第9話 モンスターとバトル!
まあ多分負ける事はないと思うのでリラックスしてこの『新風吹く深緑の森』を進むとしよう。
一応回りを確認しながら進む。
すると遂に現れた。
慎重は私の腰より低い、肌の色は緑色で耳は尖っている、目鼻口はどれも大きく禿頭の小人って感じのモンスター。
「……ゴブリンか」
「ゴブッ!」
ゴブリンはこちらを発見すると手にした棍棒をブンブン振って好戦的な態度を示す、あの小さくても太い棍棒を振るえる膂力は決して油断出来ないな。
私も腰のロングソードを抜く。
ゆっくりと剣を抜く自身の姿をイメージすると少し恥ずかしい。
しかしなんかいいねって感じもした。
なんか冒険者しておりますって感じがとても高揚感を高める。
やってやるって気持ちになる。
「ゴブァアッ!」
ゴブリンが突撃してきた。
彼らは小柄だ、しかし脚力もかなり高いらしく助走なしのジャンプひとつで私との数メートル以上ある距離をなかった事にした。
両手で握った棍棒で私の脳天をかち割ろうとする。
それを見切り躱す、ゴブリンは着地と同時に今度は走り込んで来て低い位置から棍棒を何度も振るってきた。
足の長さはこちらが長い、バックステップで距離を取り棍棒の届く範囲から逃れる。
森なのでバックステップは木にぶつからないように周囲の木々の位置を確認しながらした。
「ゴブギャアアッ!」
ゴブリンはどうやら短気らしい。
少し様子見をしたら怒った、先程と同じようにジャンプして棍棒を振り上げた。
何気にこのジャンプしてる時が反撃も躱せないし攻撃し易い高さにいる事にゴブリンは気づいていない。
「ふんっ!」
気合いを込めてロングソードを両手で持って振るう、この時こちらからも踏み込み勢いをつけるのと同時にゴブリンに一気に接近した。
一閃。
やはり邪神おじさんのこの身体は以前のとは物が違う。
私の頭の中のイメージ通りに動く身体、フルダイブなんちゃらゲームをそのままプレイしてるかのように振るわれた剣は綺麗にゴブリンを輪切りにした。
「よしっ問題なく倒せたな」
この場合問題というのはゴブリンには悪いが勝つ事ではない。
問題とは私と言う邪神になる前は普通のおじさんだった自分が襲ってくるモンスターを相手にして冷静に戦えるか。
そして…相手を殺せるか、これを実戦で確認する必要があったのだ。
グロい映像作品とか写真とかは極力目にする機会を減らして生きてきた。
そんな私がこのロングソードを本当にモンスターとはいえ生物に振るえるのか疑問だったのだ。
結果は問題なかった。
まあ何も感じないのかと言われたら少しね……と言うところはある。
しかし絶対に無理と言う訳ではない。
必要なら私は戦えるみたいだ。
よしっ改めて森を進もう。
倒したゴブリンに関しては邪神スキルで対応しよう。
モンスターの死骸なんてゲームでなら直ぐに消えるが流石にそんな仕様はこの世界にもないらしく、そのまま死骸を放置すると他のモンスターを呼んだりその死骸がアンデッドになってしまうらしい。
故に素材を剥ぎ取った後の死骸は穴を掘って埋めるかその死骸を魔法で処分するのがモンスターを倒した者の鉄則とのことだ。
いくぞ、必殺邪神ビーム!
私は人差し指から黒いビームを発射した。
ビームが当たったゴブリンの死骸は一瞬で消し飛んだ。
攻撃系の邪神スキルの威力やべー。
ゲームではそんな大した威力はないってネットに書かれてたんだけど…。
まあいいか、これならその辺りのモンスターにやられる心配はないだろうからどんどん進もう。
その後は現れた角ウサギやスライムとも戦い順当に勝利した。
ゴブリンとも三回程エンカウントして全員倒した。
体力も落ちている感覚はない、これなら1時間もあればこの『新風吹く深緑の森』を抜けられるだろう。
そう思っていた矢先のことである。
「………何かなアレ?」
「……………」
無言で佇むのは黒くそして少し年季の入った防具を装備した人型のモンスターだった。