表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界を作ったのは俺なのに!  作者: T.O
この世界は俺に厳しい
12/17

焦る気持ち

4/30お金の単位を変えました。


 俺は自室に戻って眠ろうと思ったのだが中々寝付けなかった。先程の事が頭から離れないでいたからだ。


「あれはねーだろ…」


 ソフィーは九割程の正解を導き出し俺に問うてきた。だが俺はその問いから避け、俺の仕事であろう事も任せ、逃げてしまった。

 それを思い出し、枕に顔を埋め足をバタバタさせている。


「ってか……一日も経ってないのにバレるってなんだよ……」


 窓から見える二個の月は、未だその姿を隠していない。この世界に転移して来てまだ丸一日も経っていないのだ。

 だがその一日は以前とは比べ物にならない程な事があり、沢山の経験ができた。

 

「明日からどうしよう……」


 先の事を考えるが一向に解決しない、だが体は疲れており、不安だらけの気持ちを胸に意識は落ちていく。





「……きて」


 腹を撫でる尻尾の感触に再度意識を起こされる。


「おきて」


 おぼろげな視界が捉えたのはやはりソフィーの姿。

 だが寝ぼけた頭でもわかる。これ二度目だ。


「……騙されないですよ」


 そう言った瞬間、スパーンと頭を叩かれる。


「いってぇ……!」

「だから寝ぼけてないで早くおきて」


 完全に覚醒した俺は彼女の姿を確認する。

 若さを感じるその姿は確かにソフィーのものだろう。特に胸が。


「朝食。できてるよ」


 そう言い放ち去っていく彼女の姿は、昨日の重い雰囲気は既に纏っておらず、いつもどおりの彼女であった。





 一階では既に朝食をとったであろう人が席をたちはじめ、空席が目立っていた。

 俺の思考は自分が座れる場所があることよりも、昨日椅子を配置したままで少し安堵する。

 その中の一つ、隅っこの席に着席し食事を待つ。


 少しするとソフィーが食事を持ってきて机の上に置いてくれた。


「もー。自分で取りに来るんだよ」


 しまった、そうだったのか。

 昨日隠し通す意志を固めたはずなのに、サービス満点の日本での暮らしが抜けきれていない。

 焦る気持ちを胸にチラっとソフィーを見るが何やら呆れている様子。


「もう聞かないから、わからないことあったら言ってね」

「あ、あぁ……わかった」


 食事を置くと、もう用は無いと言わんばかりに厨房に戻っていくソフィー。

 果たして信じてくれたのか諦めたのか、それとも又別の思惑があるのだろうか。

 とにかく彼女はこちらに突っ込んでくる事はやめてくれたようだ。情けなくはあるが今はその気持ちに感謝する。


 出された食事は昨日のまかないよりも質素に見える。

 パンとスープ、ただそれだけで肉も野菜も見当たらない。

 他の客も同じ物を食べているようで、昨日がやはり祝い事だったからなのだろうと納得する。


「もぐもぐ、硬いな」


 出されたパンは硬かったので、他の客の見よう見まねでスープに付けてふやけさせてから食べる。


「おお、これはうまい」


 スープ単体の味とも、パン単体の味とも全然違う。

 二つがあわさり新しい味に変化したそれを味わう。


(ファンタジー恐るべし)


 俺はそれに感動しながらも、今後について考える。

 ここの暮らしは俺にとって感動を覚えることばかりなのだが、常識が無い俺には些か一人で生きていくには無理な気がする。

 昨日だって助けられなければ生きてすらいなかったかもしれない。

 やはり帰るべきなのだろうか……そう思った瞬間に気付く。


――【転移の門】……無事か?


 ワーウルフは確か、メテオから離れる為元の場所に戻るように走っていったはずだ。それはつまり俺が現れた場所であり門がある場所。

 全身から嫌な汗が出てくる。今すぐにでも確認したい。

 俺は跳ねるように席を立ち、出口に向かう。


 扉を開け、外にでるとアランの姿があった。都合がいい。


「やあ、どうしたんだい慌てて」

「あ、あの昨日の場所まで送ってもらうことはできませんか!」

「それは難しいね。祝日ならともかく毎日宿を放っておくわけにはいかないよ」

「ぐっ……」


 確かにそうなのだろう。しかも俺個人の為となると彼が付き合う理由は無い。

 すこし傲慢な願いをしてしまったと反省するが、それもほんの少しの間。

 こうしている時間が勿体無いと走り出そうとするのだが、アランに肩を掴まれ前に出れずにいた。

 

「落ち着いて」

「離してください!」


 何故邪魔するのだろう。そんな俺の視線を受け、アランは何かを手渡してきた。


「はいお給料。流石にあの距離を走っては行けないからね」

「な……なんで?」


 俺は居候の身だ。その代わりに手伝いをしたから給料を貰うのはおかしいはずだ。


「泊めたのは連れてきちゃったからだよ。お給料はお手伝いの分だね」

「なっ……」


 そんな筈は無いのだろう。だが今はその詭弁が凄く有りがたい。


「有難うございます! ご恩は必ず返します!」

「城門の場所は覚えているかい? その辺りに駅馬車が在るからそこで乗るといい」

「はい!」


 何から何まで世話になった。感謝の気持ちを胸に俺は再度走り出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