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農業してました。

さて、私が異世界トリップなどをやらかしてから、十年の月日が流れた。

…もっきゅもっきゅと朝食の納豆がけご飯を食べながら、窓から見える一年ぶりの日食を眺めつつ思った。

ああ、一年たったんだなぁ…

私ももう、三十歳なのだなぁ…orz

………と。


早朝の日食が終わり、太陽の光に水田がキラキラと輝く。

この国では元は雑草だった『お米』は、今ではこの村の特産品だ。

いや、どこにも特産してないけど(笑)

「マリアちゃんおはよう、今年もよろしくね」

「あ、シダさんおはようございます」

着物の裾を帯に挟みこんで、襷をかければ準備はオッケー

皆で一斉に稲の束を放り投げて、ある程度は腰籠に突っ込んで

今年も田植えの始まりである。


うん、まるっきり田舎の風景だよね。

古き良き日本の。

でもここは異世界である。

お隣のシダさんも、お手伝いにと集まった村人たちも、日本人にはあり得ない艶やかな緑の髪に薄緑の瞳をしている。

十年前は、彼らの白い肌は灰色に濁り、髪も目もちょっと腐った藻のような色合いだった。

この世界の人間は、環境や精神に影響を受けやすいらしい。

勿論そんなことは知らなかったが、とにかくガリッガリッに痩せ衰えて今にも死にそうな人達に、トリップした所が人里離れた山の中だったために、半年ほどサバイバルしていて色々限界だったはずの私は助けと保護を求める前に、彼らを助けなきゃっ!と、枯れて乾燥してた雑草を刈り取り脱穀…臼はあったから…ともかく米と山の中でお金と変えられるかなと拾ってきた岩塩、あと食べられる草で七草粥っぽいものを大量に作って彼らに食わしたのである。

最初にあった彼らは無気力で、私が来たことにも村の物を勝手に使って何やらしているのにも無反応だったが、食べ物の匂いにまるでゾンビのように集まりソレを口にしてくれた。

……ちなみに言葉は通じなかった…が、涙を流して…ついでに濁ってた色もどんどん変えながら、彼らは美味しい美味しい、ありがとうありがとうと繰り返していた…らしい。

私はとにかく七草粥っぽいものの配給で大変だったわ。

のちに言葉を覚えて聞いた所、年々麦の収穫が減り湿地帯の開墾は失敗し、村は借金と飢餓で首が回らない状態だった…更には三年ほど前から領主が代替わりして税が跳ねあがり、とうとう今年はほとんどの収穫が税と借金の取り立てに持って行かれ…皆で死を待つばかりの状態だったらしい。

…うん、本当に死にそうだったもんね…

さて、私が半年もサバイバルで生き残れたのは、異世界トリップに付きものの特殊技能チートが備わっていたからだ。

それは…食物鑑定!

大抵の物が、食えるか食えないか分かるという能力だ!

あ、あの木の実は焼けば食えるなぁ…とか

あっちは生でもオッケー、むしろ生の方が美味しいけど食べ頃は明後日くらいよ…とか

このキノコは毒~とか

応用としては味噌を作りたいなぁと思えば何となく作り方が分かる…みたいな?何となくなんで結構思考錯誤したけど…

……物凄くありがたい能力だったっ

チートという響きとは何だかちょっとずれてる感じだったが。

そうして十年、村は蘇った。

なぜか日本の田舎風に(笑)


人口六十人ほどの小さな…たぶん廃村扱いの…だって税の取り立てがこない(笑)…の、小さな村で三十路に突入した元大学生は、皆でほのぼのと自給自足生活をして生き抜いていた。

変化することのない肌色や髪、目の色…十年たっても変わらない容姿に、夜と月の精霊に愛された巫女という誤解を密かに村人から受けつつ……

搾取することしかしなかった馬鹿ボン領主が国の監査で首ちょんぱされ、新しい領主の部下が十年前に滅びたはずの村の調査に来るその日まで。



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