第18話 そして邪神おじさんは死んだとさ
「ごっ……ご主人様!?」
イゼルの悲鳴じみた声が聞こえる。
しかし構ってる余裕はない。
よくよく見ると戦姫さまは身体のいたる所がボロボロだ、せっかくの煌びやかな装飾も太ももがチラ見する忍者風の衣装も然り。
つまり確実に邪神魔法はダメージを与えていると言うこと。
しかし倒せなかった、ゲームみたいな仕様は数あれどなかなかゲームみたいに倒してクリアとはいかないようである。
……………ならば!
邪神スキル発動!
邪神……ホーーールド!
「ハァアッ!」
「ぐっ!? か、から……だ…が!?」
邪神ホールドはシンプルに相手の動きを不可視の力で止める邪神スキルだ。
断じて邪神おじさんが相手をホールドして動きを封じるとかじゃない。
多分、異世界でも普通に捕まる案件だと思われるのでそこはハッキリと明記しておくよ。
邪神ホールドで動きを止めた、しかしここまでやって倒れないなら今この瞬間にこの『狂剣の戦姫』を倒すのは多分無理だ。
「くっ…ははは…時間稼ぎの…つもり? こんなのじゃあ…」
「ええっその通りですよ」
刺された短剣の刃から赤い物が流れる………しかしその赤い物の後からは。
黒い闇を思わせる物が溢れるように出て来た。
「!?」
「これで……終わりです」
そうっこの私のおじさんボディは邪神パワーで創造したもの、普通の人間のそれとは色々と勝手が違うのだよ。
なんか変な黒いのが溢れ、それを目にした『狂剣の戦姫』の表情も驚愕へと変化する。
ここはゲームじゃない。
つまりゲームじゃ出来ないシステム的に無理な事も押し通せるかも知れないよってね。
今の私はおじさんボディを創造するのに使った力が漏れ出してる状態。
つまりは一種の暴走状態なのだ。
今なら普通なら出来ない事も邪神スキルなら出来ると私は予感している。
私は右手で『狂剣の戦姫』に触れた。
食らえ、邪神スキル発動!
邪神テレポート!
本来ならエネミー相手になんて使えない……かどうか分からない邪神テレポート。
多分このバグキャラ相手には通常は無理だろうと思う。
しかし邪神の力が暴走してる今ならワンチャンあるとゲーマーの感が告げているんだ。
彼女の周りを光が包み込む。
自滅技による強制テレポート、とにかくどっか遠く、地平線の向こうに消えちまえって強い意思を込めて邪神テレポートを発動させてもらった!
「……今度会ったら…この借りは帰すからね」
「ここで死んでしまうかも知れませんよ?」
「…はっどの口が──」
邪神テレポートは無事に発動し『狂剣の戦姫』はその姿を消した。
最早彼女の異様な気配は何処にもない。
何とか退けたな。
それを理解すると同時に私は両膝をついた。
身体に力が入らない、これ絶対にこの心臓を貫いてる短剣のせいだろ。
何か変な能力とか持ってる武器だなこれ。
「ご主人様! どうして私を庇って…私は貴方の従者ですよ?」
「すみません……勝手に身体が動きました」
「………ご主人様」
イゼルがこちらを真っ直ぐ見つめてくる、美女に見つめられる事に慣れていない邪神おじさんはなんか恥ずかしいな。
しかし本当に力が入らない。
これは……駄目だな。
身体に無数のヒビのような亀裂が入る、そこからも黒い闇が漏れ出だしてる。
自滅技を使ったツケだな。
「イゼルさん、恐らくこれは手遅れです…」
「そんな…ご主人様!」
私の意識は闇の中へと消えていった。
私は…………死んだのだ。




