第31話 絶対ダメ
私もイゼルもエルも呆気にとられてしまい、ついそのまま移動してしまった。
彼女により連れて来られた場所は、中心街からある程度離れた所にある木造建築の建物だ。
何処となく中世様式ながら三階建てはありそうな建物である。
なんちゃって中世ヨーロッパが舞台の『ワールドエンドゴッド』と言うゲームの仕様も影響してるのか結構立派なもんだ。
もっともそんな建物も、人の出入りが殆ど無いのか薄暗い立地にあるのもありどこか空き家的な雰囲気があった。
まさかと思いながらも金髪美人の後をついて行く。
するとドアが開き、中から人が現れた。
目つきの鋭い屈強な男性だ。
歳は私と同じくらいのアラサーか、しかし身長、マッスル度合いなどは向こうが遥かに上だ。
街中なのに要所を金属で補強した革製の鎧と腰の左右には剣を佩いていた。
まさに歴戦の勇士といった感じである。
ただ顔が怖いので話とかあんまりしたくないです。
「……ミーレイン、どう言うつもりだ。何故ここにそんな連中を連れて来た?」
「彼もまたあの牢屋に囚われていた者よ」
ミーレイン、それが金髪美人の名前なのか。
それと彼女が話をしたら何やらそれなりの数の人間が反応して気配が動くのを感じた。
(アビトさん、あの建物の中には多分結構な数の武装した人間が隠れてるッス)
(……殲滅しますかご主人様?)
エルの言葉に静かに頷く。
それを勘違いして動こうとしたイゼルには首を左右に全力で振ってステイをした。
こんな所で意味も無く乱闘とか御免だ。
せめて向こうが何者で、ミーレインとやらが何のために私たちをここに連れて来たのか。
その目的が知りたい。
「この人はまだこの街に残っているのをたまたま見かけて…ほっておけば直ぐに兵士に捕まると思って連れて来たの、それで少し人目を引いてしまったわ」
「……たくっお人好しも大概にしろよな、あんた」
「………分かってるわ、ガルベスさん」
ガルベスと呼ばれた屈強なマッスルが少し呆れながらミーレインに小言を言った。
それにバツが悪そうに答えるミーレイン。
「それであんたらは一体なんなんだ?」
ガルベスとやらが今度は私たちに話しかけてきた。
「…そう聞かれてもこちらもいきなりここに案内されたので事情を全く理解出来ていないんですよ」
「……分かった、取り敢えず中に入れ。俺らのことを先ずは説明しよう」
私は無言でエルを見る。
エルもこちらも見ていた。
そして静かに頷く、つまりはここで流れに乗らないと話が進まないので我慢して付き合いましょうって事だ。
イゼルが無言ながら不服そうにしてるので何とか我慢してもらおう。
邪神おじさんが邪神活動をする前に、何だか変な事に巻き込まれてしまった。
建物の中に入る。
外観はともかく中は結構手入れをされていたらしく綺麗だ。
天井には灯りもついている。
はてっ外から見た限りだとそんなのついてる感じはしなかったのだが…。
(ここには人間の魔法が施されているッス、外からは単なる空き家に見えて中は結構弄くられてるみたいッスね…多分空間を広げたりもしてると思います)
成る程、生活し易くするためにそんな事まで。
つまりはこのガルベスとミーレインはここを拠点に逃亡生活をしている可能性が高いって事か。
そして中を進むと数名の人間が現れた。
(まだ姿を隠している人間がいます、ご主人様ここは私が全てあぶり出しましょうか?)
うん絶対ダメ。
イゼルには余計な事をしないように両手でバツのジェスチャーを出した。