欲しがり妹ラーメンでスパダリが誕生した話
「欲しーの!欲しーの!お客様欲しーの!」
俺はサラリーマンの山下。休日近所を散歩していたら、外国人のドレスを着た幼女がラーメン屋の前で客引きをしていた。日本語を話していやがる。
何だ。新しくできたのか?
いや、幻覚だろう。最近、残業で疲れているのか・・・
迷子かもしれない。声かけでもしてみようか?
「お嬢ちゃん。親御さんは?」
「いらっしゃいませなのー!お客様、新規一名なの~!」
「えっ!」
無理矢理手を引かれて店内に入った。
店に入ったら。
「食券欲しーの!食券欲しーの!」
券売機で買えと言うことか?
「な?イチゴラーメン?で1500円!」
高い。キワモノだ。逃げようと思ったら・・・
「グスン、グスン、お兄様、買わないの?」
青い目をウルウルして見てくる。子供なのに情に訴えてくるが妙に熟練している。
しかたなく買った。
「イチゴラーメンなの!」
「ああ、どうも・・・」
スープはイチゴの色だ・・・チャーシューの代わりにイチゴが乗っている。
醤油味で食べられないことはない。
「ごちそうさま・・・」
「また、来るの~!」
それから、次の週も店の前を通ったら。
「お客様なの~」
金髪をなびかせ走って俺にかけより手を引く。
思わず真剣に話しかけた。
「君、客来ないでしょう?」
「グスン、ズルいの~」
「ズルくない。資本主義だ」
「この国は王政なの~」
「いや、天皇陛下がいるが、そうではない」
困った。唯一の女の知り合いに相談した。
幼なじみだ。ネット小説を書いているらしい。
・・・・・・・・・・・・・
近くのフェミレスで約束をした。幼女の名はメリーと言うらしい。
「ウホー!金髪幼女でござる!」
「おい、赤城、涎たらすな!」
女なのに可愛いものに目がない。いや、そうだが、方向性が違う。
ボサ髪で眼鏡をかけている。
「メリーはイチゴパフェ欲しーの~」
「はい、タブレットのここだ・・」
俺は話した。不思議な幼女の事を・・・
「近所の人に聞いたが、いつからいるのか分からない。親御さんの姿が全く見えないのだ」
「営業許可とか町内会の会長が通したらしい。まあ、町内会長名義だな」
「田中さんなり。過去食堂を営業していたなり。田中さんの元食堂なり」
「町内会長の田中さん。知らない内に書いてしまったとか言っていたな」
「イチゴパフェお待ちどう様です」
「こっちなの~」
「不思議なり・・・」
「メリーは罰でこの世界で来たの。働かなければいけない魔法がかかっているの~」
「なあ、不思議ちゃんだろ?」
「メリーは本当の事を言っているの。お姉様の物欲しがってスパダリに断罪されたの」
「これは欲しがり妹の罰なり。ざまぁをされた後の事なり!」
「意味がわからん・・・」
「多くの欲しがり妹は罰を受けるなり!・・・」
「修道院送りで良い方、殺されるか。馬鹿王子と一緒に平民暮らしなり。
反省して姉と仲直りする話は皆無なり。
メリーちゃんはこの日本でずっと1人ぼっちなり」
「この子が欲しがり妹なら姉がいると言うのか?」
「ヒロインは姉なり。スパダリやヒーローと結ばれるなり」
この子が欲しがり妹?よく分からない。
メリーに話しかけた。
「どうしてラーメンをやろうと思ったの?」
「参入障壁が低いの~」
「その分、生き残り競争が激しいよ・・・何故、イチゴで?」
「家族でイチゴ狩りをしたの。楽しかったの・・・」
「ウホホホホー!メリーちゃん。頬ずりさせるなり!」
「あ、赤城、おごる。また後でな」
店を出た。
☆☆☆
どうせ、運命を変えられないのなら、少しはマシにしよう。
店内に『イチゴパフェ始めました』『イチゴアイス始めました』
との張り紙を貼った。
客は来るようになった。
「「「キャア、キャア」」」
「「「ウフフフフフフフ」」」
キャハウフフフの女子中学生高校生達だ。
「お待たせしましたの~」
「キャア、メリーちゃん可愛!」
「ロリがロリコスしているわ」
ラーメンは時々物好きが注文するくらいだ。
もう、ラーメンと俺の出番はない。
去ろうとしたら、電柱の陰に外国人がいた。女でドレスを着ている。
