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最終章 それぞれの春


 学園の門が

 静かに

 閉じられる日。


 マーガレットは、

 振り返らなかった。


 荷は、

 少ない。


 けれど、

 背中は

 以前より

 まっすぐ

 だった。


「……

 さようなら」


 誰にも

 向けない

 その言葉は、

 自分自身への

 別れだった。


 彼女は

 去った。


 逃げるためでは

 ない。


 変わるために。


 *


 数週間後。


 学園は、

 静けさを

 取り戻していた。


 噂は

 消え、

 名前は

 正しく

 呼ばれるように

 なった。


 エリシアは、

 図書室で

 本を

 整理していた。


 誰かに

 頼まれた

 わけではない。


 ただ、

 ここに

 いたかった。


「……

 探した」


 その声に、

 胸が

 跳ねる。


 振り返ると、

 アルフレドが

 立っていた。


 以前と

 同じ

 穏やかな

 表情。


 けれど、

 どこか

 覚悟を

 帯びている。


「王子……」


「今日は、

 ただの

 アルフレドだ」


 そう言って、

 一歩

 近づく。


「少し、

 話せる?」


「……

 はい」


 二人は

 並んで

 窓際に

 立った。


 外では、

 春の風が

 木々を

 揺らしている。


「マーガレットから

 手紙が

 来た」


 アルフレドは

 そう

 切り出した。


「今は、

 地方で

 学び直して

 いるそうだ」


「……

 そうですか」


「彼女は、

 変わろうと

 している」


 エリシアは

 静かに

 頷いた。


「それで……

 私は、

 考えた」


 アルフレドは

 深く

 息を

 吸う。


「王子としての

 役目。

 人としての

 願い」


 視線が、

 まっすぐ

 エリシアを

 捉える。


「私は、

 選びたい」


 胸が

 強く

 脈打つ。


「君と

 共に

 歩む

 未来を」


 言葉は、

 はっきり

 していた。


 逃げも、

 曖昧さも

 ない。


「……

 それは」


 エリシアは

 唇を

 噛む。


「重い

 道です」


「わかっている」


「簡単では

 ありません」


「承知している」


 それでも、

 彼は

 笑った。


「それでも、

 君が

 いい」


 視界が

 滲む。


「私は……

 特別な

 力も

 身分も

 ありません」


「知っている」


「守って

 もらう

 ばかりの

 存在に

 なりたく

 ありません」


 アルフレドは

 一瞬

 考え、

 答えた。


「では、

 隣に

 立ってほしい」


「守られる

 のではなく、

 一緒に

 悩み、

 一緒に

 選ぶ」


 その言葉に、

 涙が

 こぼれた。


「……

 ずるい

 です」


「そうかも

 しれない」


 彼は

 そっと

 手を

 差し出す。


「だが、

 本心だ」


 エリシアは、

 その手を

 見つめ、

 そして

 握った。


「……

 私も」


 声は、

 震えていた。


「あなたと

 歩きたい」


 春の光が、

 二人を

 包む。


 遠くで、

 鐘が

 鳴った。


 それは、

 始まりの

 音だった。


 *


 数年後。


 王都の

 庭園。


 穏やかな

 午後。


 エリシアは

 本を

 閉じ、

 隣を見る。


「……

 静かですね」


「ああ」


 アルフレドは

 微笑む。


「だから、

 いい」


 二人の

 手は

 重なっていた。


 誰かを

 悪役に

 しなくても、

 物語は

 終われる。


 選び合い、

 理解し、

 進む。


 それが、

 この世界の

 答えだった。


 春は、

 何度でも

 訪れる。


 そして、

 二人は

 そのたびに

 手を

 取り合う。


 ――

 これは、

 救われた

 三人の

 物語。


 そして、

 本当の

 恋の

 結末。


 【完】


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