カピバラたちの挽歌(ハト有り)
やばいよ!
やばいよ!
硝煙の煙。
吹き飛ぶしんぷ……じゃなくてヤクザ。
俺の気の早いブレインが頭の中で店じまいのために蛍の光を流しまくってる。
それもデスメタルアレンジ。
なにしてんのお前って?
マサやんとトラックでやってきたのはきょうか……じゃなくてキリスト組の事務所。
マサやんはその華麗なハンドルさばきで……突っ込んだ。
なぜか銃で武装しているキリスト組の人たち。
降りるなり問答無用でどこから出したのか二丁拳銃を構えてサイドダイブ&二丁拳銃乱射。
華麗なローリングで起き上がると、テーブル目がけてジャンプ、滑りながら銃乱射。
ヤクザが教会に殴り込みかけたそばにいる俺。人生最大のピンチ。
これだけで人生終了のお知らせなのね。
「ギャハハハハ!」
薬莢が飛び散る。
あ、鳩が飛んだ。
マサやんが好き放題暴れる後ろをコソコソついていくと書庫へついた。
なぜか警備が厳重だ。
「おっしゃ! だいすけ! そこの聖書と箱パクってこい! なあに俺が支援するから安心して逝ってこい」
ヤクザが俺にノーと言ったら殺すという視線を送る。
ヤクザが指さすその先には横腹の長いジュラルミンボックスと古びたやたら大きい本があった。
ノオオオオオオオォォォッ!!! 逝ってこいじゃねえかよ。
と抗議する度胸はないのでしかたなく俺は泣きながら飛び出す。
やっぱりヤクザが中で待ち構えている。
「このクソガキャー! 撃て! 撃つんだ! ハレルヤー!!!」
キリスト組の若いのがショットガンをぶっ放す。
うわああああああん!
ショットガン出したー!!!
泣きながら走る俺。
俺が通った場所の花瓶が吹き飛んだ。
「うみゃああああああああああッ!」
マサやんのバカー!
悪魔に殺される前にゴッドとその仲間たちに殺されてまうわ!
死んだら恨んでやる!!!
呪ってやる!
絶対にお前のピッコ○のおうちにドロップキックしかけてやる!
俺は泣きながらダイブ。
本と箱を取る。
「よしずらかるぞ!」
そう言うとマサやんが懐から何かを出した。って手榴弾!!!
白煙と爆発。
俺はバル○ンを焚かれた後のゴキブリのように死ぬ気で逃げる。
泣くぞ!!! 泣くからな!!!
うわああああああああん。
俺はマサやんの後を泣きながら追っていった。
「おし、いいタイミングだ。車が来たぞ!」
きょうか……じゃなくてキリスト組の事務所を出た俺たちを待っていたのは、牛車だった。
ただし巨大な顔面つき。
「おぼろ車やんけ!!!」
俺がツッコミを入れる。
「おー古い事知ってるな。だいすけ偉い偉い」
こなんもんが道を走ってたというのに道行く人は騒いでいない。
「あ、大丈夫だ。霊感のない人間にはポルシェに見えてるから」
いやだ!
なんの根拠もないけど絶対に酷い目に遭う!
「あ、キリスト組」
へ?
「おどりゃあボケェッ! 命取ったらー!!!」
武装した、しんぷ……じゃなくてキリスト組の若いのがショットガンを乱射する。
「どわあああああああああッ!」
マサやんが二丁拳銃をぶっ放す中、俺は死ぬ気でおぼろ車に乗り込んだ。
もういやだ……こんな生活。
あ、また鳩。
やな予感がするぞ!
「おし、この位でいいか」
マサやんがダイヤがゴテゴテついた金色のロレックスを見ている。
おい……やめろ……それはアカン……
マサやんが時計のリュージュを押し込む。
地響き&炎。
なにからだって?
言わせんなよ。
「うわああああああん! 犯罪者になっちゃったー!!!」
俺の泣き声が千代田区の空に響いた。
◇
「あー……だいすけくんが壊れましたね……」
俺は体育座りでブツブツと独り言を繰り返した。
ひどい。
ひどすぎる。
俺なにもやってないのに!!!
ぐすん。
そんな紗菜が俺の肩を叩く。
「仕方がないな……はい。世界おっぱい機構(World Tits Organization)公認写真集」
紗菜が俺に写真集を差し出す。
「どこに持っていたんだ?」とかは聞いたら負けに違いない。
「うん……グス。もう捨てない?」
「仕方ないのでこれは捨てません」
「……じゃあがんばる」
俺は写真集を抱きしめて言った。
負けないもん。
「お前ら……本気でバカだよな……」
「町中で銃撃戦をするマサやんには言われたくない!!!」
「銃撃戦? それは違うぞ! あれは激しい信仰力がそのように見えただけだ。その証拠にゴッド的な力でニュースになっていない」
嘘つくなこの野郎。
本当は銃撃戦をゴッド的な力で誤魔化しただけだろが!
騙されねえぞこの野郎。
俺のジト目に気づいたのかマサやんがわざとらしい咳をした。
「こほん。ということで、だいすけ! その箱を開けるのだ! 俺にはわかる。その箱の中には類い希な霊力を有した武器が入っているぞ!」
そういや箱取ってきたな。
俺はジュラルミンのケースを開ける。
中に入っていたのは……
「え? これなに? なんでこんなものが?」
紗菜が震える。
「1985……」
「え?」
「まさか……これは! だいすけくん! これは神器です!!!」
「神器?」
「ええ。神器です……ある意味ロンギヌスの槍よりも強力かもしれません」
俺はマサやんに目を向ける。
「俺も驚いている……あの……世界を滅ぼしかねない恐ろしい呪具が……まさか……」
「え?」
俺は全くわからない。
なんでこんなものが?
これになんの価値が?
「だいすけくん。その武器はかつてイスラエル軍をレバノンから撤退させ、ソ連いまのロシアを崩壊させた神器です。かつてナチスがチベットで押収した仏像を溶かして作られたと言われています。 ……噂ではその仏像は地球外の物質で作られているとか」
どうみても木製だが……
「まさか現存してるとは! これなら悪魔を討ち滅ぼすことも可能かもしれない……くッ! キリスト組め! こんな恐ろしいモノを隠し持っているとは!」
俺は一人話題について行けずに首を傾げた。
だってこれってどう見ても……