第19話 世界の外にて
『ふ~~まさかこんなに早くおじさんボディを失うハメになるとは…』
まあ普通に生きてはいるけどさ。
だっておじさんボディは邪神パワーでちょちょっと創ったもんだ、いわゆるゲームのアバターである。
やられても残機が一つ減った低度の感覚だ、そしてその残機の数は無限って感じなので死んでも痛くもかゆくないのである。
見事にやられた事へのムカッと具合を除けばね。
あんなどう考えてもまず出会わないタイプの隠しキャラクターみたいなのまで実装してくるなよ異世界さんさ~。
全く以てお呼びじゃなかった。
普通に異世界転生してたらアレで死んで終わってたからね?
ホントにさ、もう少し心穏やかに異世界を楽しませて欲しいもんである。
あっちなみに最初は狼狽えていたイゼルにはテレパシー的なので世界の外から語り掛けたらとても驚いていた。
今は元のクールビューティーな感じに戻っているけどね。
そして傍らには彼女が持ち帰って私が邪神パワーで修復したおじさんボディが存在した。
完全に消滅する前だったので回収さえ出来れば復活させる事も出来た。
いや~やっぱり邪神でも神様って色んな事が出来るもんである。
と言う訳で、むむむ~!
私は再びおじさんボディに意識を移した。
「……ふうっありがとうございますイゼルさん、貴女がこの身体を回収してくれたお陰で元通りになれました」
「とんでもございません、むしろ私が迷惑をかけてしまいました。申し訳ございません」
「まさか、イゼルさんの助けが無ければ私は一矢報いる事も出来ずにやられていたかも知れませんから」
聞けばやはりあの瞬間、イゼルはあの『狂剣の戦姫』の存在に気付いてなかったそうだ。
向こうも認識阻害能力とか言ってたしね…と言うか本当に忍者みたいな能力まで持ってたね、あの子。
本当に何者なんだろうか。
まあ……もう二度と会いたくないと言うのが私の本音だ。
近くに人々が住んでる街だか村だかが無かったら絶対に戦わずにトンズラしてた自信がある。
邪神テレポートで飛ばした先までは流石に考慮出来なかったのは仕方ないと割り切ろう。
どうか大陸から離れた海のど真ん中とか深海の底。
或いは高レベルエネミーの巣窟にでもテレポートしてることを願うばかりだ。
「ご主人様、今後の活動はどうしますか?」
「そうですね…」
正直、もう疲れた。
直ぐにでもベッドで寝たい気分だ。
「もう一度ウリーズゲルドに戻って宿屋に泊まろうかと思います」
「分かりました」
『黄緑渓流の山道』もかなり広い範囲で滅茶苦茶になってたし、それの犯人だとバレる可能性も排除したい。
ゲームなら多少暴れたからってマップが崩壊するとかないのにな~。
そもそもゲームなら修復されるか、そこら辺もゲームみたいにはならないのが異世界って事なんだろう。
「それでは私はイムグランデに向かいます」
「はいっ行ってらっしゃいませ、ご主人様」
イゼルに見送られ、私は異世界イムグランデに再び向かった。
今度は死なないようにしたいね。
実に長い序章も完結です、邪神おじさんは死んでしまいましたが復活します。
それが邪神おじさんです。