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破壊神、美ショタに転生する〜我の日常を脅かす火の粉は、神の権能ですべて塵に帰す〜  作者: 十目 イチ


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第14話 アイゼン砦の断頭台(前編)

 北の空が、不気味な赤紫色の魔力雲に覆われていた。

 

 アステミア王国北端の要衝、アイゼン砦。切り立った断崖に築かれたその鉄壁の要塞に、ファルバラ帝国の『魔獣兵団』が黒い津波となって押し寄せていた。


「総員、配置を乱すな。魔導回路の同調率を維持せよ。……無能な死は、我が軍の美しさを汚すのみだ」


 砦の司令塔。

 指揮を執るのは、重厚な甲冑の上から真っ白なマントを羽織った男、ギリアムである。彼は冷徹なまでの知性と圧倒的な魔力を兼ね備えたエリート魔導騎士だ。

 その手には白銀の細剣と、精密な幾何学模様が刻まれた魔導杖が握られている。

 その魔導杖を掲げ、帝国が展開する『魔獣兵団』の配置を探り、王国軍の最適解を分析していく。


「ギリアム隊長! 西翼の第三防壁、魔導障壁が限界です! 帝国の『鱗甲アイアン・ラング』が取り付きました!」


 伝令の声にギリアムは眉一つ動かさない。彼は流麗な所作で魔導杖を振るった。

 

「……再計算。座標204に、重力偏向グラビティ・ティルト


 刹那、砦の壁を登っていた数十体の魔獣が、まるで巨大な不可視の掌に叩きつけられたかのように地面へと叩き落とされた。

 一寸の狂いもない魔力制御と魔法行使。それこそが、王国軍最強のエリート、ギリアムの本領である。


「隊長、次は俺が行きます! 全快一歩手前ですが、この程度の乱戦に遅れは取りません!」


 傍らで身を乗り出したのは、グリハンだ。彼はギリアムの厳格な指導のもと、怪我を抱えながらもこの死地へと戻ってきていた。


「グリハン……。ふむ、戦場の泥にまみれて少しはマシな面構えになったな。分かった。許可する。露払いを任せよう」

「了解です!」


 二人の眼下、帝国軍の本陣から一際巨大な「影」が飛び出した。

 それは、四枚の翼を持つ合成魔獣キメラとその背に跨った一人の『魔獣使い』だった。


「ククク……相変わらずアステミアの魔導騎士は計算高さだけがお得意のようだ。……甘いな。高い所で傍観するだけで我ら『魔獣兵団』の攻撃を凌げるはずなかろうて」


 男の名は、ゼノス・ヴァン・ドレイク。

 ファルバラ帝国魔獣将校の一人であり、数々の戦場を血の海に変えてきた「葬儀人」の異名を持つ男だ。彼は黒い軍服を纏い、冷徹な目で眼下のアイゼン砦の司令塔を見下ろしている。


「……掃き溜めの鼠ども。我が『黒死鳥コクシチョウ』の餌食となれ」


 ゼノスが指先を振るうと、彼が連れてきた数百の飛行魔獣が一斉に急降下を開始した。それに対し、ギリアムは冷静に細剣を天に掲げた。


「……迎撃。多重展開・術式:星屑のスターダスト・レイン


 砦の全域に仕込まれていた魔術陣から、数百の小さな光弾が展開される。ゼノスの魔獣と、ギリアムの術式で発射された光弾が空中で激しく衝突し、アイゼン砦の空は爆炎と悲鳴に包まれた。


◇◇◇


「……全く。不敬にもほどがあるな」


 高度三千メートル。薄い空気の中、ラオは昨夜の「飛翔」の反省を活かし、因果を強引に固定することで、空中に「座って」いた。

 その膝の上には、リオラが持たせてくれた「特製クリームパフ」の包みがある。


「あの完璧主義の眼鏡ギリアムも、我の食事を平穏に運ぶための駒だ。……あのような黒い羽虫ゼノスに、勝手に盤面を荒らされては困る」


 ラオはパフを一口かじり、甘美なクリームを味わいながら、戦場全体を「盤面」として眺めた。


「さて。神が直々に手を下すまでもない。……小ヌルい物理法則を、少々書き換えてやるとしよう」


 ラオは、眼下で冷静に指揮を執るギリアムたちの頭上に向けて、人差し指をスッと向けた。

 直接的な破壊魔法を使えば、砦ごと消滅し、自分の正体がバレてしまう。ラオが狙ったのは、ギリアムが展開している「術式の効率」だった。


「――因果の最適化オプティマイズ。0を1に、1を無限に」


 パチン、と小さな音が空に響く。

 

 その瞬間、ギリアムが放っていた迎撃魔術が、光弾の動きが突如として変質した。


「……!? なんだ、この術式の安定感は……!? 魔力の減衰が……完全に止まった……!?」


 ギリアムが驚愕に目を見開く。彼が放った「星屑の雨」の一発一発が、まるで核を持つかのように輝きを増し、自動的に眼前に展開する敵の急所へと誘導され始めたのだ。


「ぐっ……!? 回避不能だと!? アステミアの術式が、これほど精密なはずが……!」

 ゼノスが眉を顰めた。彼の予想を遥かに超える「精度」で、飛行する帝国の『黒死鳥』たちが次々と撃墜されていく。


「理由は不明だが……。今の私の術式なら、あのキメラ(ゼノス)を堕とせる。グリハン! 突撃の準備をせよ! これより反撃に転じる!」


 ギリアムの号令が響き、王国軍の士気が爆発的に跳ね上がった。

 ラオは空の上で、満足げにパフの最後の一欠片を口に放り込んだ。


「……フン。これくらいで、我の静寂が守れると思うなよ、人間ども。……さて、あの黒い羽虫。我の夕食の時間を邪魔した罪、高くつくぞ」


 ラオの視線が、余裕を失い始めたゼノスへと固定された。


(後編へ続く)

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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