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伝説の聖具と呪われた大佐

「な、な、な!!!」


「ぐははははは! かかったな! それは30年前にリーグ優勝にバーサークしたファンが、そのバットの持ち主の助っ人外国人に似ているというだけで店から強奪、道頓堀に投げ込んだあの像だ!!! 以来、チームは18年間リーグ優勝を逃し続けたのだ! いかに救世主クラスの神器といえどもそれと対を成す呪具には勝てん!!!」


「ま、まさか! 2009年に川から見つかったはずでは」


「し、知っているのかマサやん」


「ああ。あれは大佐の像……やはり2009年に見つかったものは偽物だったか……」


 てめえらざっけんな!!!

 遊んでんじゃねえ!!!

 絶対後で仕返ししたる!!!

 そんな果たし合いに集中してない俺に呪いが絡みついてくる。

 ぬおおおおお!

 俺は必死に暴れるが、暴れれば暴れるほど呪いは俺の体を強く締め付けていく。


「ぐははははは! ソロモンの指輪よ! 貴様の魂を頂いたらそこの幽霊も神も喰らい尽くしてくれる!!!」


「お前! 紗菜は関係ないだろ!!!」


 ソロモンの指輪とか意味不明なことを悪魔が叫ぶ。

 つかマサやんだけは道連れにしたる!

 その間にも更に呪いは俺を締め付けていく。


「ぐっ! 動けねえ!!!」


「ぐはははトドメだ!!!」


 ライオンが大きく口を開け、俺の腹に噛みついた。

 俺の脇腹に牙が刺さり、くわえられ俺はそのまま振り回される。

 圧倒的な戦力差。

 人の身で悪魔に勝とうというのが間違いなのだ。

 だが……血を吐きながらもこのとき俺は勝利を確信した。



 ライオンに腹を噛みつかれ振り回される。

 俺の腹には牙が深く食い込み、振り回されたことでズタズタになっていた。

 だが俺は手放しそうになっているその意識を振り絞って術を起動する。

 ああ。

 神器があるからって手抜かりは無い。

 俺は卑怯な手を使ってでも勝つ!


「俺の勝ちだ……喰らえ! 涅槃経!!!」


 釈迦の入滅を記した経典、それが涅槃教。

 命の無いものや悪魔のような寿命の無いものを滅ぼす力を持つ。

 俺が起動した術に気合を入れると、経典がその力を発した。

 俺の腹に巻いた経典から浄化の炎が吹き出し、俺を縛っていた呪いはその炎の前に消滅、そして勢いを増した炎がライオンの口の中で爆発した。

 俺はぼろぼろに破壊された牙と一緒に口から吐き出される。


「どうだ! これが対ベリアルの奥の手だ!!!」


 そう言うと俺は芋虫のように這いながらトドメにかかる。

 うん。ちょっと死にかかってる。

 俺は背中のバックに入っていた聖書を取り出しながら言った。


「父と子と聖霊との御名によりて。アーメン」


 マサやんが組事務所を襲撃して手に入れた聖書。

 長い時を経て聖書自体が力を持つようになったものだ。

 これなら全く信仰心のない俺でも使う事ができる。

 祓魔式は最初の文章だけは覚えている。

 あとはこの本を読めば……


 ん?

 あれ?

 俺は鼻水を垂らした。



 なんか英語ですらない文字で書かれている。


 ……日本語じゃないだと!!!


※古代ギリシャ語



「おいどうした! 今がチャンスだ! 早く読め!!!」


 マサやんが無茶ブリをする。

 読めないって!

 なにこれ?

 マジで読めない!

 しかたない……

 うろ覚えで行くか……


「だ、だいてんしみかえるよ……」


 やっべー……これ以上思い出せない。

 そういや俺ちゃん暗記科目苦手だった!!!


「だ、だいてんしみかえるよ、その威光と……」


 もう思い出せない!!!


「その威光と……おっぱい……悪と我の戦いにおいて我を守りたまえ。えー……おっぱいいっぱい……」


「あれはなんだ?」


 マサやんが紗菜に聞いた。



「たぶん聖書読めなかったんです。だいすけくんアホの子ですから……」


 うるせー!!!

 こちらは必死なんだよ!!!

 と言いながら俺も不安だったので悪魔の様子を見る。


「ぐああああああああッ! やめろ! 中途半端に祓おうとするのはやめろおおおおおッ!」


 よっし!

 たぶん効いてる。


「やめろおおおおおおッ! やめ!」


 と思ったの束の間、急にライオンの顔が歪んだ。

 あれ?

 なんかおかしいぞ……

 異変に気づいたときはもう遅かった。

 ライオンがゴキゴキと音を立てながら変形していく。

 醜く、臭く、おぞましい肉塊に変形していった。

 あれ?

 俺ももしかしてなんか変なスイッチ押しちゃった?

 肉塊はどんどん増殖し、闘技場を埋め尽くしていく。


「あ、あれ?」


 あまりのことに俺が鼻水を垂らすと肉塊から声がしてくる。


「ユルサン……ユルサン……ゾ……ヤキブタども」


 とりあえず野球ファンに謝れ。

 土下座して謝れ!

 そう思ったとき肉塊が爆発的に増殖し、溢れる肉塊は俺の方になだれ込んできた。


「え? ちょっ!」


 俺の目に肉が見え、そして俺も肉の渦に飲み込まれた。



 肉の壁の中で意識を失った俺は今まさに押しつぶされようとしていた。

 死ぬまでにおっぱい(見苦しいので略)


「だいすけくん!」


 ああ。おっぱい。


「だいすけくん! 起きてください! 死んじゃいますよ!!!」


 そうだこういうときは辞世の句を詠まねば!!!

