第37話 ストームダイブスマッシャー
そして城の中をくまなく探すが何処にもハロルドがいなかった。
幾らお城といってもとんでもない広さではなく、小部屋も一つ一つ念入りに調べている。
ミーレインに至っては生物を感知する魔法とやらを使って探しているのに見つからない。
ここは私の邪神スキルの出番か?
人探しの為の長距離索敵とかもいけるよ?
「くそっあのクソじじいどこに行きやがったんだ?」
「…ええっ私の魔法にも何の反応もないわ」
「ミーレインの魔法は、確か数十メートル以内にいる生物の感知が出来る筈だ」
「………それ以上に離れていると? それならば既に」
「ええっ外に出ている可能性が高いかと思われます」
五人で話し合っていると城の外から声がした。
ハッキリ聞こえる声だ。
「これは『拡声』の魔法ね」
「そんな魔法まであるんですね」
「聞こえるか侵入者共ーー!」
窓から声のする方を見る。
おおう、窓の外の広い庭に大量の兵士や騎士が隊列を組んでいた。
どうやらハロルドは逃げながらこちらを包囲する事を狙っていたようである。
「最早貴様らに逃げ場はない! 大人しく投降すれば命だけは助けてやるぞ!」
どうやら完全に勝った気でいるハロルド。
そしてこちらの方は明らかに空気が重くなっていた。
「……あの数は無理だ」
「ちっまさかまだアレだけの部下がいるとはな」
「くっせめてもう一発魔法を…」
「やめとけ、あの数には勝ち目がねぇ……保身しか考えてねぇクズでも権力者は強いってか? ふざけやがって」
「………」
どうやらあの数には脱走囚の皆も勝てないらしい。
確かにここから見えるだけでも百人以上は軽くいそうだし話は分かる。
しかしそれだとここでお話が止まってしまう。
それはちょっと勘弁だ。
「……それでは向こうの数を一気に減らしてしまいましょうか」
そう言った私に他の面々は難しい顔をした。
「おっさん、幾ら剣の腕が立つといってもよ…」
「…………無理だ」
「アビトさん…ここが引き際なんです」
「アビト、あの数相手にはよ……」
まあ当たり前の反応だろう。
私だって自分が普通の人間ならそうとしか考えない。
しかし今の私は邪神おじさんな上に妙ちくりんなちびキャラが共にいるのだ。
(エル、力を借りて良いですか?)
(もちろんですよアビトさん!)
(それじゃあ死人が出ない程度にド派手なのを頼みます!)
私はロングソードを掲げる。
ハロルドを始めとした庭の兵力がこちらを凝視しだした。
掲げたロングソードに翡翠色の光が宿る。
その光は段々と輝きを増していく。
とんでもない魔力を感じた、これはかなりの大技の予感がする。
(なっなるほど…)
(魔法はその魔法名、つまりキーワードを言わないと力が半減するのが多いからちゃんと叫ぶんですよ!)
(……分かりました)
それ、魔法剣の名前っぽくない。
まあいいか、そう言うのはあのイカレた女忍者を相手にした時に結構したし。
私は気合いを入れて剣を振るうと同時にその魔法剣の名前を叫んだ。
「『ストームダイブスマッシャー』!」
「やっやめろぉおおおおーーーっ!」
光るロングソードを窓から振るうと物凄い光と爆風が剣先から放たれた。
それはハロルドとその部下たちへ直撃。
彼らを空高く舞い上がらせた。