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安楽椅子ニート 番外編9  作者: お赤飯
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安楽椅子ニート 番外編9

ドンドンドン!ドン!

少女「申し訳ありません!申し訳ありません!」

ドンドン!!

少女「申し訳ありません!・・・・仕方がない!ドアを破壊するし」

バン!

瀬能「なんですか!どういう事ですか!」

少女「・・・なんだ、いるんじゃないですか?・・・居留守ですか?」

瀬能「え?」

少女「突然で申し訳ないんですが、少しだけ、休ませていただけませんか?」

瀬能「は?」

少女「・・・ですから、少しだけ、ここで休ませていただきたいんですけど?」

瀬能「・・・?」

少女「・・・キュンニュ~、スピーク、ジャパニーズ?アンダスタン?」

瀬能「わかりますよ!ここ、日本ですから日本語ぐらい!・・・あなた、何言っているんですか?今度から国営テレビ放送局の集金は非常識になったんですか?」

少女「あ、私、NHKじゃないですよ?あなた、いくら何でもNHKがド深夜に集金は来ないでしょ?幾らNHKが非常識でも?」

瀬能「・・・非常識は認めるんですね。ええっと、ですから、私が言いたいのは、あなた誰ですか?非常識にも程があるんじゃないんですか!あの、今、何時だと思っているんですか?」

少女「・・・2時?」

瀬能「そういう事を聞いているんじゃなくてぇ!」

少女「あなた、今、時間を聞いたじゃないですか?」

瀬能「いや、だからですね、私が言いたいのは、」

少女「それはさっき聞きました。・・・あの、この話が長くなるようでしたら、中で休ませていただきたいんですけど。」

瀬能「あ、だから、勝手に、あ、あ、あ、あ、入らないで下さいよ!」

少女「・・・おじゃまし~ます!あ、ああ、ああああ、なんだこりゃ、足の踏み場もない。あなた、もうちょっと家の中、整理した方がいいんじゃないですか?」

瀬能「・・・いきなり入ってきた女がそんな事、言います?」

少女「あの、すみません。ちょっとトイレ借りたいんですけど?いいですか。・・・あ、トイレも汚い?」

瀬能「トイレ借りる人間が言う事ですか?それぇ!」

少女「とりあえず限界なんで借ります。お宅の中の話はその後で、トイレ、トイレ、トイレ、どこですか?」

瀬能「あ、あ、あ、あああ。左です。そこ、左です。そ、そう、そこ。」

少女「お借りします。・・・あ、トイレの中はまともですね。じゃ。お借りします。」

パタン

瀬能「な、な、なんなんですか、本当に!・・・地下アイドルみたいな衣装を着てましたけど?」

パッタン

少女「あ、ありがとうございます。ほんと尿意が限界だったんで。助かりました。・・・できれば、トイレットペーパーはもっと柔らかい物がいいんですけど?あなた、トイレットペーパーをケチり過ぎですよ?女子のお尻はデリケートなんですから?・・・あと、何か、食べるものがあったら分けて欲しいんですが?」

瀬能「あのぉ、え?ええ?」

少女「ですから、食べるものを恵んで欲しいと言っています。ユーアー?」

瀬能「だぁかぁらぁ、日本語は分かりますって!そういう事じゃなくて、あなたいったい何者なんですか?こんな時間に知らない家にあがりこんで、しかも、トイレ借りたり、食べ物が欲しいとか?明らかに不審者じゃないですか?・・・不審者ですよ!あなた、不審者ですね!警察に通報します!通報です!」

少女「ま、ま、待って下さい。落ち着いて。落ち着いて。・・・警察に通報しても構いませんが、警察ぐらいじゃ私を逮捕できませんよ?それでもいいなら警察を呼んで下さい。」

瀬能「・・・わかりました、1・1」

少女「待て、待て、待て、待て!私、国家権力よりも強い力を持っているんです。警察の人を怪我させかねません。余計な怪我人を増やしても仕方がないでしょう?」

瀬能「怪我させるつもりだったんですか?・・・警察じゃない!警察じゃ対応してもらえません!あなた頭でも打ったんですか?いや、もしかして、違うものを打っているとか?病院案件です。救急車を呼ばないと!・・・1・1・」

少女「だから、違うって!あんた、ちょっと電話、起きなさいよ!電話!・・・話すから。ちゃんと説明するから、まず、落ち着いて。落ち着いて、アンダスタン?