心なしかメリーと似ている。電柱に手をかけ。顔の半分を出してメリーの店をのぞいていた。
「グスン、また、メリーばっかり・・・」
だから声をかけた。
「メリーの家族の方ですか?」
令嬢はビクンと体を震わせた。
「ヒィ、黒髪人・・・」
「いや、黒髪だけど・」
話を聞いた。
こういった話は河川敷だ。ベンチに座りコーヒーを渡して話を聞いた。
夕日が眩しい時間帯だ。
「グスン、グスン・・・あの子末っ子だから親に猫可愛がりされて・・・」
「欲しがると親が何でも買ってあげるようになったの」
「ほお、そりゃ親が悪いな」
「私の物も欲しがって、親は『お姉様なのだからあげなさい』というのよ」
「そりゃ、ヒドい」
「でね。爵位もメリーに婿を取って譲るとか言い出して、私の婚約者は怒って去ったのよ・・・」
「最低の男だな」
それでね。私は家にいたくなくて、外に出たのよ・・・
喫茶店で働いていたら・・・常連さんと仲良くなって、平民だと思ったら王子殿下だったの。
王子殿下に求婚されたわ。
家の事情を話したらね。親とメリーを断罪して、メリーはニホーンに島流しになったの。
「ほお、ほお、良かったじゃないか?王子と幸せになればいいじゃないか?」
「グスン、私は伯爵家の娘、何もかも違いすぎるわ。陛下も王妃殿下も他の王子王女も善い人だけども、生活レベルが違いすぎて・・・いたたまれないの。王太后は優しいけど、ジィと所作をみられている感じがして・・・」
「そりゃ、大変だ」
・・・何だ。物語なら幸せに暮らしましたとなるが、そうか、英国王室も何かドロドロしているな。元ハリウッド女優が王族と結婚したが・・・まあ、いろいろ報道されている。
スペイン王室はニュースキャスターの才媛、日本なら外務省出身の超エリートの女史でも苦労している。
まだ、十代の女の子にいきなり王族の婚約者はキツいのか?
「グスン、少し時間をおきたいといってメアリーはどうなっているか見に来たら、楽しそうですわ・・」
「違うだろ。本当は仲直りしたいんじゃーないか?」
「えっ、そんなこと・・・」
「でも、親御さんが亡くなったら、唯一の身内になるぜ。・・・仲直りしなくても、不満をぶつけてみたらいいじゃないか?」
「でも・・」
「決めたら即行動だ」
手を引き無理矢理引き合わせた。
「いらっしゃいませ・・・なの?」
「メリー」
「お姉様・・・」
2人は抱き合った。
「ごめんなさい。お姉様、ごめんなさいなの~」
「いいの・・・とは言えないわ。でも、少し時間を頂戴ね」
その後、お姉さんはメリーの店で働き出した。
お姉さんは喫茶店で働いていたからか?
メニューに飲み物や軽食が増えた。
ラーメン屋だけど、喫茶店として繁盛しているな。もはやラーメン屋ではないだろう。
お姉さんがコーヒーや紅茶も入れる係でメリーが給仕だ。
俺は店の外から見守る・・・
「タツキ様!」
気がつかれた。
お姉さんが手を振ってくれる。
俺も恥ずかしながら手を軽く振った。
いいな。やっぱり仲良し姉妹は良い。
ゆっくり考えればいいさ。
コーヒーでも飲もうかと思ったが・・・
ピーポー!ピーポー!ピーポー!
サイレン音がする。
警察官だ・・・
「貴方が保護者ですね!労働基準法56条違反の容疑があります。署まで来て下さい」
「え、衛兵隊?」
「任意ですが、令状が出ますよ・・」
「お姉様!グスン!」
「もう大丈夫よ。行きましょう!」
お姉さんは男の警察官に連行され。
メリーの方は女性警察官に手を引かれて、何か幼稚園のバスのように、可愛い動物がプリントされているワゴン車に乗せられた・・・・。児童相談所行きか・・・
つくづくお姉さんは不幸体質だな。
あ、その後?
俺が身許引受人になって・・・
「タツキ様、いってらっしゃい」
「ああ・・・」
「お義兄様、いってらっしゃいませなの~」
「ああ・・・」
何故か一緒に暮らしている。店はお姉さんの方が営業している。
そう言えば・・・ネットの異世界恋愛のヒロインは優しくされるとすぐに惚れると云う・・・
もしかして、スパダリになってしまったのか?
と思う俺がいた。
最後までお読み頂き有難うございました。




