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第5章 王子の選択


 その朝、

 学園は

 ざわめいて

 いた。


 噂は、

 いつもより

 早く、

 広く

 広がっていた。


「聞いた?」

「マーガレット様が……」

「王子に、

 直訴したって」


 エリシアは

 中庭の

 隅で、

 その声を

 聞いていた。


 胸が、

 ざわつく。


 理由は、

 わかっていた。


 けれど、

 考えない

 ように

 していた。


「エリシア」


 呼ばれて

 振り返ると、

 アルフレドが

 立っていた。


 その表情は、

 いつもより

 硬い。


「少し、

 時間を

 もらえる?」


「……

 はい」


 二人は

 人目を

 避け、

 回廊の

 奥へ

 向かった。


 沈黙が、

 重い。


「……

 書状を

 受け取った」


 アルフレドは

 立ち止まり、

 そう

 切り出した。


「マーガレットから

 だ」


 エリシアの

 喉が、

 鳴る。


「すべて、

 書いてあった」


 噂の

 発端。


 意図的な

 孤立。


 自分の

 弱さ。


「……

 正直、

 驚いた」


 アルフレドは

 言葉を

 選ぶ

 ように

 続けた。


「だが、

 同時に

 理解も

 した」


 エリシアは

 何も

 言えなかった。


 ただ、

 彼の

 言葉を

 待った。


「彼女は、

 悪意だけで

 動いて

 いたわけじゃ

 ない」


「……

 それは」


 思わず、

 声が

 出る。


「わかっています」


 自分でも

 驚くほど、

 静かな

 声だった。


「怖かった

 だけだと

 思います」


 アルフレドは

 目を

 見開いた。


「君は、

 それでも

 彼女を

 庇うのか」


「庇っては

 いません」


 エリシアは

 首を

 振る。


「でも……

 理解しようと

 しただけです」


 アルフレドは

 小さく

 息を

 吐いた。


「君は、

 本当に

 不思議だ」


 その声に、

 責める

 響きは

 なかった。


「私は、

 王子だ」


 唐突に、

 彼は

 言った。


「選ばなければ

 ならない

 立場に

 いる」


 視線が、

 遠くを

 見る。


「秩序か、

 感情か。

 正しさか、

 優しさか」


 エリシアの

 胸が

 痛む。


「……

 私は」


 彼は、

 ゆっくりと

 エリシアを

 見た。


「誰かを

 切り捨てる

 選択は

 したくない」


 その言葉に、

 胸が

 震える。


「だが、

 責任から

 逃げる

 ことも

 できない」


 アルフレドは

 背筋を

 伸ばした。


「だから、

 決めた」


 エリシアは

 息を

 止める。


「真実を

 公にする」


「……

 え?」


「噂の

 全容を

 明らかにし、

 彼女には

 相応の

 責任を

 取らせる」


 胸が

 締めつけ

 られる。


「でも」


 彼は

 続けた。


「断罪は

 しない」


 エリシアは

 顔を

 上げた。


「マーガレットには、

 学園を

 一時

 離れて

 もらう」


「……

 それは」


「更生の

 時間だ」


 その言葉は、

 重く、

 優しかった。


「そして」


 アルフレドは

 一歩、

 近づいた。


「君への

 不当な

 評価は、

 すべて

 撤回する」


 エリシアの

 視界が

 滲む。


「……

 ありがとうございます」


 声が、

 震えた。


「だが」


 アルフレドは

 一瞬、

 言葉を

 止めた。


「これは、

 王子としての

 選択だ」


 そして、

 静かに

 続ける。


「個人としての

 感情は……

 まだ、

 胸の中に

 しまっておく」


 エリシアは

 微笑んだ。


「それで、

 いいと

 思います」


 その笑顔に、

 アルフレドは

 目を

 細めた。


「君は、

 残酷だな」


「……

 そうでしょうか」


「人に、

 考える

 余地を

 与える」


 風が、

 二人の間を

 通り抜ける。


「だが」


 彼は

 確かに

 言った。


「私は、

 君を

 選んだ」


 それは、

 宣言では

 なかった。


 約束でも

 なかった。


 けれど。


 未来を

 指し示す

 言葉だった。


 遠くで、

 鐘が

 鳴る。


 学園は、

 新しい

 局面へ

 進む。


 そして、

 三人の

 物語は、

 終わりへ

 向かって

 歩き出した。


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