いい?とりあえず、お腹が減っているから、何でもいいから、食べるものをちょうだい?話はそれから。ね?いい?はい、そこ、電話、置く?あと、何にも打ってないから、打ってもいないし売ってもいないから。」

瀬能「・・・。」

少女「はい。いい子、いい子、いい子ね。」

瀬能「・・・魚肉ソーセージしかありませんが、これで。」

少女「え?魚肉ソーセージ?中学生の弁当のかさ増しおかずじゃないんだからぁぁぁ?もっと肉っぽいの無いの?肉?」

瀬能「・・・いらないんなら、いいです。」

少女「待って、待って、待って。食べる、食べる、いただく。・・・いただきます。お腹減ってるの。ありがたく頂戴いたします。」

瀬能「・・・どうぞ。」

少女「ありがとうございます。・・・あなた、天使です。女神です。地獄の仏様です。・・・いただきま~す。」

瀬能「・・・食べたら帰って下さいね?トイレも貸したし。・・・いいですね?」

少女「・・・フガフガ・・・」

瀬能「食べてからしゃべる!」

少女「フガフガ・・・・・あのね、ちょっと、待ちなさいよ!あと、水、水ぅ!水!・・・ミミズとかいう古典ギャグはいらないから!」

瀬能「・・・ミミズを探してくる方が大変ですよ。釣りキチ三平じゃないんだから。」

少女「あ、私、自己紹介するわね。私、不動アサミ!ちょっと事情があって言えないんだけど、世界を揺るがす秘密組織、クラッカードと戦っているの!」

瀬能「・・・事情があって言えない割にペラペラと。・・・病院、紹介しますから。今から行った方が」

アサミ「話を聞きなさいって!言える範囲で話しているんだからぁ。ね?・・・あと、電話、置く!いい?」

瀬能「いきなり、秘密組織だか何だかの悪もんの名前を出しちゃっていいんですか?・・・敵の組織の名前を聞いちゃったら、私も狙われるじゃないですか?あなた、バカなんですか?」

アサミ「・・・え?」

瀬能「あなたバカですね?バカ決定ですよ!・・・あと、何ですか?世界を揺るがすって?揺るがしてどうするですか?地球の支配を目論むとかならまだ諸先輩方がいらっしゃるから話はわかりますけど?」

アサミ「あんたこそバカでしょ?地球なんか支配したって仕方がないのよ!クラッカードはもっと上の領域で私達人類を抹殺しようとしているんだから!」

瀬能「・・・抹殺?」

アサミ「そうよ?クラッカードは人類抹殺を目論む組織なのよ!わかった?」

瀬能「・・・人類が死んじゃったら、何もどうする事も出来ないじゃないですか?・・・過去そういう組織もありましたけれども。」

アサミ「え?ええ?どういう事?」

瀬能「あなた本当に頭が悪いんですね。かわいそうに。」

アサミ「あわれむな!私をあわれんだ目で見るなぁぁぁぁぁ!

あんたに分かりやすく説明する為に、かいつまんで話してあげてるんでしょう?いい?クラッカードはとても危険な連中なの?今、世界中に危機が訪れているの?それを止められるのは私達だけ。」

瀬能「・・・私達?複数形?・・・あなたの様な頭の悪い人がまだ何人かいるんですか?」

アサミ「頭わるい言うなぁぁぁぁぁ!私達は命を賭して戦っているのよ!あんた達、一般人が危険に巻き込まれない様に!むしろ、感謝されたいわ!」

瀬能「深夜2時にドアを破壊しようとして、知らない人の家に入ってきて、便所を借りるわ、物乞いをするわ、そんな女に感謝しろと?・・・不法侵入真っ只中ですよ?強盗ですよ、強盗。火付け盗賊改め方がいたら殺されてますよ?」

