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ダンジョンマスターと生贄の少女  作者: 緑 素直


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80/100

73:3人の女子に、ダンジョンマスターはカツアゲされる

「おい、お前とお前、まだ仕事してる狩猟組と樵組を呼んで来い、坊っちゃんがまた宴会を企ててるぞって」

「へいっ!」

「承知しやしたっ!」

 と、宴の空気をいち早く察して集まっていた、漁師組トップである町会長、元お頭のヴォルドガングの号令に、2人は嬉しそうに新しい門をくぐって外の世界へと飛び出していく。


 ほどなくして。

「い、入り口が!」

「近いぞ!」

「助かったっ! もうあの階段を下らなくていいんだっ!」

 木材、山菜、キノコの類、仕留めたウサギや鳥を携えて、

「走れ、走れっ、もう少しだっ!」

「坊っちゃん、すいません、俺らが入ったらすぐに門を閉めてくださいっ!!」

何やら必死の形相で男たちが駆けてくるではないか。


「どゆこと?」

「お屋形様、お任せください」

 クロベニがすっとタツキの前に進み出て、

魔兵マギ

と呟けば、衛兵の詰め所内で待機しているはずの黒砦魔兵ブラックマギが、彼女の影の中からするりと滑り出てくる。


「ボアが3頭ですね。住人の皆様、我々衛兵隊が対応いたします」

 エーテルの動きを感じたので、採用面接っぽいときに述べた通り魔兵マギが探索系の技能アーツを使ったのだろう。


「お、おいっ、あの姉さん誰だ?」

「すっげー美人」

「いや、エルローネさんの方が美人だ。モフモフしか勝たん!」

「なにぃ!? 俺の推しはサツキちゃんだ! あの気だるげな眼差し。最高だろ!」

「貴様らっ、我らがチェリ様を差し置いてなんてことを! 天真爛漫こそ正義!」


 始まりの号令もかけていないのに、すでにアルコールを摂取し始めている住人たちが好き勝手なことを言い始める。君たち、肝心のボアの襲来について触れなくてよいのか?


「まぁ、俺も食材が向こうからやってきた、としか思えないんだよなぁ…」

「えへへ、新鮮なお肉、いーっぱい食べられますね!」

 そんな脳内突っ込みの結果だけを、準備を終えて隣にやってきたチェリに呟けば、彼女も同意見らしく満面の笑みを返してくる。あと、褒められたのがうれしいのか、ニヨニヨしているのが可愛らしい。

 うん、確かに天真爛漫は正義だ。と、タツキは幸せな気持ちになる。


「ええと、これかしら? カオルコ姉さまが呼んでたヤツ」

 そして、この宴のメインシェフたるサツキも、既に事後――すなわち、襲い来る食材ボアたちをいかにおいしく頂こうか―――を考えており、ワナジーマの熟成肉担当お化けを検索している。


『おにい、魂種はちょっとコスパ悪いけど、召喚していい?』

 と、配下レギオンシステムを介してエリキシル使用許可が申請される。

『あー、はいはい、どうぞどうぞ』

 深緑色の召喚陣から現れた《レイス》も、まさか自身の魔技アーツ老化の呪いレベルドレイン》を、熟成肉づくりに使わされるとは思ってはいまい。


 しかしサツキのやつ、なんか気合入ってるな? 

 と、タツキが思っていると、

「薬局ですが、1階でルート様が薬を販売し、2階でサツキ様が、薬草茶の飲めるカフェレストランを営業することになりました」

「へ?」

エルローネがガールズトークの結果を教えてくれた。


「さらに、2階ではお酒も出すのですよ」

 と付け加えることも忘れない。これは、タツキに《アマヤの涙》、すなわち彼女のお気に入りワインを卸せという、遠回しのおねだりなのかもしれない。まぁ、ランク9になった今、もっとすごいのが出せたりするのだが。


「タツキ様、私に何か隠していたりしませんか?」

「えっ!?」

「な、何をでございましょうかっ!?」

 何この人****、…って、心読めるんかいっ!? と、タイミングの良すぎる指摘に戦慄したタツキは、思わず敬語で返事をする。


「エル姉さま、これは隠してますね」

「チェリまでっ!? な、何を根拠に」

 にゅふふーん、と得意げに笑うチェリ。


「エル姉さまがお酒のお話をした時、タツキ様のお顔がとても自慢げになりました」

「えっ!?」

「それはすなわち?」


「ひぃっ!」

 ずずい、エルローネが距離を詰めてくる。

「きっと、もっと美味しいお酒があるってことですーっ!」

 そういってチェリがタツキの左腕にしがみ付く。

 ああ、柔らくてあたたかくて幸せ――、などと思う間もなく。


「さぁ、タツキ様、キリキリと出してくださ~い」

 酒を飲むとすぐ寝る少女のくせに、チェリがすごく楽しそうに追い込んでくる。


「え、ちょ、俺、ダンジョンマスター。ここで一番偉い人」

 などという、まぎれもない事実が通用するはずもなく。

「出すのです~」

「出しなさい~」

「出せ出せ~」

「一人増えたっ!?」

 左はチェリ、右になぜかサツキも参戦し、そして正面からエルローネに迫られて、ついにタツキは果ててしまったのだ。


「こ、これは、私がいたお店でも、お忍びの王族にしか供されたことのない…」

 その名も《真夜中の薔薇》。

 エルローネさん、興奮でお顔を薔薇のように真っ赤にして、豪奢な装飾のついたワイン瓶を、その形の良いお胸に抱き、何やらうわごとのように企業秘密(?)を漏らしておられる。


 てか、王族が来るほどすごいお店にいたんだねぇ。

 などとタツキが、半ば賢者モードで呆けていると、


「姉さん、がんばれーっ!」

 刀の柄に手を置いて、魔兵マギと、そしていつのまにかポーンを1体ずつ従えたクロベニが、宴と、そしてその余興となってしまった襲撃イベントに沸き立つ住人たちの間を、悠然とした足取りで歩いていく。


 野郎たちの声援と、ヒューヒューと鳴る指笛に、軽く右手を挙げて応えながら、

「お手並み拝見だな」

すでに門の後ろに陣取っているロベルトとすれ違うと、

「お任せを」

と、花咲くように微笑み返す。


 そして、

「「「ピギギーッ!!?」」」

 本能的に強者を感じ取ったのか、一瞬、動きに淀みを見せたボアたちの間を、地面のひと蹴りで閃光のように突き抜けて。


「また、つまらぬものを斬ってしまった」

 お約束なセリフとともに、3体まとめて両断してしまったのだ。

以前たくさん誤字報告をいただいた際(その節はありがとうございました)、エーテルとエリキシルとに、それぞれ意味を作ったにもかかわらず、まったく書き分けてないことに気づきました。

そのうち直します…。

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