80:領土拡張のさなか、ダンジョンマスターは新たな能力に気づく
己に穿たれた穴に、内向きに落ち込んでいくように消滅するイロナシ。
その間にも、タツキはミアズナ方面へのダンジョン拡張を継続していた。
ただ。
『これは、どういう意味なんだろう?』
エーテル浸食、物質転換、状態固定、形状記憶。
タツキは、いつものダンジョン化の工程において、これらの中から《形状記憶》を省くことができることに気づいたのだ。しかも、ダンジョンマスターの本能のままに。
ランクが9となり、サツキを配下に加え、伸びに伸びてしまったステータス画面。
そこに、いつの間にか追加されていた新たなスキル《環境創成》が仕事をしているような気がしてならない。
フジタニ・タツキ
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ダンジョンマスターランク:9
・ダンジョン:現在 1927 (上限3600 + 1200 + 385)
・使役ユニット:現在 251 (上限2000 + 600)
・同盟:カオルコ
・配下:サツキ
▼
ダンジョンマスターランク:2
・ダンジョン:主人に統合
・使役ユニット:現在 0 (上限560 )
魔技
◯ダンジョンマスターの本能(親和:腐種)
・ユニット生成(D)/アイテム生成(★)/敵勢探知/ユニット視点/鉱物探知
◯異界の理(状態:封印解除)
・原書知識/ステータス閲覧
◯称号:干物女
・使役する乾燥したアンデッドのステータスが30%上昇
◯専用魔技:創薬師
・薬品系褒章のロックをすべて解除する
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魔技
◯ダンジョンマスターの本能(親和:亜人)
・ユニット生成(S) /アイテム生成(S) /敵勢探知/ユニット視点(対象9) /ユニット憑依/鉱物探知/サブコア生成(2 / 30)/サブコア拡張(制御係数5)/サブコア拡張(距離係数5)/環境創成
◯異界の理(状態:封印解除)
・ステータス閲覧/自在掘削/悪食の床
◯称号:万魔殿
・ユニット生成時の消費エリキシル1割減少
◯専用魔技:万魔殿
・あらゆるユニットを創造できる
「サツキ、《環境創成》ってどんなスキルだと思う?」
自身にはない、彼女の《原書知識》や、かなりのぶっ壊れ専用魔技《創薬師》等が気になり、そして何よりも、――乾き物が最強なのかよっ!?――と称号《干物女》に全力でツッコミを贈りたいところなのだが、ステータスを勝手に見られているというのは気分が悪かろうと考え、お口をチャックする。
「《環境創成》? どのカテゴリにあるの? 異界の理?」
「あ、いや、ダンジョンマスターの本能」
「う~ん? だったらダンジョン関連の能力よね」
と、タツキを後ろから抱きすくめるサツキは、彼の頭の上に自分の顎を置いてしばし黙考する。その間、彼女にすんすんと、髪というか、頭皮の匂いをかがれているような気がしてどうにも落ち着かない。
「そうね、あれじゃない? ダンジョンものによくある、ダンジョンの中なのに外、みたいな世界を作る能力。――第1階層は草原で、第2階層はジャングルで、とか、あるじゃない」
「ああ~。言われればあったような気がするけど、概念? 記憶? 消失してるからなるほど! って言えないところがつらい」
もしかすると、前世概念を完璧に有していることを指して異界の理《原書知識》とするのかもしれない。
「じゃ、俺が思っていた現象の原因じゃなさそうだなぁ」
この仮説が正しければ、《環境創成》を活用すれば、ダンジョンタウンやワナジーマ地下都市の環境を、もっといい感じに改造できる可能性があるということか。
ただ、今回、サツキに尋ねる発端となる発見は、それとは微妙に毛色が違う。
「ダンジョン化することで、あの気持ち悪いスライムというか、イロナシの白化を元に戻せる――、いや、上書き修正できるんだ。《環境創成》のせいかな、って思ってたんだが」
「じゃ、検証すればいいじゃない」
「どうやって?」
「私が白化した部分にダンジョンを拡張する」
「ああ、そっか、――許可する」
サツキは、タツキの頭に顎を乗せたまま、白くてきれいな指を虚空にさまよわせる。
「できたわよ、色の抜けた部分の上書き。ああ、でも、私は草原みたいな床パーツがないから土がむき出しの地面になるわね」
「あ」
タツキは気づく
「環境創成だ、確かに」
何の気なしにダンジョンを拡張していたが、その工程には、さほど気にすることもなく「環境」カテゴリのパーツをもりもりと使っていたことに気づく。
さらに。
「そうね。加えて私はおにぃみたいに、ダンジョン属性外せないから、あの一帯は私が生きている限りダンジョン床のまま。草も生えないわ」
「え?」
「気づいてなかったの? おにぃが補修した場所、ダンジョンじゃなくて、普通に自然の一部になってるわよ?」
「…なるほど。ダンジョン生成で《形状記憶》を省くと、普通の物体? 空間? になるんだ」
そういえば、環境カテゴリのパーツを出すとき、『周囲の環境データを取り込みますか?』とか、選択肢があったような。
「気づきなさいよ」
「いやほら、あの時は血みどろボアを一刻も早くきれいにしないと、クロベニがハラキリだったから」
ゆえに『はい』を連打してました、と、タツキは反省の弁を述べる。
正しくは「クロベニのきれいなおへそに見とれてて、選択肢見てませんでした」なのだが、これを言ったらゾンビで圧死させられそうなのでお口チャック再びだ。
「それにしてもおかしいと思いなさいよ」
「いや、一気にランクアップしすぎて、なにがなんだかね」
「さすが、エンドコンテンツおにぃ、ね」
「その呼び方やめて」.
タツキ少々げんなりしつつも、サツキの白化補修実験で、一部ダンジョン化した地面を、環境パーツで上書きしていくのだった。
誤字報告、いつもありがとうございます<(_ _)>




