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転生した破壊神、限界孤児院の守護神(美ショタ)になる〜小ヌルい日常を脅かす火の粉は、神の権能ですべて塵に帰す〜  作者: 十目 イチ


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第11話 令嬢シャルロッテの猛烈看病(※大惨事)

「グリハン様ぁ! ああ、その青白いお顔……! まるで磨き上げられた大理石のようですわ! でも大丈夫ですわよ、このシャルロッテ・ド・パンペルムースが、地獄の果てからでも貴方様を引き戻して差し上げますわ!」


 教会の礼拝堂に、今日も今日とてシャルロッテの高らかな(物理的にうるさい)宣言が轟いた。

 

 寝台で深い睡眠から覚醒したばかりのグリハンは、目の前で金色の縦ロールを激しく揺らす令嬢を見て、一瞬天国に召されたかと思った。


「……シャ、シャルロッテ様……。なぜ、ここに……」

「なぜ、とは冷たいお言葉! 愛ゆえに決まっておりますわ! さあ、まずは我がパンペルムース家に伝わる『秘伝の滋養強壮薬』を召し上がれ!」


 シャルロッテが銀のさじで突き出したのは、どす黒い紫色をした、ドロドロの液体だった。

 グリハンの顔が、戦場での負傷時よりも一際青ざめる。


「……それ、本当に、薬……?」

「失礼な! ドラゴンの肝と千年の苔、それから私の愛情をたっぷり三時間煮込んだ特製ですわよ! ほら、あーんですわ、あーん!」

「……小ヌルい。小ヌルすぎるぞ、シャル子」


 柱の影から、不機嫌そうなラオがぬっと顔を出した。

 

「そんな『物理的な毒物』を食わせれば、この男は魔獣に殺される前に、貴様の愛情(という名の劇物)で概念から消滅するぞ」

「なんですってぇ!? え? でもそれって私の愛情が深いということかしら? ところでラオ君……貴方もグリハン様の看病を手伝いに? 感心ですわね、ご褒美に縦ロールを少〜しだけ触らせてあげてもよろしくてよ?」

「断る。貴様のその頭、見るたびに脂っこい菓子を思い出して反吐が出る」

「な、ななな……! 相変わらず生意気な口を! いいですわ、ラオ君にはこの薬の効能を理解する知性が足りないようですものね!」


 シャルロッテが再びグリハンに迫る。

 

「さあ、グリハン様! 一口飲めば、たちまち力が漲り、魔獣の群れを一人で壊滅させられるようになりますわ!」

「……助けて、ラオ……」

 

 グリハンの助けを求める視線を受け、ラオは深くため息をついた。

 

「……やれやれ。我の『散歩』の成果を、こんな女の毒物もどきに台無しにされては堪らん」


 ラオが指先でパチンと音を鳴らした。

 刹那。

 シャルロッテが持っていた銀のさじの中身が、一瞬にして『爽やかな風味のリンゴジュース』に書き換えられた。


「……あら? なんだか急に、色が透明に……? これがパンペルムース家秘伝の『真の覚醒』ですのね! さあ、今度こそ召し上がれ!」


 強引に口へ流し込まれたグリハンは、予想外の爽快な味に「……うまい」と涙を流した。

 それを見たシャルロッテは「やはり私の愛の勝利ですわーッ!」と、礼拝堂でオホホホと勝利の舞を踊り始める。

 そこへ、山盛りの洗濯物を抱えたリオラがやってきた。

 

「シャルロッテ様、あまり騒ぐと他の兵士さんたちの迷惑になりますよ。それより、もしお手すきでしたらあちらの兵士さんたちの背中の包帯、貼り替えるのをお手伝いいただけますか?」

「私が!? 名門パンペルムース家の令嬢であるこの私が、汗臭い男たちの背中に触れると……!?」

 

 シャルロッテは露骨に嫌な顔をしたが、リオラの「グリハン様も、仲間の皆さんが早く良くなれば安心されるでしょうねぇ」という天然の追い打ちに、ガタガタと震えながら頷いた。


「……くっ、やりますわ! やればいいんでしょう! グリハン様のためですもの!」


 しかし、いざ包帯を巻こうとすると、シャルロッテの「過保護」と「不器用」が炸裂した。

 

「きゃっ! この方、血が出てますわ! 不潔、不潔ですわーッ! もっと厚く、もっと厳重に巻かなければ!」


 数分後。

 そこには、頭から爪先までミイラのようにグルグル巻きにされ、身動き一つ取れなくなった兵士の姿があった。

 

「……あ、あの、お嬢様……苦しいです……」

「黙りなさい! これは私の愛の重厚防壁レイヤーですわ! 一分の隙もあってはなりませんのよ!」


「……小ヌルい。いや、もはやただの嫌がらせだな、あれは」

 

 ラオは、ミイラ化した兵士を見て、憐れみの目を向けた。

 さらに、孤児たちがシャルロッテの豪華なドレスの裾を掴んで遊び始める。

 

「お姉ちゃん! このキラキラしたやつ、取っていい?」

「ダメですわ! それは本物のサファイア……ああっ! 引っ張らないで! 私のウエストが、ウエストが絞まりすぎて内臓が破壊されますわーッ!……ゔぇぶっ」

「あ、お姉ちゃんが変な声出した!」

「ラオ兄ちゃん、お姉ちゃんが苦しそうだよ?」


 子供たちに囲まれ、リオラに洗濯を促され、グリハンには「……少し静かにしてほしい」と苦笑いされる。

 王都では誰もが畏怖する高慢令嬢シャルロッテも、この教会では「ちょっと賑やかで扱いやすいおもちゃ」に成り下がっていた。


 ◇◇

 

 夕方。

 嵐のような看病(?)を終え、疲れ果てて馬車に乗り込むシャルロッテ。

 

「……はぁ。疲れましたわ……。でも、グリハン様のあの美味しそうに薬を飲んだ顔……。明日も明後日も毎日作って差し上げますわ!」


 懲りない捨て台詞を残して去っていく馬車を見送りながら、ラオは静かに呟いた。

 

「……おい、リオラ。明日のグリハンの食事は、我の毒見を通せ。さもなくばこの国から一人の兵士が胃袋の崩壊によって消滅することになる」

「ふふ、ラオ君。本当に優しいんだから」

「……不敬なり。叩き潰すぞ」


 破壊神の保護下にある教会の平和は、今日も令嬢の絶叫と子供たちの笑い声によって守られていた。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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