アサミ「いい?あんた、私は吉右衛門側。いいもんなの!」

瀬能「私、たまたま起きてから良かったものの、寝ていたらどうするつもりだったんですか?」

アサミ「・・・そりゃあ。私は正義の為に戦っている訳だからぁ?一般市民は私におしみなく協力する義務が生じる訳でぇ。」

瀬能「もう、ほんと、帰って下さい。それ、全部、あげますから!もう私、そっとしておいて下さい。それから二度と家の敷居をまたがないで下さい!」

アサミ「親に勘当された二代目和菓子職人じゃないんだから!あんた、ちょっと、待ちなさい!待ちなさいよ!そんな邪険に扱うものじゃないわよぉぉ!」

瀬能「・・・明らかに不審者で、強盗で、もっか我が国の法律に抵触中ですよ?」

アサミ「してないですぅ!してないですぅって!あのねぇ、法で裁けない、凶悪組織と私は戦っている訳ぇ!・・・ところで、あんた、名前は?」

瀬能「嫌です。教えたくないです。教えたら、入り浸りそうじゃないですか?」

アサミ「そんな事ないわよ。・・・えっと、セノウキョウコ?・・・杏子ね?」

瀬能「ちょっ、待、なに、勝手に人の公共料金の領収書を見ているんですか?・・・ほんと、やめて下さい!」

アサミ「杏子が協力してくれたから・・・・杏子が協力・・・プ」

瀬能「やめて下さい!ほんとやめて下さい!そんなに上手い事、言ってませんから!むしろ寒いですから!あと、下の名前で呼ばないで下さい!」

アサミ「照れないで、杏子・・・ププ」

瀬能「笑いながら言うのやめて!」

アサミ「杏子。・・・私だって見た目ほどバカじゃないのよ!この時間に家の明かりが煌々とついていたのは杏子の家だけだったのよ!だからお邪魔したの。」

瀬能「蛾と一緒じゃないですか。光に集まってくる蛾と。」

アサミ「あんたねぇ、もうちょっと言いようがあるでしょう?カブトムシとかオオクワガタとか、ミヤマクワガタとか?」

瀬能「そんなレアな虫と一緒にしないで下さい。」

アサミ「私、レア中のレアよ?組織以外の人間に協力を求める事なんか滅多にないんだから。感謝しなさい。」

瀬能「最悪中の最悪じゃないですか。」

男「・・・お取込み中、失礼するよ、レディたち?」

アサミ「えっ!」

瀬能「・・・うわっ!またっ!」

男「探したよ、不動アサミ。君が戦いの途中でいなくなってしまうものだからねぇ。君にトドメを刺し損ねてしまった訳だよ。フ。フハハハハハ、フハハハハハハハハハハ!」

瀬能「あなた、近所迷惑です!やめて下さい!もっと、もっと、ボリューム下げてぇぇ!」

男「ああ。スマン。僕とした事が。失敬。」

瀬能「只でさえ、ご近所から白い目で見られているのに、夜中に大声で笑っていたら、警察に通報され・・・・

警察に通報、通報、通報!」

男「待て待て待て待て。待て。待ちなさい。お嬢さん。待て。思い出したように警察に電話しようとしない。いい?まず、電話を置く。いい?はい、そこ、置いて。そうそう。」

アサミ「何しに来たの!カイザー伯爵!」

カイザー「フハ!フハハハハハ・・・・・待て、待て、待って、待って、待ちなさい。電話を取らない。いい?まず、電話を置く?はい。電話、そこ、いいね?僕も悪かった。もう大きな声を出さないから。ね?もう大きな声を出しません。約束しするから。ね?電話、置こう?ね?」

瀬能「あなたのお友達ですか、不動なんとかさん?」

アサミ「アサミよ、アサミ。不動アサミ。いい?ようく聞いて杏子。こいつは悪の秘密組織、クラッカードの幹部、四天王の一人、カイザー伯爵よ!」

カイザー「フハ!フハ・・・・・・・。小さい声で話すからぁ。そうだ、紹介ありがとう、アサミ君。お初にお目にかかる一般人のお嬢さん。ええっと、誰?何さん?」

アサミ「・・・杏子。杏子よ、瀬能杏子!」

瀬藤「なんでバラすのよぉぉぉぉ!一番、知られたくなかったのにぃぃぃぃぃ!」

カイザー「あんたが一番、声がデカいよ!・・・静かに、静かに、夜中なんだから。」

アサミ「あんたに言われたくない、タンビー伯爵がぁぁぁ!」

瀬能「お仲間ですか?」

アサミ「敵!敵なの!クラッカードの耽美ぃ伯爵!」

カイザー「タンビーではない、カイザー伯爵だ!」

アサミ「どっちだっていいでしょ?キザで耽美、そのうえ、ケチんぼ!」

瀬能「幹部だか四天王だか、肩書が既に渋滞しているんですよ!劇団なら劇団らしく小ざっぱりした名称でお願いします。」

アサミ「あのねぇ売れない下北沢の小劇団じゃないのよ!あんなのと一緒にしないで!」

瀬能「見た目、雰囲気、どこから見てもアングラの劇団員ですよ?コント地球制服ですよ?あとは、あえてお笑い賞レースに出ない事を鼻にかけてるお笑い芸人のどっちかです。タイタンにいそうな。」

