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ダンジョンマスターと生贄の少女  作者: 緑 素直


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69:町の課題整理に、ダンジョンマスターは取り組む

「おっいも~、おっいも~!」

 お芋の歌を歌いながら、3歳児のように出来上がりを待つチェリ。


「はーい、お待たせ~! 出来立て芋とモンスター干し肉のジャーマンポテト風よ!」

 出来立ての芋という謎概念と、タツキには*****ポテトとなってしまう料理名称はともかく、本日のディナーは薬品系褒章の《モンスター干し肉》と鉱物探知で出てきた岩塩と、その辺に生えてた香草と、先ほど種芋から一気に育った芋を用いた前世風料理である。

 メインシェフはサツキだ。


「くぅっ、料理上手な嫁さん、いいなぁ。あこがれるなぁ」

 夕食に呼んだ、元盗賊団が羨望のまなざしをタツキに向ける。

 いや、嫁さんの筆頭候補は、あそこでフォークをグーで握って涎をたらしそうな顔をしている、アホ毛の3歳児なんですけどね。


「まぁ、料理上手には違いないか」

「ふふん、もっと褒めてのもいいのよ、おにい」

 ちなみに、我らがダンジョンチームの女性陣は、実はサツキ以外全員調理能力が怪しかったりする。

 おいしいものを目の前にすると3歳児に退行するチェリはもちろんのこと、娼館での生活が長く、なんでもそつなくこなす元高級娼婦のエルローネさんも、料理だけは習わなかったらしい。なお、ルートは材料に、体にいい薬草・香草系をふんだんに追加してしまいがちなタイプなので「できない枠」ではないが「お任せしづらい枠」となる。


「この技術はどこで習得されたのですか?」

 私にもぜひ教えていただきたく、と、エルローネが尋ねると、

「フフン、一人暮らしが長いとね、節約のためにいやでも身につくのよ…」

すん、とサツキの目から光が失われる。

 乾いた前世を思い出しているのか、投げやり棒読みである。


「いいじゃねーか。男を捕まえるにはまず胃袋をつかむってのは、古典的だが有効な戦術だぜ」

「「「むむっ!?」」」

 そんなロベルト談に、それぞれに思考を巡らせ始める他の女性陣。


「だから、そのお料理をふるまうチャンスはどうやって作ればいいのよ?」

 一方、やさぐれモードのサツキはロベルトに前世の悲哀をぶつけ始める。


「え? お前さん、今、ふるまってるだろ?」

 ロベルトが素直な疑問を口にすると、

「言い直すわ。《フリーでいい男》にお料理をふるまうチャンスは、どうやって作ればいいの?」

サツキは真剣な口調で問い直す。


「あー。あの辺はダメか? 多分フリーじゃね?」

 小声で元盗賊団の野郎3人を示すロベルトに、サツキはフルフルと首を横に振る。


「ま、まぁ、いい男基準ってのは、人それぞれだからなぁ」

 こいつ、単に理想が高すぎるだけじゃ…?

 などとは発言できず、ロベルトは苦笑いをするのだった。


***


「それでは、第1回ダンジョンタウン町内会を始める!」

 料理と酒(お昼時なので1杯だけ)がいきわたり、乾杯の発声を終え、皆が喉を潤したあたりでタツキが今日の本題へと入る。


 会場は作戦指令室、通称マオウ椅子の間である。

 背後にあったエリキシル容器、所謂ダンジョン・コアは、さすがに警備上の懸念があったため、タツキたちの生活スペースの、さらに深部の空間に移築した。


「さて、食べながら、飲みながらで良いので、俺が留守にしている間に感じたこのダンジョン・タウンの問題点をいろいろ聞かせてくれ」

 どデカいテーブルも、椅子の数も、ダンジョンマスターであるタツキの手にかかればどうとにでもなるので、現在はダンジョンチーム×5、元盗賊団の主要メンバー用×3の8脚構成、それにタツキのマオウ椅子×1 な状況である。


「あー、坊っちゃん。防衛上の問題もあると思うが、やはり正面玄関は必要だ」

 口火を切ったのは、伸び放題だった髭をきれいに整え、野生のヒグマから幾分文明人となったクマ顔のお頭、ヴォルドガングだ。

「木こり組の奴らが資材を運び込むのが大変でな。ただ、今の入り口も塞がずに裏口にしてくれると漁師組の奴らも助かる」

 そう言って彼は、ほくほくの芋と程よく火の通った干し肉を口の中に放り込んで、ピシッと固まると、

「う、うめぇ!」

 一心不乱に食べ始める。


「あらあら。お代わりいっぱいあるから、そんなに慌てなくていいわよ」

 自分が作った料理をうまそうに食ってくれる人を嫌う者はいない。時折むせながらも、あっという間に一皿を空にしたお頭に、サツキも楽しそうにお代わりを運んでくる。


 途中、「チェリちゃんも、お代わりいる?」「ふぁい! くらはい!!」な、やり取りもはさみつつ、

「そうだ。それがあったな」

と、タツキは正面玄関について考察する。


「木材はダンジョン内にないもんな。確かに木を抱えてあの入口階段を降りるのはつらい」

 ワタシ時代のタツキにとっては、防衛側有利のよくできた入り口だったのかもしれないが。


「以前からの懸案だったんだ――」

 眼前の、クマに餌付けする美少女、としか言いようのない光景をほほえましく見ながらタツキは返答する。ダンジョンから地下通路を通ってワナジーマへ。その往復は圧倒的に快適だが、指摘のとおり、このダンジョンの入り口拡張は手つかずのままだった。

 確か、解決には、同時に防衛力の強化が必須、というのが参謀(仮)のウォルフの進言であったはずだ。便利な出入り口は、住民のみならず、このダンジョンを害そうと考える輩にとっても便利に働くのだから。


「――門番候補と一緒に早急に検討するよ」

 しかし、あの時とは違い、今のタツキはランク9ダンジョンマスター。

 Sランクユニットすら召喚・使役可能な身の上でもある。さらに謎な専用魔技オリジナル万魔殿パンデモニウムの働きで、ファンタジーの有名所はだいたい呼び出せたりする。


 ゆえに、今ならどうとでもなる。

 なるが、町に入ったら、最強門番のドラゴンあたりがギャオスとお出迎えしてしまうと、誰も人が来ない恐怖の町になってしまうので、人選は殊の外慎重に行うべきだろう。


「はい、ほかなんかあるか?」 

「えっと、放置されている鉱石も、なんかもったいないっすよね」

 タツキの呼びかけに、農業組の青年が恐る恐る手を上げる。芋提供のお礼にご招待したのだ。


「あー…」

 タツキのパッシブ《鉱物探知》は常に仕事をしており、これまで掘削した空間に埋まっていた鉱物が、手つかずのまま放置されている状態だ。料理に使う岩塩と、軽くて価値のある魔石や、ごくまれに出現する宝石は回収しているが、鉄や銅、銀などを含んだ鉱石は掘削現場周辺に打ち捨てられていたりする。


「そっちは全然頭になかった。とりあえずグノーメ部隊を編成して回収だけはしておくことにするか。精錬とか、鍛冶とか、できる人いないよね?」


 全員が、そろって首を横に振るのを確認し、

「よし、じゃあ隅っこの方に鉱石保管用の建物を立てて、そこに鉱石ごとに分けて突っ込んでおくことにするよ」

ダンジョンタウンに新たな建造物が出現することとなった。

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