11.神さまの計らい
机に突っ伏してうたた寝をしていた真紀は、ふっと目を覚ました。あたし、いつの間にか、寝てたんだ。
机の上を見ると、一年生のときの国語のノートが出しっぱなしになっている。あれ、何でこんなの出したんだろ。
真紀は、ノートを手にとって、パラパラとめくってみた。何これ? 真紀は、一番うしろのページに目を留めた。
そこに描かれているのは、何かのキャラクター? ニコニコと笑っている男の子?男の人?の絵だ。ゆったりしたシャツとズボン、丸っこい頭巾という、いっぷう変わった装束。昔ばなしに出てくる神さまのようだ。絵の他には、このキャラクターの名前も説明も、何も書かれていない。
この絵のかんじは、たしかにあたしが描いたものだ。だけど、あたし、こんな絵描いたかなあ……
今から、十分ほど前。
真紀の視界から、ヤマブキの姿が消えた――のだけど、実は、ヤマブキが去って行ったのではなく、真紀が眠りについたのだった。
真紀が机に突っ伏して眠りにつくと、ヤマブキは、真紀のすぐそばまで寄ってきた。
「どれどれ、ちょっと見せてもらいまっせ」
ヤマブキは、独り言を言いながら、ノートを手に取った。
「ほう、これは、可愛らしおますな」
ヤマブキは、真紀の絵のヤマブキと同じように、にっこりと目を細める。
「真紀はんが、せっかく描いてくれはったことやし、これくらいは、残してもかまいまへんやろ」
そう言いながら、ヤマブキは、絵の上に手を置いて、軽くなでるような仕草をした。
「これでよろし」
ヤマブキは、優しく微笑みながら、眠っている真紀を見る。
「真紀はんと健太はんの仲を取り持たせてもろて、わてもうれしおます。あとはもう、あんじょういきますやろ。真紀はん、どうかお幸せに。さてと、そろそろ行きますか」
そう言い終わると、ヤマブキは、もう一度にっこりして、今度こそ、すうーっと姿を消した。
あたし、こんな絵、いつ描いたんだろ。
真紀は、ニコニコと笑う男の人の絵を、しげしげと見つめる。
あっ、もしかして、ゆるキャラ祭りで見たのかも! 去年、ゆるキャラのイベントがあって、夏美といっしょに見に行ったことがあった。全国各地から、ゆるキャラがたくさん来ていて、この絵のようなのも、いたような気がする。きっと、そうだ。こんな絵、描いたのは忘れていたけど。
それにしても、この絵、自分で描いたにしては、なかなか上出来だ。見ていると、ほっこりするような、可愛さがある。
真紀は、ふと思いついて、色を塗ってみることにした。何色にしよう。可愛い笑顔には、明るい色がいいよね。真紀は、黄色の色鉛筆を手に取って、衣装に色をつけた。
うん、いいかんじ。こうやって見てみると、なんだか、たれた目が、ちょっと、倉本くんにも似ているような……やだ、あたしったら、なんでも倉本くんと結びつけちゃう。
真紀は、ひとりで照れながら、ノートを引き出しにもどした。