アサミ「誰が・・・ショートコント地球制服。ウィーン。ここが地球か?カランコロンカラン。いらっしゃいませ~、だ!」

瀬能「短いセンテンスの中に、お笑い芸人が発明した、今世紀最大の功績とも言える擬音を入れて来るなんて、やっぱり下北沢系は流石です。」

アサミ「あんた、ほんと、いい加減にしなさいよぉぉぉぉおお!」

カイザー「仲間割れか?・・・ニンゲンという生き物はつくづく美しくない生き物だねぇ。やはり滅びるべきだ。」

アサミ「はぁ?何言ってんの?タンビー野郎!お前のせいで仲間と思われたでしょうがぁぁぁぁぁあああ!」

瀬能「・・・まだ食べてるんでしょうがぁぁぁぁ!と同じ言い方。北の国から、の。」

カイザー「君と一緒に思われるなんて僕の方こそ心外だよ?僕は人間を超越した存在なのだ、アサミ君。まぁ、神と同等と言っていい。・・・では、ええっと?何さんでしたっけ?・・・ほら、アサミ君?」

アサミ「・・・。」

カイザー「教えてよ?ほら、意地悪しないで、さぁ。そういう所だよ、ニンゲンの悪い所?だから粛清されるんだよ、わかる?」

瀬能「・・・教えないで下さいよ?」

アサミ「・・・杏子。」

カイザー「フハ!フハハハハハハハハハハハ!私の力を見せるとしよう、アサミ君、そして杏子君!」

瀬能「なんで、すぐ、裏切るんですかぁぁ?今、教えないでって頼んだでしょう?」

カイザー「僕の異能の力は『時間を止める能力』だ。」

瀬能「・・・聞いてもいないのに。まあ、でも、見た事あります。犬だけ効果が無いアレだ。」

カイザー「待て待て待て待て待て。待ちたまえ。僕の異能の力はアダルトビデオの企画ものでは決して無い!一緒にしないでくれたまえ。」

アサミ「あんた!私達の動きを止めて、公序良俗に反するような、いかがわしい事をしようとしているのねぇぇええ!あんたのおかげでR指定になっちゃうでしょうがぁ!」

カイザー「だから違うっつてんだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

瀬能「近所迷惑だからボリューム下げてぇっぇぇええええ!」

ワン!ワォーンワンワン!

瀬能「犬に吠えられちゃってる!ああ、もう明日、ご近所から何か言われるぅぅ。あなた達のせいですからね?責任もって謝まりに行って下さいよ!菓子折り持って!」

カイザー「あんたが一番うるさいんじゃないか!えっ?」

アサミ「うるさいし変態だし、どうしようもないわね、スケベ変態タンビー伯爵は?」

カイザー「どんどん名前、おかしな風にするの、やめてくれません?」

瀬能「NHK教育が停波の時間ですよ。ご近所の事は明日謝りに行って下さい。今日はお開き、解散です。もう帰って下さい。ほら。ほら、二人共。ほら。」

アサミ「終電が過ぎても帰らない酔っぱらいを店から出すみたいな言い方はやめなさいよ!」

カイザー「あんたも少しは覚えなさいよ?僕とアサミ君は敵同士なの?いい?」

瀬能「いやぁ味方にしか見えませんが。息もぴったりだし。」

アサミ「一緒にしないでぇ!こんな変態エロ野郎と!」

カイザー「アサミ君。本気で僕を怒らせたいようだねぇ?・・・僕の異能の力『時間を止める能力』で君を、いや、君達をまとめてお仕置きするとしよう!

さあ『ギルティタイム』を喰らうがいい!

『ギィルティィィィィィタァ~イム』!!!!」

パン!

