるが、その口は僅かに笑っていた。いや笑いをこらえた口だった。

「帰ろう」

そう言って嫁は朗らかに微笑んだ。その男の子の名前はゆきというらしい。外はもう月明かりが照らしていた。手続きを済ませ、4人で手を繋いで家に帰った。晴れて由は家族となり、息子となった。

 ちょうど縁が家族になった時と今の由は同じ年だ。由はいつも学校から帰ってくると不貞腐れた顔をしているらしい。ある休日、由に訊いてみた。

「学校で何かあったの?」

「なんで?」

「聞いたんだよ。学校から帰ってきた時不貞腐れてるって」

「……クラスの子がね、からかってくるの。お前の親はにせものだーって」

この事はその後の行事で解決するのだが、その場ではなんとも言えなかった。縁はそんな事は言われなかったからだ。彼自身はそれほど気にしてないと言っていたが、顔に出てる時点で気にしているのだろう。その日は切り替えて家族4人一緒に出掛けることにした。

 ある日、課長に呼ばれ何かと怯えながら会議室に行くと、課長はにこにこしながら話始めた。

「昨日な、人事部に呼ばれたんだ。そしたらなんて言われたと思う?」

「はあ、なんでしょう……」

「部長にならないか?だよ。そういわれたんだよ」

「それはおめでとうございます」

「そして君を呼んだのは他ではない。私が部長に昇進するなら課長の後任は?」

「え、もしかして」

「そう君だよ!おめでとう」

「ありがとうございます」

課長と熱い握手を交わし2人で会議室から出ていく。その後同僚と飲みに行ってその事を話すと、酒も入ったせいで随分と面倒くさく絡んできた。彼は仕事は出来るのだが、何故か昇進させてもらえないのである。社内のランクは上がってはいるものの、役職はない平である。憐みを込めて、今日は奢ってやるのだった。

 家に帰るともう子供たちはベッドで寝ているが、嫁だけは待っていたのかダイニングテーブルに突っ伏して寝ていた。そういえば飲みに行くのを伝えることを忘れていた。すまないと思い肩をトントンとつついて起こす。

「……あ、おかえりなさい」

「ただいま。ごめんね」

「もう……気を付けてね」

ごめんとまた頭を下げる。するとある事に気づく。

「あれ?お風呂入ってないの?」

「うん。ずっと待ってたから」

「そっか。……一緒にはいろっか」

「うん」

別に下心なんて無い。一切無い。そのままその日は普通に寝た。そう、普通に。別に何も期待なんてしていない。だから別に、普通にそのまま寝た。

 ある日、由が宿題の事で随分悩んでいた。どうしたのと声を掛けると、見ちゃだめと机の上に身を乗せて隠された。少しもやっとしたが、自分の力で解決しようとする姿とても誇らしいものだった。そして数日後、嫁から紙を一枚渡された。由の学校の授業参観のお知らせだ。今度の土曜日。手帳を確認すると仕事が、入っていなかったので胸を撫で下ろし手帳に『授業参観』と書き込む。

会社で同僚に自慢しつつ仕事をこなす。いつもより手が軽く感じる。仕事が早く片付く。にこにこしていると、後輩にご機嫌ですねと言われ実は、と再び自慢する。我ながらおっさんっぽいだろうか。

 楽しみにしているとすぐに土曜日はやってきた。いつものスーツとは違う綺麗な服を着て嫁と学校へ向かう。沢山の親たちがぞろぞろと校門へ向かって歩いている。

教室へ向かうとそろそろ授業が始まるらしく、皆せかせかと席に着いた。そこにチャイムと共に先生が入ってくる。自分と同じくらいの年の先生だ。

「はい。みんな後ろを見てみて、お父さんやお母さんが沢山来てます。はい前向いてー。今日の宿題忘れてないかな?今日は『僕、私の家族』について発表してもらいます。まずは新井君から……」

なるほど、これに悩んでいたのか。確かにうちは複雑だからな。と思いながら由の順番が来るのをドキドキしながら待つ。嫁はそんな様子をみてくすりと笑って、肩を小突いてきた。そうだ、自分が緊張してどうするのだ。

「ありがとー。はい、じゃあ次はゆっきー」

そんな風に呼ばれているのかと思いながら、聞く。

「ぼくのかぞく。ぼくのお母さんたちは本当の親ではありません」

そんな導入から始まって、少しざわつくがそんな事は気にせず読み続ける。

「ぼくは本当のお父さんとお母さんはきらいだったけど、今はかんしゃしています。なぜなら、今のお母さんたちにあわせてくれたからです。よくにせものの親だって言われます。でも今のお母さんたちはだれがなんと言おうとぼくのお母さんたちです」

その後も由の発表は続いていたが感動であまり覚えていない。嫁からハンカチを渡されそれを目元に持っていき、にじみ出ていた涙を拭いた。

 家に帰ってから由が尋ねてきた。

「ぼくのはっぴょうどうだった?お母さん!」

「お母さん感動しちゃった。とっても良かったよ」

私は思わず由を抱きしめた。嫁は微笑んで、縁はにやにやしていた。

どうも幸星です。

これは気まぐれで書いた物語です。今回題材にしたのは家族です。まあ僕もまだ若いのであまり分かりませんが、若いなりにかけたのではないでしょうか。

さて最後が適当なのでわかりずらいと思います。なのでその説明です。結論から言うと、主人公は女性です。最後の最後までなるべく主人公もとい語り手に一人称を使わず、自分などの言葉を使いました。その後の展開で主人公をなるべく男に見えるようにするためです。子供が出来ないのが「分かっていたこと」と言う場面で何となく察した人もいたのではないでしょうか。嫁は嫁、そのまま女性です。

今後、世の中の人間関係はより一層複雑になるでしょう。こんな家族がいてもなんらおかしくありませんね。

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