第47話 ハロルドの活躍!
ここに来る前にイゼルの言った溢れる邪悪な気配と周囲へと放たれるプレッシャーがどうのって言葉に対して私はそんなの出してないと思った。
しかし出せない訳じゃない。
実はネット情報の一つに『ワールドエンドゴッド』には雑魚お掃除用のスキルとかも普通にあったからね。
ファンタジーな説明をすると魔力を込めた波動に殺気とか闘気を乗せて放つとフィールドで群がってくる雑魚をまとめて倒せるとかって説明されてるスキルがあるにはあるのだ。
そんでそれを使ってみた。
実際のゲームでの挙動やエフェクトは全く知らないのだが、リアル化した今それを発動したら予想以上に派手なことが起こった。
私のボディを中心に黒と紫と青の色合いを纏った波動がドーンと放たれる。
その波動は地上から放たれた無数の攻撃魔法を全て蹴散らしてそのまま地上へと降り注いだ。
ゲームでならともかくその波動には敵の命を刈り取るまでの威力は持たせてない、だから殺気にビビる程度だと思っていたのだ。
しかし実際は人間と蜥蜴人の双方に白目をむいたり、泡を吹いて気絶する者が続出した。
マジか殺気を乗せた魔力の波動だけで?
これは、この悪役ロールプレイ用の顔面黒男ボディの性能を舐めていたかも知れない。
とんでもない状況に決戦の舞台は混乱を極めていく。
ここは私が何か言わないと収集がつかない状況だ。
私はロールプレイに徹して意味分からん戯れ言を言うことにした。
「……全く、私は観光客だと説明しましたよね? その観光客への攻撃など許されませんよ、これはもう少しお仕置きが必要ですね」
上空に待機させているラムヴォイドを追加で二万発ほど地上に放った。
当然誰にも当たらないようにしてね。
地上からの悲鳴とか驚きの声、地面を抉られて立ちのぼる砂煙。
中々に場を収めるのも大変ですよ。
「まあ失敗は誰にでもあります、今回までは許して差し上げましょう」
「キ、キサマ……」
「ばっ化け物……にっ逃げろ! 今すぐ逃げるんだーーー!」
待ってたよハロルド、その言葉を。
このためにこの保身第一主義の領主をここまで連れて来たんだからね。
「おやおや突然、興の冷める言葉が聞こえましたね?」
「ヒィイイイッ!?」
「この私がわざわざ出向いて見物してあげると言うのに逃げる……と? それは頂けませんね~」
「なっならどうしろと言うんだ!? 私は死にたくない、戦争なんぞで死んでたまるか! それもこれもあの傭兵団の連中が全て勝手にやった事だと言うのに!」
「……何?」
そうだよ、ハロルド。
普通なら他人に全ての責任の丸投げとか最低な行為だ、しかしその相手がその場にいない上に城を襲って財産を奪っていった強盗なら……。
まあいいじゃないかとなるだろ?
どうせ禄でもない犯罪集団なんだ、その犯罪歴に今回の戦争の発端以外の罪も足してしまおう。
ハロルドなら保身の為に必ずそうすると思っていたよ。
最初の段階では私の力技による脅しで戦争を抑えるくらいしか考えてなかった。
しかしハロルドの人間性をクイラから聞き、そして直に見て、更にもう一工夫すればより良い結果になるのではと私は考えた。
「おいっ人間、その話は本当か?」
「ほっほほ本当だ!」
嘘です。
しかしそれをこの場で正す者はいない。
ガルベスもミーレインもドルフもバレットも皆苦虫をかみつぶしたような顔をしてはいるが黙っている。
素晴らしいチームプレイだ。
その後もハロルドと保身第一の個人プレイは続き、そのブリゲイン率いる傭兵団がコペンサー男爵と結託し、蜥蜴人たちがウリーズゲルドに攻め込もうとしていると偽情報を自分に与えてきたとか本当に嘘八百を並べまくった。