カイザー「・・・フハ!フハハハハハハハハ!どうかな?『ギルティタイム』のご感想は?」

瀬能「え?」

アサミ「・・・は?」

瀬能「え?・・・あ?何かしました?なんとか伯爵さん?」

カイザー「カイザー伯爵だ。・・・時間を止めたのだが?おおよそ3分間。」

瀬能「時間を止めたんですか?3分も?」

カイザー「ああ。その通り。時間を止めるなんて芸当、正に神の如き領域だろう?いや、神以上と言っていい。」

瀬能「まあ。確かに。伯爵さんの言っている事が正しければ時間を止めるなんて神だって出来ませんから、神様以上ですよね?」

カイザー「おお!君は僕の能力の素晴らしさに気が付いたか?そうだ、僕は神を超えた力を持ってしまったのだよ、フハ!フハハハハハハハハハ!」

アサミ「それで?・・・・それで、何が起きたの?」

カイザー「アサミ君、君は頭が少し弱いようだね?何度も言っているだろう、時間を止めたのだよ?」

瀬能「ちなみに?ちなみになんですけど、伯爵は時間を止めている間、何をしているんですか?」

カイザー「僕かね?何を愚問を。時間が止まっているんだから僕も止まっているに決まっているだろう?・・・杏子君、君もオツムが少々弱いようだねぇ?」

瀬能「ああ。・・・伯爵、もう1回、時間を止めてもらってもいいですか?今度は長くていいですから。」

アサミ「え?何を言っているの?・・・杏子、大丈夫?」

カイザー「フハ!フハハハハハハハハ!自ら恐怖を得たいとはとんだ痴れ者だねぇ。ならば篤と味わうがいい『ギルティィィィィィィィィィィタァァァァァアアアアイム』!!!!」

パン!

カイザー「はい、どうだ!さっきより長く15分、止めたぞ。」

瀬能「ああ。やっぱり。」

アサミ「何が起こったの?」

瀬能「この人、時間が止められるだけです。」

アサミ「だからこの変態、さっきからそう言ってるじゃないの?」

カイザー「もう、なに?変態って。耽美ならまだ百歩譲って許すけど変態って意味、違ってきちゃうじゃない?」

瀬能「伯爵は確かに時間を止めていると思われますが、私達がそれを観測できない以上、“スタート”と“ストップ”の間の時間、つまり、時間を止めている時間を認識できないんです。説明すると難しいですが、時間を止められた事に気が付かない。感じられないと言った方が正しいでしょうか。簡単に言ってしまえば、意味がない。」

アサミ「意味がない?・・・あんた、意味がない事してんの?」

カイザー「意味がなくなんかないだろ?時間を止めているんだから。ねぇ?」

瀬能「ええっと。意味はなくはないと思いますけど、仮に、仮にですよ?伯爵が時間を1分でも、1時間でも、まあ、1年でも、百年でも、千年でも、一億年でも、止めたとしましょう。止められるんでしょう?」

カイザー「止めらるよ。」

瀬能「一億年時間を止めたとしても、私達にとっては一瞬です。止められた時間を感じないんだから一瞬じゃないですか?時間が地続きだから一瞬以下ですけど。それ、意味がないと思います。」

カイザー「・・・ん?」

瀬能「しかも、伯爵の『時間を止める能力』が律儀な所は、自分も止まってしまっている事です。伯爵の能力がアダルトビデオ然としたものだったら良かったと思いますが、物理学の世界で時間を止めるという事は、森羅万象、あらゆる物の事象が止まってしまう事になります。そりゃあ神の御業ですよ。神様以上ですよ。このあまねく広大な世界。まだ人類が観測できていない膨張するこの宇宙、全ての物理的な事象を止めているんです。『時間を止める能力』と言うと語弊があります、物理現象を止める能力と言うべきです。神様だってそんな事、できませんよ?」

カイザー「君ぃ僕の事、褒めてる?」

瀬能「褒めてますよ。この宇宙が創造された瞬間、通説ではビックバンと言われていますが、その瞬間から宇宙は膨張し続けていると言われています。それを止めるんでしょう?伯爵は神以上ですよ。ただ、私には全く意味がないですが。」

