#2 邂逅
「う・・・ん?」
目が覚めると、俺は森の中にいた。
「どこだ・・・ここ」
見覚えの無い景色。見渡す限りの木や草。
「何が起きたんだっけ・・・」
よく思い出してみる。
変なやつから電話がかかってきて、異世界転移だのあーだこーだ言われ、やれるもんならやってみろって気持ちで承諾したら気を失って、目が覚めたらここにいた・・・。
「あれ?転移してね?」
アイツの言った通りになったのなら、ここは異世界という事になる。
「まあ、とりあえず歩いて見るか。ここが異世界って確証は無いわけだし。」
歩く事数分、俺はある事に気がついた。
「体が・・・やけに軽いな」
そう。体が軽いのである。さっきから結構歩いているはずである。ヒキニート生活を送っていた俺ならもう息が切れているぐらいだと思う。
だが、今は息切れひとつ無い。
「まあ、気のせいかな。もう少し歩いてみようっと」
そして、歩く事十数分。
━━女の子が倒れていた。
・・・ファッ!?
「大丈夫か!?」
慌てて駆け寄る。息はあるようだ。
「う・・・」
「大丈夫か!?しっかり!」
「・・・か・・・へ・・・た」
「え?」
「お腹・・・減った・・・」
女の子がそう言うと同時、女の子のお腹から可愛らしい音が聞こえてきた。
「・・・」
なんとも拍子抜けである。とりあえず、周りに何か食料らしき物が無いか見渡してみる。
「あ、そうだ。」
俺はズボンのポケットをまさぐった。
「お、あった」
ポケットの中から出てきたのは、スニッ〇ーズだった。さっき食べようとしてポケットの中に入れたのを忘れて、そのままにしてあったのだ。
「これ、食べられる?」
包装を開けて、口に近づけてみる。
「・・・」
匂いを嗅いでいるのだろうか。鼻がひくひく動いている。
「・・・」
あ、食べた。
「・・・!!」
「・・・え?」
女の子がものすごい勢いで上半身を起こした。
「うわぁ!?なになになに!?」
「美味しい!これ美味しいです!こんなお菓子食べたことありません!」
女の子の目がキラキラ光っている。
よほど美味しかったのだろう。もう中身は空になっていた。
「そ、そりゃ良かった」
よくよく見てみればこの少女、凄く可愛い。
つやつやの黒髪、大きな赤い目、スタイルのいい体。(尚、胸は普通。)
「ふう。ごちそうさまでした。」
女の子が満足そうに言う。
「お、おう・・・お粗末さま・・・」
「あなたは、田宮晴人様でいらっしゃいますか?」
「・・・!!」
こいつ、なぜ俺の名前を・・・それに、この声・・・!
「私はリリナ。あなたをこの精霊世界【カラリア】に転移させた者です。以後、お見知り置きを。」
そう言って、誰もが引き込まれてしまいそうな可愛らしい微笑みで、俺に語りかけた。