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私は幽霊を信じない

作者: 小雨川蛙

 

 私は幽霊を信じない。

 だって、もしそんなものが本当に居るなら殺された人間は必ず復讐をしようとするはず。

 仮に復讐を考えずとも自分がどのようにして殺されたかを伝えるはずなんだ。


 だから、二年も前に突如失踪した美香からグループLINEにメッセージが来た時、私にはすぐに一つの考えが浮かんでいた。


『ここに居るの』


 メッセージと共に貼られた幾つもの写真。

 山の中。

 近くには川。


『美香!?』

『どこにいるの!?』

『今までどうしていたのさ!?』


 皆がメッセージを送ったけれど、既読数は美香の分を引いた数で止まってしまう。


『ねえ、答えてよ!』

『お父さんとお母さんには連絡したの!?』

『美香! 今、元気なんだよね!?』


 私にはその場所は見覚えがあった。

 いや、きっと私でなくとも皆なんとなく覚えていただろう。

 だって、子供の頃によく遊んだ場所だったから。


「私、ここ知っているかも」


 だから、私は先んじてそう言った。

 万が一、知らない振りをしているとバレたら厄介だったし。


 そして、案内したその場所に美香はいた。

 いや、『あった』と言うべきか。


「美香、美香……」

「なんで。なんでさ!」

「どうして相談してくれなかったの?」


 変わり果てた美香の身体を見て皆が泣いた。

 恐怖とか悲鳴とか吐き気とか……そんなものよりも悲しさがずっと大きかったのだろう。


 すっかり腐っていた美香の成れの果て――早く弔ってあげなければ可哀想だ。

 そう言って皆は丁寧にお葬式をあげた。


「美香。きっと私達に見つけてほしかったんだよ」

「うん。私もそう思う」

「そうだよね。だって、そうじゃなきゃありえないじゃん。死んじゃった後にLINEをするなんてさ」


 皆がそう考えるのも分かる。

 美香の傍らに転がっていたスマホの充電はとっくに尽きていたし、状況から考えるなら確かに美香の幽霊がLINEをしたんじゃないかって私も信じたくなってしまう。


 だけど、私は幽霊なんか信じない。

 美香は二年前に確かに死んでいたはずだ。

 それにスマホの充電は確かに切れていたはずだ。


 それでも美香のスマホはLINEを送ってきた。

 何故か。

 答えはシンプルだよ。


 誰か別の人がLINEをしたんだ。

 美香を装って。


 美香の死体がある場所を知っている誰かが。

 『美香を殺した私』以外の他の誰かが――。


「美香、成仏できたかなぁ」

「出来たに決まっているよ。だって一番仲の良かった私達に見つけて貰えたんだから」

「そうそう! ねえ、そう思うでしょ?」


 仲良しグループの三人から見つめられる。

 まるで問い詰めるかのような目に私は。


「私もそう思う」


 どうにか答えるだけで精一杯だった。

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