アサミ「え?じゃあ、私にも効かないの?」

瀬能「効いてますよ?確かに効果はあるんですけど、意味がないだけで。」

アサミ「杏子、何言ってんの?」

瀬能「真面目に解説してあげているんでしょう!」

カイザー「フ。僕の能力を短時間でここまで分析する奴が現れるとは・・・。人間は面白い。」

瀬能「私、SPEC好きで全部見ました、もちろん配信専用ドラマもスピンオフも全てです。他にもジーンダイバーも見ましたし。あなた、MCUの面々を超えた能力を持っているというのに、非常に残念です。・・・まあ、後出しの設定の割に良い出来なんじゃないでしょうか?」

カイザー「残念とか後出しとか設定とか言うな!」

アサミ「変態!もうあんたなんか怖くはないわ!私の異能の力、『ボイスハック』でケチョンケヨンにしてあげるわぁぁぁぁあ!」

カイザー「なんだと!」

アサミ「聖なる剣よ!ドゥ~ン!ボォォォン!ブゥウウウウウウン!ドゥウウウウウウウン!」

瀬能「・・・ん?」

アサミ「次はマグナムよ!喰らえぇぇええ!ドゥボン!ドゥドン!ドヅハン!・・・どう?」

カイザー「・・・はい?」

瀬能「・・・どうと言われましても。」

アサミ「だから私の能力『ボイスハック』よ!私はあらゆる音をハッキングし発生させられる事が出来るのよ!」

瀬能「あのぉ、それって?」

アサミ「じゃあもう一度見せてあげる。スターウォーズでおなじみの剣ね。ドゥオオオオオオン!ボォォオオオン!ジュオオオオオン!・・・どう?」

瀬能「江戸屋猫八師匠じゃないですか!古典芸能ですよ!東洋館ですよ!声帯模写ですよぉぉぉぉ!」

カイザー「な、なんなんだ、それは?」

瀬能「あなたも相当なバカですね!」

カイザー「なんだとぉお!お前、言わせておけば!・・・いいか!知らない事はバカではない。知識がないだけだ。今日、僕はそれを覚えた。よって知識を得た。知らない事でバカにされる事はなくなったのだよ?知識と知恵をはき違えている君の方こそバカなんじゃないのかね?」

瀬能「・・・ろくな芸もできない変態に正論を吐かれました。非常に悔しいです。」

カイザー「アサミ君。そのなんとかって言う能力で僕に何のダメージがあると言うのかね?」

アサミ「うん?」

瀬能「あなたも変態伯爵の事を言えない位、相当なアレですよ?」

アサミ「アレ言うな!

仕方がない、必殺のレーザー銃をお見舞いしてあげるわ!

ドゥドドドドドオドドドドドドドドド!ドュボン!ズボボゥドドドドドドドオドドドドドドドド!・・・どう?」

瀬能「いちいち終わった後にどう?って聞くのはやめた方がいいです。あと、それ、ポリスアカデミーで見ました。人間効果音の人。」

カイザー「あ、僕も見た。」

アサミ「ちっ、仕方がないわね。本当はこんな雑魚相手にこの技を見せたくはなかったけど。」

カイザー「一応、僕、クラッカード四天王だよ?・・・雑魚呼ばわりされるのは心外だなぁ。」

アサミ「こうなったら奥義を見せてあげるわ!喰らいなさい!・・・・・・・・・・・・!」

ワォン!ワンワンワン!

瀬能「・・・遠くで犬が吠えている!」

バサババサバサバサバサバサ!

