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第一幕 始まりとは例外なく唐突なのである
春、出会いと別れの季節である。
少しずつ気温も上がり始め、心なしか道行く人の表情も晴れやかに見える。
道端に植えられた桜は朝露に濡れ、味気ない通学路に文字通りの花を添えていた。
しかし、オレこと榊原七一も爽やかな微笑みを顔面に貼り付けれるかと言えばそうではない。
寧ろ夏の暑さに耐えるような、苦々しい表情を浮かべているのだ。
ちくしょう!朝日が眩しいなぁ!
本日は始業式、天気は快晴、現在時刻八時半。
因みにオレは今日から高2の転校生。
転校早々遅刻というのは(青春ポイント的に)大幅な減点対象なのだ。
そんな中オレは遂に晴れ晴れとした顔をしながら、新しき季節に心をフラメンコさせているのである。
「道わかんねぇ……」
道を他人に訊けないのは、世界中の男に当てはまる遺伝子レベルの悪癖らしい。
結局、西中高校に辿り着いたのは一時間後、丁度始業式が終わった時間になるのだった。
大幅な改稿です