 でもとっさには浮かばないから丸ぱくりと。


 風さそふ 花よりもなほ 我はまた


 春の名残を いかにとやせん


 おっぱいもみたいにゃー


 よしッ!


「起きろ! このおバカ!」


 紗菜キックが身動きのできない俺に炸裂する。

 ふふふ!

 殴られても起きぬ!!!

 なぜなら我は死にかけてるからな!!!

 もういいよねパ●ラッシュ。

 もう寝てもいいよね!

 そんな俺に紗菜が静かに言った。


「……来月のおっぱいワールドの増刊号読めなくなりますよ」


 くわッ!

 俺の目がかっぴらく。

 死ねぬ!!!

 絶対に死ねぬ!!!

 まだ見ぬおっぱいが、太陽が、月が、地平線が俺を待っている!!!

 そして背中のサンスクリット文字が光る。

 これは俺が生まれたときからあるアザだ。

 このせいで俺がどんなに酷い目に遭ったか!

 幼稚園から小学校ではヤクザというあだ名をつけられ、なぜか中学校ではヤンキー扱いされて喧嘩三昧、高校は遠くの偏差値30台の教育困難校へ行ってリセットと思いきや霊が見えるようになってコミュ障コースへ……人生一発逆転有名大学に合格したと思ったら便所メシ……友達はルームメイトの幽霊だけ……

 ……あれ? 俺の人生詰んでるんじゃね?

 マジで詰んでるんじゃね?


 悲しみを覚えた俺の霊力が背中のアザによってブーストされる。

 信仰心がないため道具を使わなければ半人前以下の霊能者である俺。

 その俺のパワーだけが増幅されていった。

 俺は肉の中で手を動かし何か道具がないか探る。

 道具さえあればこの増幅されたパワーでなんとかなるはずだ!

 何か固いものが手に当たった。

 そうか!

 お前もまだ戦えるのか!

 バットと意思が繋がった俺の頭の中にバットの真の力を発揮するための真言(マントラ)が流れてくる。


 俺は手に増幅されたありったけの霊力を注ぎ込む。

 人間をなめるな悪魔。

 おっぱいいずギャラクシー!!!

 そして俺はバットの真の力を解放する言葉を唱える。


「オーキニ!!!」


 バットの力が解放され肉が吹き飛ぶ。

 俺は傷だらけの身体の最後の力を振り絞り、すべての霊力をバットへこめる。


「ナ、ナンダトオオオオオオオオッ!!!」


 肉塊が俺を押しつぶすために押し寄せる。

 だが俺は今度こそ本当に確信していた。

 今度こそ勝ったのだ。


「地獄に帰りやがれええええええええッ!」


 俺はバットを構え、そして強引に振りぬいた。


 かっきーん!



「なんでこうなった……」


 俺は自宅で四つん這いになって悩んでいた。


「うわー。ごしゅじんさますごいですー(棒)」


 ゴミを見るような視線を俺に叩きつけるのはリリム。

 なぜかライオンでも肉塊でもなく女体化してた。

 茶色い髪で生意気そうな顔の美女だ。

 しかもメイドだ。

 美女だが……正体の肉塊を知ってる俺としては全然欲情しない!!!

 でもメイドだ。

 男の子の心は複雑なのだ!

 うむメイドだ。


「はわわ(棒)」


 わざとらしくコケたリリムが包丁を俺に突き出しながら、突進してくる。

 俺はゴキブリのように手足を動かし慌ててそれを回避。

 死ぬ! マジで死ぬ!!!


「はわわー。ごしゅじんさますみませーん(棒) っち、このクズ器用にかわしやがった!」


 本音が漏れてるー!

 つか純粋な殺意を感じる。

 超怖い。

 やばいよ! やばいよ! やばいよ!


 えっとバー○様のバットで悪魔を退治した俺。

 ターンアンデッドで地獄へ強制送還かと思ったんだけど、なんか手違いがあったらしくリリムは俺の使い魔に……

 なんか俺の能力に秘密があるらしい。

 ソロモンの指輪とかいうやつ。

 あれですね。

 ~は仲間になりたそうな目でってやつですね。

 え? 強制やろが?

 知らんわ!

 俺悪くないもん!!!


 俺はリリムを見る。

 胸がない。

 普通、夢魔(サキュバス)とか淫魔っておっぱいデカいんじゃないの?

 期待してるみんなに謝れ!!!

 土下座して謝罪しろ!!!

 だがメイドだ。


「ごしゅじんさまー死ねばいいのにー」


 またもやメイドに悪意をぶつけられる。

 酷い!!!

 紗菜タスケテ!!!


「エロザルは話しかけないでください!」


 絶対零度の声が返ってきた。

 なんで怒ってるの?

 ねえ!!!


「はわわ。蚊がとんでますー(棒)」


 モーニングスターを持ったメイドが……え? モーニングスター?

 どこに隠してやがった!


「はわわ。あぶないご主人さまー(棒)」


 モーニングスターを振り回すメイド。

 すべてが俺の頭部を狙っている。

 うぎゃああああああああッ!

 紗菜さんタスケテ!!!


「死ね!」


 なんでー!!!

 俺悪くないでしょ!!!

 ねえ!

 俺悪くないよね!!!

 ねえ!

 なんで機嫌が悪いの!!!

 ねえってば!!!


「知らない!!!」


 なんでー!!!

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