瀬能「コウモリが落ちてくる!」

アサミ「どう?」

瀬能「人間の耳で聞き取れない音域の音を出すな!・・・まあ凄いけど。」

カイザー「何故だ?耳が痛い。頭が痛くなる。」

瀬能「自分は若いからモスキート音が聞こえるアピールするな!」

アサミ「よし!耽美変態伯爵にダメージを与えられたわ!次はこれよ、豆腐屋の笛。パァァァプゥゥゥゥ!雅楽。パァァァプゥゥゥゥゥ!・・・どう?」

カイザー「何故だ!豆腐屋の笛と雅楽の音が、同じに聞こえる?一緒のものなのか?」

瀬能「・・・こまかくて伝わらないで見ましたよ?それ。」

アサミ「今度は精神的なダメージを与えてやる!ドゥッドウゥドォドゥウン!ドヨヨヨォオオオオオン!ボワアアァァァァァァアン!・・・どう?」

カイザー「くそぅ、なんだか悔しい気分になったぞ?」

瀬能「スーパーひとし君人形のボッシュートの音ぉぉ!ダメージでかいけども!けども!」

アサミ「トドメよ!ガラスをひっかく音!・・・キーーーーーーーーーー!・・・どう?」

カイザー「ギャー!やめろぉぉおおおおお!喉の奥が気持ち悪くなるぅぅぅうう!」

瀬能「あ、私、そういうの意外と平気です。」

カイザー「お前、人間じゃないな!」

瀬能「失礼ですね。変態伯爵にこの音をプレゼントします。チカッカッチカッカッカッカ・・・チッカッカッカ」

カイザー「やめろ!やめろ!やめろ!怖い、怖い、怖い!ガスレンジでなかなかガスが付かない音!ガス漏れてんじゃん!爆発するじゃん!やめてぇぇぇえ!」

瀬能「はっ。とんだチキン野郎ですね伯爵様は?ガスに火がつかないだけで、ガスは周囲に拡散しますから爆発なんてしませんよ?」

カイザー「はああ?部屋が密閉されてたら引火して爆発しますけどぉおお?換気は大事なんですけどぉおおお?」

瀬能「はああ?ガスが漏れてたら機械の方で検知して止めてくれますし、爆発する程の威力を出すには相当な量のガスが充満しないと無理なんですけど?」

カイザー「仕方がない、ダメージを受け過ぎた。今日の所は引き分けだ。僕はこれで退散させていただくよ。アサミ君。次に会う時が君の最後だ。フハ!フハハハハハハハハハハハハ!」

アサミ「何言ってんのよ!変態伯爵!逃がす訳ないでしょ?観念しなさいぃぃいいい!」

瀬能「あなた、不動なんとかさん。」

アサミ「不動アサミって言ってるでしょ?さっきから。」

瀬能「あなた、どんな音でも出せるって本当ですか?」

アサミ「そうよ。私の能力はどんな音でも出す事が出来る。」

瀬能「じゃあ、5Hzの音を出して下さい。」

アサミ「5ヘルツ?なにそれ?」

瀬能「とにかく低い音です。1秒間に5回、音を出してください。」

アサミ「ん?・・・ん、ん、こんな感じ?ボエエェ」

瀬能「ちょっと待って下さい。私、今、準備しますのでその間、待って下さい。イヤーマフと、あと、アルミシート。アルミシートを体に巻いて。はい。準備オーケーです。」

アサミ「いいの?いくわよ?」

瀬能「5ヘルツから20ヘルツくらいに徐々に音域を上げていって下さい。変態伯爵が弱っていくと思うので。思う存分、どうぞ!」

アサミ「あ、そう。いいの?じゃ、いくわよ!ボエエエエエエェェエェェェェッェェエエエエエエエエ!」

カイザー「なんだこれは?やめろ!耳に残るし、頭は痛いし、気分が悪い!やめろぉおおおおお!」

アサミ「ボエエエエエエェェェエエエエェエェェェェエエエエェェエエ!」

カイザー「ほんとやめて!やめて!頭いたい!耳がいたい!お願い!やめてぇ!」

瀬能「伯爵さん、長く聞いているとあちこち人体に影響が出ますよ?人体に凄く影響のある周波数ですから、逃げた方が得策だと思います。出ていくならあっちですよ。ドアはそっち。はい。そう。そう。次に家に来たら、私が会得した四十八の殺人技で容赦しませんからね?いいですか?

