オープニング
「あぶねぇな!どけろって言ってんだよ!全くどこ みてやがるんだ!…」
「ひぃ…すっすいません!」
俺は魔法帝国―いや、フィルア王国と言うべきかな ?まぁ俺はこの国の住民だ。名前はレイ。
「おい!聞いてんのか!?」
「ふぇ?…あっと…はい!」
「ったく…」
俺は華麗な魔法で馬車にはねられかけた哀れな少年 を助けるわけだ。うん。 ―だが、馬車にはねられた哀れな少年がまさか自分 とは思いたくない…
「お前、名前は?」
「レイです…」
「女みたいな名前だな。…まあいい、次からは気を つけろよ!」
「…はい…」
危機脱出か…後ろで笑うヤツがいるとは思いたくな いのだが…
「怒鳴られてやんの」
嫌味ったらしいこいつはアーヴ。青い髪に漆黒の目 だ。孤児のアーヴには親がいない。
「レイもちょっと気を付けなよ?…サルト…」
回復魔法が得意で物静かなテルス。体が弱く幼い頃 に病気になり白髪になったらしい。白髪には似合わ ない真っ赤な目をしている。テルスの魔法でさっき はねられたときに出来た擦り傷があっというまに消 えた。
「ありがと!テルス。いつみてもお前の回復魔法は すげぇな!」
「…そんなこと…ないよ…」
「テルス、こいつにしてやる必要性なんてないぜ? 」
「あんだと?アーヴ!」
アーヴにケンカをかけようとしたがテルスに止められた。
和やかな昼下がり。あの事件がこんな滑稽な日から 始まる。
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