はい。不動なんとかさん、もう、いいですよ。止めて下さい。」

アサミ「はあ。はあ。はあ。はあ。」

瀬能「伯爵さん、逃げていきましたね。」

アサミ「はあ。はぁ。はあ。そうね。伯爵をここまで追い詰められたのは初めてよ。これも全て杏子、あなたのおかげだわ。感謝するわ。」

瀬能「感謝しなくていいので、もう、帰って下さい。もう目覚ましテレビが始まってしまう時間です。オールナイトニッポンの2部も終わりそうな時間です。」

アサミ「私の能力に、こんな力が隠されていたなんて自分でもビックリよ。帰ってメンバーに報告しなくっちゃ!」

瀬能「真空以外の場所だったら、あなたは無敵だと思うので、なるべく前線には出ない方がいいと思いますよ?」

アサミ「ん?どういう事?」

瀬能「一歩間違えると大惨事だからです。・・・・地球が。」

アサミ「そうね。私達は世界を守る義務がある!これからも悪の権化、人類の敵クラッカードを葬り去る為、戦うわ!杏子、ありがとう。今日の事は忘れないわ!決して!」

瀬能「早く忘れて下さい。そして早く帰って下さい。私、目覚ましテレビが見たいんです。」

アサミ「朝日が私達を祝福してくれているわ!そうでしょう?・・・・それから、杏子、最後に、お願いがあるの。トイレ、貸して。我慢してたの。便意を。」

瀬能「嫌ですよ?どっかのコンビニで借りて下さいよ。」

アサミ「大丈夫。私、音姫の音、自分で出来るから♪」

瀬能「ああ。また。勝手に。トイレの場所、覚えちゃったから。ああ。ああ。

・・・異能の力っていうのがどこまで本当か分かりませんが、伯爵にしても不動アサミさんにしても、人知を超えた能力である事は確かです。コメディの中でギャグ要素として使われる分には面白い仕掛けですが、シリアスなドラマだと、宇宙そのものを破壊しかねません。特に彼女は、音の能力者です。振動を伝播する物があれば、あらゆるものを破壊する事が可能です。固有振動をあやつる事が可能であれば、原子。下手したら原子より小さい素粒子レベルで破壊が可能です。いわば破壊神そのものですよ。本人がその事に気が付かない事を祈るばかりです。」

パッタン

アサミ「あ、杏子、トイレありがとう。」

瀬能「あのぉ、不動なんとかさん。」

アサミ「アサミよ、アサミ。あんた本当に物覚えが悪いわねぇ?」

瀬能「あなたの知り合いで、臭いを消す能力を持っている人、いませんか?」

アサミ「・・・臭くなんかないわよぉぉぉおおおお!」




「なあ。昨日の夜、ワンワンワンワン、犬の鳴き声、凄かったな。」

「ああ。ええ。そうですね。夜中から明け方までうるさかったですね、僕は寝不足ですよ。」

「あれ、瀬能さん家が原因らしいぞ?」

「ええ?どういう事ですか?犬の知り合いでもいるんですか?遠吠えする・・・どっちにしても、いい迷惑ですよ!」

「お前、いくら瀬能さんでも犬に知り合いはいないだろう?」

「・・・いやぁ、瀬能さんならあり得るかなって。」

「犬の鳴き真似する人が来てた、って言ってたな。」

「どんな人ですか?それ。青空球児好児ですか?」

「お前それ、ゲロゲーロだよ、ゲロゲーロ!」

「じゃあ江戸屋猫八?」

「猫八は、犬をやらねぇだろ?やるのは子猫だよ。」

「ああ、息子!・・・木崎さん、瀬能さん家に江戸屋子猫が来ても、ああ、なるほどね!って事にはならないですよ。」

「まねき猫の方かもな?」

「ああ、娘!ってどっちでもいいですよ!」

「瀬能さんがさ、世界の平和は誰かの犠牲の上に成り立っている、薄っぺらい氷の上を歩いているみたいなもんだって、言っててさ」

「はぁ。」

「この人、いよいよ戻ってこられないあっちの世界に行っちゃったのかぁ、と思ったよ。」

「まあ、そうでしょうね。夜中に犬の鳴き真似やるくらいだから。」

「夜中に迷惑をかけたから近所の人に謝っておいてくれって殊勝な事を言うんだよ、あの人が。」

「はぁ。」

「犬の遠吠えした人が近いうちに、菓子折りを持ってくるって言うし。」

「・・・謝るのだけ、こっちの仕事なんですか?そりゃあナシですよ!」

「あと、どんなくさい臭いでも消せる人を連れて来る、とかなんとか言ってたな?」

「業者ですか?・・・瀬能さんのネットワーク、得体が知れないから、変な業者を連れて来なければいいけど。」

「悪臭が消せるなら、俺達にも紹介して欲しいわな。」

「・・・料金次第ですけどね?」

「悪い人じゃないんだけどなぁ。瀬能さん。」

「まあ、こんな事、言えた義理じゃないですが、社会常識がある人なら、夜中、騒ぎませんて。」

「そりゃそうだ。」

「ああ今日はホント眠ったい。もう寝不足です。ああ時間がちょっとでも止まってくれたら仮眠が取れるのに。」

「お前バカだなぁ。時間が止まったら寝てる時間も止まるだろうが?」


※本作品は全編会話劇となっております。ご了承下さい。

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